A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

大友良英&「あまちゃん」スペシャルビッグバンド@東京・渋谷NHKホール 2013.12.5(thu)

2013年12月07日 07時00分53秒 | こんな音楽も聴くんです


大友良英&「あまちゃん」スペシャルビッグバンドコンサート

出演 大友良英(G)江藤直子(P)近藤達郎(Or,Har)斉藤 寛(Fl)井上梨江(Cl)鈴木広志(Sax)江川良子(Sax)東 涼太(Sax)佐藤秀徳(Tp)今込 治(Tb)木村仁哉(Tuba)大口俊輔(Acc)かわいしのぶ(B)芳垣安洋(Ds)小林武文(Ds,Per)上原なな江(Per)相川 瞳(Per)Sachiko M(Sinewaves)

9月末にあまちゃんを卒業しそこなった落第生ことわたくし大友良英も、いよいよ来月12月をもって、あまちゃんを卒業します。
久慈に取材に行き、テーマ曲のデモを作ったのが昨年の夏、「潮騒のメモリー」のデモを録音をしたのが昨年の12月31日夜から1月1日早朝にかけて。まさに紅白の真っ最中。それからは、作曲に次ぐ作曲、録音に次ぐ録音、そして急遽決まったサントラや劇中歌CDの発売やコンサートと怒濤の1年でした。
そしていよいよファイナル、年内であまちゃんスペシャルビッグバンドの解散も含め、あまちゃん関連は全て終了予定です。もうひと仕事。ということで、あまちゃん祭り、最後の余韻を一緒に楽しみましょう。
大友良英のJAMJAM日記より)



NHK連続テレビ小説『あまちゃん』に興味を持ったのは、初夏のTLにあまネタが続出し気になっていた頃、家人に薦められて観たのがきっかけだった。お座敷列車の少し前だったと記憶する。アイドルを目指す地方女子のひたむきさに惹かれて朝の日課として観るうちに、時にストーリーとは無関係に挿入される音楽ネタに心奪われると同時に、NHKや関係者は勿論、プロアマ問わずフォロアーたちの普通じゃない入れ込みぶりや悪ノリが面白く、筆者の妄想力を大いに刺激してくれた。

<あまちゃん妄想記事>
その1 あまコンピ
その2 関西NO WAVE即興音楽



長年の愛好家にとっては、イマジネーション(空想・想像)、さらにデルージョン(妄想)を掻き立ててくれる音楽こそ最高に面白い。音楽そのものの感動は何物にも代えがたいが、それ以上に本質を離れた無意味な周辺情報の中に意味を見出す妄想力により脳内分泌されるドーパミンが、快楽中枢を刺激し120%自己陶酔の絶頂感をもたらす。そういう意味では、ブログ記事も真面目なライヴレポートよりも、フルーツ対決とか、陰謀論とか、数え歌(Part1Part2Part3Part4Part5)とかの妄想企画に気力と労力を費やしているのが現実である。



『あまちゃん』は妄想ネタの宝庫であり、本筋と離れれば離れるほど魅力を増す不思議なドラマだった。劇中音楽はいわば『妄想症のための伴奏曲(Acompanied Music for Paranoia)』であり、それをアヴァンギャルソンである大友良英が手掛けていたのは偶然ながら幸運だった。地下音楽愛好評議会に於いても、相手が大友ならば、某都知事のように代表質問で血祭りに挙げられる心配はない。



あまちゃんなりきりセットが設置された紅白の聖地NHKホールにて開催されたスペシャルビッグバンド(SBB)解散前夜祭(本番は年末新宿ピットイン2Days)では、オープニングからエンドロールまでパラノイア・フレンドリーな楽曲の連続で大いに溜飲を下げた。特に打倒ジュンコの使命を帯びたサチコ組の刺客Sachiko Mのサインウェーヴによる耳鳴りに似た感覚に、今年2月代官山で経験したスワンズ・ショックの記憶がフラッシュバックし、激動の2013年のプチ締め括りに相応しい一夜だった。





アーティストの公演では長蛇の列が出来る物販コーナーには、あまタオル、あま鉢巻、あま団扇、あまTシャツ、うに丼などのオリジナルグッズは皆無で、どこの書店やCDショップでも購入可能なガイドブックやCDが並ぶのみで拍子抜けしたが、誰も顧みることの無い出演者グッズコーナーの端に放置された数枚のアナログ盤を目ざとく発見し、救出に至った。2014年2月全日本カオス軍団「Multiple Tap」の受け入れ先であるロンドンCafe OTOが制作した限定500枚プレスLPのひとつであり、禁制品ではないものの、まさか芸能界の牙城NHKホールで取引されるとは、演奏者や制作者は勿論、レコード本人も予想だにしなかったに違いない。

▼Otomo Yoshihide / Sachiko M / Evan Parker / John Edwards / Tony Marsh / John Butcher - Quintet/Sextet(OTOROKU ROKU0009)


かくも数奇な運命を辿り、西東京方面にあるマンションの一室で、ターンテーブルに乗せられ、1分間に33.33333...回転する塩ビ盤は、即興演奏とはかくあるべし!、という確信に満ちた音響を再生し、愛好家/妄想家に至福の悦びを与えながら、レコードに生まれて良かったとばかり、嬉々として廻り続けるであろう。



セットリスト
<第1部>
01. オープニングテーマ
02. 行動のマーチ
03. あまちゃんクレッツマー
04. あまちゃんワルツ
05. 琥珀色のブルース
06. 地味で変で微妙
07. 銀幕のスター
08. 芸能界
09. ミズタク物語
10. アイドル狂想曲
<第2部>
11. トンネル~大地(※ゲスト:Sachiko M)
12. 友情と軋轢(※ゲスト:Sachiko M)
13. 奈落のデキシー(暦の上ではディセンバー)
14. 上野アメ横 1984
15. アキのテーマ
16. 地元に帰ろう
17. TIME
18. 希求
19. 海
20. 灯台
<アンコール>
21. 潮騒のメモリー
22. オープニングテーマ

★ライヴレポートはコチラ
★批評対談『あまちゃん』──13年最大のヒット作にしてクドカンの新代表作、その"凄み"と"食い足りなさ"はコチラ

売れる=大衆に媚びる、というステレオタイプな分類が如何に無意味なことか証明したのが「あまちゃん」であり「サチコ・エム」なのである。

あまロスに
なることはない
妄想家

BiS階段・初音階段と並び、2013年最大のカオスを演出してくれたあまちゃん&OTOMOに感謝したい。昨年末「潮騒のメモリー」の締め切りを放っぽって、大友とマル非がギャーッと騒いだノイズ電車 in PITINNは、両者の2013年の大躍進のきっかけとなった歴史的イベントだった。長い人生、ときには羽目を外してアホになりきることが成功の秘訣なのである。
コメント
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