A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

ヘンリー・カイザー with 灰野敬二&ジム・オルーク@六本木Super Deluxe 2013.12.2(mon)

2013年12月04日 00時15分15秒 | 灰野敬二さんのこと




ヘンリー・カイザーと彼が主宰するメタランゲージ・レコードは1980年代初頭の日本のオルタナティヴ音楽メディア(Fool's Mate、MARQUEE MOON、プレイヤー誌内PIPCOSなど)で紹介され、当時の尖った音楽マニアの関心を掻き立てた。丁度フレッド・フリスの来日でギター・インプロヴィゼーションへの関心が高まった頃であり、ソロ作『Outside Pleasure』(79)、『Aloha』(81)やフリスとの共演盤 『With Friends Like These』(79)、『Who Needs Enemies?』(83)等のLPはアメリカ盤なので大抵の輸入盤店で入手できた。特に『Aloha』の血塗れで微笑むジャケットに滲み出る明るい狂気が印象的で、2枚組というヴォリュームだったが、即座に買い求めた。その頃カイザーの来日公演を中野で観た。普段は芝居やダンス公演の行われる小さなイベントスペースで、カイザーはギターの即興演奏を披露した。ゴムのように伸縮するギターストラップを使っていて、弾きながらギターをビヨーンと膝下まで引っ張り下げるのに大うけした。親日家でその後も何度も来日したので観たかもしれないが、肝心の演奏の方はほとんど記憶にない。今回の来日を機に『Aloha』を聴き返した。完全即興なのにフレーズや展開が馴染み深く、記憶の底から30年前当時の香りが湧き上がってきた。それほど熱心に聴いた覚えはないが、心の奥にしっかり刻み込まれていたのである。

 

開演までVJブースでパソコンを操作するカイザーに話しかけたら当時のことを覚えていた。伸縮するストラップは今でも使っているとのこと。30年前はカールしたロングヘアーだったが、現在はスキンヘッドに近い。この日のスーデラは外人客が多く、類は友を呼ぶという訳ではなかろうが、スキンヘッドの一団もいる。若いファンも多く、カイザーの実験精神が新世代にも伝わっていることが分かる。

「僕が最後に灰野敬二とカリフォルニアで共演してから、30年以上の時が経つ。長年の友人のジム・オルークとは、彼が日本に移住して以来、ほとんど共演の機会がないままだった。今回のショウでは、(中略)世界中のギタリストの中で最高に大好きな二人と一緒に演奏ができることも楽しみにしている」--- ヘンリー・カイザー


(写真・動画の撮影・掲載については出演者・主催者の許可を得ています。以下同)

今回は共演に加え、カイザーが南極の氷の下で撮影した水中動画に音楽を付けるという特別の趣向。彼がアカデミー賞ノミネート経験のある映画製作者でありベテランの科学ダイバーでもあることは今回初めて知った。ソロ・アルバムで聴ける演奏は、非ギター的物音を多用したアンビエントなものも多く、映像との親和性が高い。ジャケットのヴィジュアルも含め、以前から映像制作への興味があったのではなかろうか。



カイザー×ジム・オルークのフリップ&イーノを思わせるアンビエントなデュオ、カイザー×灰野敬二のアブストラクトとブルースの二通りの共演に続いて、「ペンギンの曲を演ろう」と言って海洋ビデオを上映、愛らしいペンギンの映像に三人がムーディー且つダイナミックに音響を重ねていく。そこで前半終了。



後半もアシカやクラゲ(クラゲがイソギンチャクに喰われる悲劇の場面は灰野×オルーク・デュオ)などの映像に合わせたセッション。画面に応じてサウンドの流れが変化する様子がビビッドに伝わる。カイザーはパソコンを通してトレードマークの多彩な非ギター演奏、オルークはフリッパートロニックなサスティーンからハードなディストーションノイズまで変幻する演奏、灰野は深いリバーヴのギターや発信器、エアシンセ、ドラムマシーン、ヴォイスによるパフォーマンス。三者三様のプレイが幻想的な水中映像と相俟って不思議な物語を描き出した。灰野の映像コラボを観るのは2008年横浜トリエンナーレでの映像作家キャメロン・ジェイミーとの共演以来だが、スクリーンを観ながらの演奏は、音楽的なセッションとは違った表現スタイルが伺えて興味深い。大きな目をしたアシカが迫ってきたときの爆音ノイズは圧巻だった。



30年ぶりの日米異能ギタリスト共演は、海洋生物の神秘の導きで、イマジネーション溢れる豊饒の海への旅路となった。願わくばこの組み合わせで一篇の映像作品を制作してみてはどうだろうか。

▼ラストは映像なしのガチンコ・セッション



カイザーは
南極行っても
ギター弾き



アンコールでカイザーがソロで演奏したのはキャプテン・ビーフハートの曲だった。

【灰野敬二情報】
<RELEASES>

●灰野敬二(experimental mixture)
in the world』(3CD)
2013年12月25日RELEASE 



●サンヘドリン [灰野敬二 / ナスノミツル / 吉田達也]
「好」の5W1H
2013年12月25日RELEASE 



●頭脳警察
暗転 ~ZK結成45周年記念アルバム・寺山修司没30年によせて~』ギターでゲスト参加
2013年12月11日RELEASE 



<Live Schedule>
2013年
12月5日(木) 高知カオティックノイズ

12月7日(土) 高松TOONICE
FUZZ presents
灰野敬二/ ジェニィズ/ロック哲学アジテーション

12月8日(日) 松山星空JETT
『EXTREMEDIVES,vol.136』
灰野敬二【from東京】(ワンマンライヴ)//DJ's⇒SPACEGRINDER(a.k.a EXTREMEDIVES)

12月13日(金) 秋葉原Club Goodman
「好」の5W1H発売記念ライブ
サンヘドリン[灰野敬二 / ナスノミツル / 吉田達也]

12月30日(月) 高円寺ShowBoat
灰野敬二ワンマンライヴ

12月31日(火) 渋谷WWW
BLACK OPERA vol.001《COUNT DOWN》
《music》KILLER-BONG / JUBE / BABA / 志人 / 田我流 / RUMI / 山川冬樹 / 伊東篤宏 / 大谷能生 / 久下恵生 / 向島ゆり子 / スガダイロー / HIKO / 波多野敦子 / AyA(OOIOO)《voice》五所純子 《dance / performance》東野祥子+BABY-Q / 野澤健 / Tanishq 《art》河村康輔 / R type L / maticlog 《visual》rokapenis 《Opening DJ》Shhhhh 《New Year DJ》灰野敬二 / DJ HIKARU / ALTZ / Toshio Bing Kajiwara 《Lounge DJ》ALEJANDRO CREW (L?K?O / 1TA-RAW / K.E.I. / MACO)《Lounge performance》メガネ / midori

2014年
1月8日(水)青山 月見ル君想ウ
月と衝突
灰野敬二 / 青葉市子 / ▽マヒトゥ・ザ・ピーポー△

1月15日(水)渋谷LUSH 
灰野敬二 石川浩司

1月18日(土)新代田FEVER
M.A.S.F. 5th Anniversary
[act]Boris with Merzbow / Keiji Haino / Carre × Preparation Set / ENDON
コメント
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