(不失者 撮影:船木和倖/以下同)
カオスフェス2013
2013年4月7日(日) 日比谷野外音楽堂
出演者:BiS/cinema staff/でんぱ組.inc/不失者/旺福(Wonfu) from 台湾
OPENING ACT : mckj
OPENING & ENDING DJ : D-YAMA(MOGRA)
音楽に限らず、素性のハッキリしたものより、何か得体のしれないものに興味がある。教科書通りの優等生よりも、掟破りの無法者の方が魅力的。コスモス(秩序)よりもカオス(混沌)のほうが創造の泉の番人に相応しい。混沌、無秩序を意味する「カオス」は、ネットやゲームや動画サイトなどで、「やばい」「なにがなんだか分からない」「理解不能」「シュール」という意味の現代語として使われている。先の見えない政治・経済、解決されない国際紛争、頻発する自然災害など、現代社会全般を象徴するキーワードこそ「カオス」だと感じるのは筆者だけではあるまい。
国境やジャンルの崩壊により、従来の方法論が通用しなくなった芸術・音楽に於いては、カオス的な異種混合の混沌状況こそ、時代の閉塞感を打破する力を秘めているように感じるし、ジャンルに関係なく一番面白い。未知のジャンルとの対決による既存のルールに縛られない破天荒な表現から、誰にも予期出来ない新しい世界が創出されるからである。
100本以上のライヴ現場に通った2013年、最も印象に残ったものとしてこのイベントを敢て選出したのは、現代社会の病巣のキーワード「カオス」を、恐れるのではなく、逆に楽しもう!と提唱する姿勢に賛同するからである。アイドルとヒップホップとアジア・ポップスとアンダーグラウンドの帝王の共演という、なにがなんだか分からない企画であるうえに、告知期間が一か月もなかったので、動員は散々だったが、閑散とした客席を駆け回って盛り上がるアイドルヲタの暴走ぶりに、カオスの本当の楽しみ方を学んだ。キラキラ派手な演出のアイドルグループのあとに、灰野敬二率いる不失者が冷徹なハードロックを爆音で演奏し、野音に暴風を呼び寄せた。大自然を味方に付けたカオスパワーの前では、秩序や常識など吹けば飛ぶような将棋の駒に過ぎない。
「レッツ・エンジョイ・カオス!」の合言葉がより広範囲に拡散されれば、2014年はこれまでにない面白い年になるだろう。
失われる
ことの無い
2013年の混沌