A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

NOISE FOREST 2013(DFH-M3/MASONNA/T.MIKAWA/SOLMANIA/ASTRO)@秋葉原CLUB GOODMAN 2013.4.13(sat)

2013年04月15日 00時21分26秒 | 素晴らしき変態音楽


<NOISE FOREST 2013>
【出演】DFH-M3(Divas From Hell - Monju3)/MASONNA(マゾンナ)/T・MIKAWA(美川俊治/from:非常階段/INCAPACITANTS)/SOLMANIA(ソルマニア)/ASTRO(アストロ)

日野繭子による企画イベント。NOISE FORESTとは大阪のノイズユニットMonde Bruits=岩崎昇平が1991年に始めたノイズ・イベントのシリーズ・タイトルとのこと。2005年4月14日に事故で急逝した岩崎の8年目の命日の前日にこのイベントを復活させることで彼の魂を弔う意味があったという。それを知らなくても出演ラインナップを見ただけで長年のノイズ・ファンは心のときめきを禁じ得ない。近年ピュアノイズのイベントが余り開催されないこともあり熱心なファンで満員御礼。震災以降ライヴやイベントに少なくなった外人客の姿も目立つ。



出演者は全員活動歴25年を超えるベテランである。まさにジャパノイズの代表格ばかり。現在伊藤まく主宰のjapanoise.netに名前が残るこの呼称は1980年代に日本の地下音楽が海外に紹介され大きな反響を呼び生まれた。ポストパンクのひとつインダストリアル・ミュージックから派生してより非音楽的な表現を追求する「ノイズ」アーティストが各地に生まれたが、その種子はファーイーストの辺境の地日本において独自かつ特異な進化を遂げた。メルツバウに代表されるピュアノイズである。リズム/メロディ/ハーモニーという音楽の三大要素をすべて無視した純粋な音響。それを追求するアーティストの層の厚さと数多い音源の完成度の高さに欧米人は仰天したのである。90年代には日本地下音楽界のアーティストが次々海外で作品をリリースしツアーを敢行した。少年ナイフやボアダムズや灰野敬二といったロック・アーティストも人気を博したが海外での日本のイメージの象徴はJAPANOISEだった。コンピレーションも数多くリリースされその常連が今回の出演アーティスト達だった。国内でもノイズ・シーンは活況を呈しアーティストの個人レーベルを含み数多く自主レーベルが作品をリリース、ノイズ・イベントもたくさんあった。中でも大きな影響力を持ったのはMSBRこと田野幸治が主宰する電子雑音だった。世界初のノイズ専門誌を発行すると共にイベント企画や店舗運営、ホワイトハウスやジェノサイド・オーガンなど海外アーティストの招聘も手がけノイズの国内外への普及に尽力した。

しかし田野が2005年7月に病で急逝して以来ノイズ界において組織立った活動は途絶えピュアノイズは単体では成り立たず他のスタイルとの同化・融合が進むことになった。同時に機材の進化とパソコン機器/インターネットの普及により音楽制作のスタイルが大きく変化した。無数のエフェクターをテーブルに並べスイッチやつまみの操作でサウンドをコントロールする8~90年代の所謂テーブル・ノイズの手法は前時代的なものになり、パソコンですべての音をクリエイトするラップトップ・ノイズが主流になった。ノイズに限らずパソコン一台で音楽が作れるなら重い楽器や機材を購入し運ぶ必要は無いし演奏法や機材操作のテクニックを習得する手間も無い。楽して同等かより高品質なサウンドを創造出来るのだからアナログからデジタルへの移行と同じくこの流れは止めようがない。美川が言及する「ノイズ高齢化問題」はオールドスクールなテーブル・ノイズに限れば正しいが、ラップトップ・ノイズの台頭に目を向ければノイズ・シーン全体は若返っていることは事実だと思う。

恐らく美川と旧世代組の本当の嘆きは年齢的な問題ではない。演奏手法がデジタル化することによるノイズ表現の変容に戸惑っているのでは無かろうか。この日の出演者の演奏を観て実感した。ノイズというのはあくまで「音」そのものであり他の音楽に必然的に付随する「意味性」から完全にフリーである。絶叫はあるが歌ではないのでストーリーもメッセージも存在しない。テクニック不要なのでエモーショナルな演奏も出来ない。その表現はスピーカーから発生する何デシベルかの音響でしかあり得ない。逆に言えばノイズ演奏によって何らかの主義主張を伝えることは不可能な筈である。しかしこの日のASTROが構築したノイズの分厚い壁の重圧、美川の居合い抜きカミソリ音響の切れ味、SOLMANIAのギタークラッシュの高揚感、DFH-M3の情念渦巻く貧血空間、MASONNAの3コマ漫画的凶暴性、3セットのセッションのめくるめく祝祭性には無機質な音響ではなく深い人間性が溢れていた。リズムが無いのにヘドバンし興奮して拳を突き出して歓声を上げるオーディエンスと共に作り上げたエキサイトメントにはデジタルでは表現し得ない曰く言い難い生々しい肉感性が満ちていた。

●ASTRO=長谷川洋は女性エレクトロニクス奏者Rohcoとともにウォール・オブ・ノイズを築く。


●T.MIKAWAは後半全身を痙攣させてプロレス技を披露。


●ASTRO+T.MIKAWAのセッションは絶叫デュオに突入。


●唯一楽器による演奏のSOLMANIA=大野雅彦&菅原克己が最もノイジーだった。


●ノイズ三姉妹DFH-M3=日野繭子(ex.C.C.C.C./Mne-mic)+ JUNKO(非常階段)+大西蘭子(ex.Mne-mic)では次女と三女が大暴れ。


●MASONNA=山崎マゾは客席乱入つむじ風の5分間。



●隠し玉FUSAO(ex.エンジェリン・ヘヴィ・シロップ/ACID EATER)+SOLMANIA+DFH-M3のセッションはギタートリオvs絶叫シスターズ。


●飛び道具BARA(ex.MERZBOW)を加えた全員のセッションは最高のカオス!観客もカオス!この世はすべてカオス!男の履歴書は顔す!



(以上スマホによる写真撮影は主催者から許可されました。)

ジャパノイズ
渋谷系と
似ています

記事を書くため調べていたら「ジャパノイズ」という本の出版情報を発見。2013年6月発刊/デヴィッド・ノヴァク(カリフォルニア大学音楽科助教授)著。表紙が「ノイズ」と呼ばれることを拒絶する灰野敬二というのが興味深い。日本語翻訳強く希望!!




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