ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

愛おしいもの、古女房

2012年04月06日 | 通信-音楽・映画

 誰も住む人のいない実家へ概ね週に1回行き、家の掃除、母の持ち物、父の持ち物などの整理をやっている。「自分たちの物は自分たちで整理してくれ」と頼んであった姉やその夫の持ち物がまったく整理されていないのに「糞ったれ!」と思いつつ、それらも整理する。母のものか、父のものか、姉のものか、義兄のものか不明のものも多くあり、姉や義兄のものは勝手に処分できないので整理できない。「糞ったれ!」と思う。
 「糞ったれ!」と思うモノの中にたくさんのビデオテープがあった。明らかに父や母のものだと思われるものは処分したが、想い出のビデオかもしれない誰かが録画したようなタイトルのテープはどう処理したらいいのか悩む。初日は悩んで終わり。
 二日目、良いことを思いついた。映画などビデオ屋から購入したテープは残して、テレビ番組など自分たちで録画したと思われるテープは処分することにした。「古いビデオテープはカビが生えていたから」と言い訳ができる。いちいち一つずつカビが生えているかどうか確認したわけでは無い。いちいち一つずつ再生してみたわけでも無い。たくさんのテープ、いちいち見ていたら時間がかかる。ただ働きなのだ、糞ったれ!

 ビデオ屋から購入したテープと思われるものはハリウッド映画がほとんどであったが、邦画も2、3あった。その中に気になる1本を見つけた。『ホタル』。
 私の大好きな高倉健が主演ということで大いに気になった。「どうする?」、「観たいなぁ」、「家にはビデオデッキもテレビも無ぇぜ」、「実家からテレビとデッキを持って行こう」、「そこまでするか?」、「高倉健だぜ!」、「そうだな」などと、しばらく自問自答して、デッキとテレビとビデオテープを持ち帰った。
 「映画は映画館で観るに限る」と常々思っている私だが、良い映画は家で観ても良い映画に変わり無かった。タバコ吸うのも忘れるくらい、最初から私は引き込まれた。

 『ホタル』は2001年の公開作品。主演女優は田中裕子、出演は他に小林稔侍、奈良岡朋子など芸達者達が脇を固めている。監督は降旗康男。降旗康男という監督を私は知らなかった。もっとも、私が知っている映画監督は5本の指で数えられるほどしかいないので、降旗さんが無名というわけでは全然無い。ネットで調べると、『鉄道員』、『あ・うん』などあり、いずれも私は観ている。監督の名前まで覚えていなかっただけだ。
  映画は夫婦の絆を描きながら、戦争の悲しみを物語る。高倉健扮する主人公は特攻隊の生き残りという設定である。死んだ者も生き残った者も悲しい悲惨な話。
 私は最初からナダ(涙)ウルウル状態。しかしそれは、特攻隊の悲惨のせいでは無い。高倉健扮する夫が田中裕子扮する女房を気遣う眼差しと、それに感謝するかのように夫を見つめるシーンでナダウルウルとなっていた。「心通ってるなぁあんたたち」と。

 こんな女房であれば結婚したいと、いやいや、こんな夫婦なら結婚したいと思った。女房も心優しく、一途で可愛いらしいのだが、夫が、高倉健がまさしくそうであろうと思われるような心の広い、心の深い人物であった。そうなのである。良い結婚生活を送るには自らが良い夫でなければならないのだ。だぜ、M(会うたんびに女房の悪口を言っている友人)よ。・・・なんて他人のことは言えない。無理だろうなぁ私も。
          

 記:2012.4.6 島乃ガジ丸