ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ヒメゴマフコヤガ

2014年12月12日 | 動物:昆虫-鱗翅目(チョウ・ガ)

 シックな水玉

 高校の頃、私は美術倶楽部に所属していた。倶楽部と漢字にしたのは当時の先輩たちがそう書いていたからだ。先輩たちの世代は学生運動の最後の世代だったと思う。沖縄を愛し、泡盛を愛し、伝統を愛し、自由と平等のために戦い、油絵を書き、フォークソングを作って歌い、などしていた人達だ。皆さん、今も元気かなぁ。
 一つ上の先輩にJさんという才能豊かな人がいた。一つ上の先輩には美人揃いの女子が数人いて、Jさんは唯一の男子。その才能は先生からも先輩たちからも、美術倶楽部の全員が認めるものであった。その通り、絵のコンクールでは最優秀賞をいつも得ていた。卒業後の噂でも、アメリカへ留学し、そこでも何かの賞を得たと聞いている。
 ある時、部室で私がイラストを描いていると、後ろからJさんに覗かれ、「今時そんなの流行らないよ」と大いに笑われた。私は少女の絵を描き、そのワンピースを水玉模様にしていた。その水玉が「遥かに流行遅れ」と笑われたのだ。「そうか、着るものには流行り廃りががあるんだ」と才能あるJさんに指摘され、私は認識するようになった。

 小さいけれど目立つ蛾が、今年4月から6月にかけて私の畑で頻繁、ほとんど毎日のように現れた。白地に黒点の水玉模様の翅をしている。その特徴があったので、図鑑で調べると、ヒメゴマフコヤガであるとすぐに判明した。彼にはきっと流行り廃りが無く、何千年も同じような模様を子々孫々受け継いでいるのだろう。
 水玉模様って、その後流行ることは無かったのだろうか?ファッションに疎い私には判らないが、白地に黒点の水玉模様は、私にはシック(粋なこと)に見えた。

 ヒメゴマフコヤガ(姫胡麻斑小夜蛾):鱗翅目の昆虫
 ヤガ科 九州南部~石垣島、インドネシア~マレーに分布 方言名:ハベル
 名前の由来は資料が無く正確には不明。漢字表記の姫胡麻斑小夜蛾は私の想像。ヒメは小さいから、ゴマフは翅がそのような模様だから、ヤガは広辞苑にあって漢字は夜蛾、「ヤガ科のガの総称」とのこと。ヤガ科の中でも小さめだから小がつくものと思われる。
 ゴマフについて、これも広辞苑にあり、漢字表記は胡麻斑で「黒胡麻をちらしたような黒い小さな斑点」のこと、その名のついた動物ではゴマフアザラシが有名。
 春から夏にかけて私の畑で何度も見かけ、多くいるんだなと思っていたが、『沖縄昆虫野外観察図鑑』にも「どこでもいつでも採集できるガの一つとのことで平地から山地まで生息し、各島で普通に見られる」とのこと。
 前翅長は9ミリ内外。成虫の出現は4月から10月。幼虫の食草は不明。
 
 成虫1  

 記:ガジ丸 2014.12.12  →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『検索入門チョウ』渡辺康之著、株式会社保育社発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行