ルリハコベの頁で、「ルリハコベの出てくる沖縄のわらべ歌がある。子供をあやすときなどに歌う。」と『べーべーぬ草かいが』を紹介した。それは、ルリハコベの方言名をミンナと言い、『親子で見る身近な植物図鑑』の説明文に「やぎのえさとしてよく利用されています」という記述もあったことから、『べーべーぬ草かいが』で唄われるミンナは、てっきりルリハコベのことだと思ったからだ。
今回ヤエムグラを調べる際、『沖縄四季の花木』という文献を新しく参考にした。それには、ヤエムグラが『べーべーぬ草かいが』で唄われるミンナであると書かれてある。方言名もミンナとある。『親子で見る身近な植物図鑑』には「ルリハコベが『べーべーぬ草かいが』で唄われるミンナである」と書かれているわけではないので、ルリハコベが『べーべーぬ草かいが』で唄われるミンナとしたのは、どうも私の早合点のようである。
で、改めて、その歌を紹介する。
べーべーぬ草かいが
いったー あんまー まーかいが べーべーぬ 草かいが
(お前の 母ちゃんは 何処へ行った 山羊の 草刈に)
べーべーぬ まさぐさや はるぬわかみんな
(山羊の 美味しい草は 春の若いヤエムグラ)
なお、ルリハコベの頁は訂正せず、そのままにしておく。もしかしたら、両方とも山羊の好物で、歌のミンナは両方を指しているという可能性もあるから。
ヤエムグラは、参考にしている文献の多くにその記載があった。『親子で見る身近な植物図鑑』にも載っているので身近ということだ。確かに、春、たくさん見かける。
ヤエムグラ(八重葎):野草
アカネ科の蔓性越年草 日本各地、アジア、ヨーロッパに分布 方言名:ミンナ
ムグラ(葎)は、「荒れ地や野原に繁る雑草の総称」(広辞苑)とのこと。ヤエムグラ(八重葎)も広辞苑にあって、「繁茂しているむぐら。雑多に生えている蔓草。」とのこと。ただし、ヤエムグラは学名Galium spurium L.echinospermum Hayekといい、固有名詞でもある。今回、ナガバハリフタムグラと、ムグラのつく植物を2種紹介しているが、同じアカネ科でも、それぞれ属が違う。
私の畑でも、冬の時期には辺りを覆うほど蔓延る。私が除草を怠けているせいである。触ると手に絡みつくが、それは、茎に細かい棘が逆さに付いているせい。それによって、他のものに絡み付いて伸びたり、広がったりする。
2月から4月にかけて道端や畑地で繁殖する。本土では夏の開花と広辞苑にあったが、沖縄では繁殖する時期に花が咲く。黄緑色の小さな花。
花
ナガバハリフタバムグラ(長葉針双葉葎):野草
アカネ科の越年草 熱帯アフリカ原産 方言名:なし
フタバムグラと名がついているが、フタバムグラとは属が違う。フタバムグラと同じく葉が対生なのでフタバとなり、葉が長いので長葉。ここまでは自信があるが、真ん中のハリは自信が無い。ハリを針としたが、棘があるとは文献に無く、私も気付かなかった。でも、張では無かろうと思い、ここでは針としておく。
戦後の帰化植物。高さ20~40センチ。花は白色で小さい。葉腋の上に数個つく。海岸近くでよく見られる。分枝が少ないので、ヤエムグラのような広がり方はしない。
学名はBorreria laevis Griseb。フタバムグラはHedyotis diffusa。
記:島乃ガジ丸 2007.5.1 →沖縄の草木目次
参考文献
『新緑化樹木のしおり』(社)沖縄県造園建設業協会編著、同協会発行
『沖縄の都市緑化植物図鑑』(財)海洋博覧会記念公園管理財団編集、同財団発行
『沖縄園芸百科』株式会社新報出版企画・編集・発行
『沖縄植物野外活用図鑑』池原直樹著、新星図書出版発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄園芸植物大図鑑』白井祥平著、沖縄教育出版(株)発行
『親子で見る身近な植物図鑑』いじゅの会著、(株)沖縄出版発行
『野外ハンドブック樹木』富成忠夫著、株式会社山と渓谷社発行
『植物和名の語源』深津正著、(株)八坂書房発行
『寺崎日本植物図譜』奥山春季編、(株)平凡社発行
『琉球弧野山の花』片野田逸郎著、(株)南方新社発行
『原色観葉植物写真集』(社)日本インドア・ガーデン協会編、誠文堂新光社発行
『亜熱帯沖縄の花』アクアコーラル企画編集部編集、屋比久壮実発行
『沖縄四季の花木』沖縄生物教育研究会著、沖縄タイムス社発行