整備された墓地では
もう20年ほども前のことだったか、ウシーミー(御清明、清明祭のこと)で、伯父の家の墓を訪れた。墓は中城村の国道沿いにあり、国道沿いとはいえ、原野を切り開いてまだ間もないといったような藪の中に、その他の20基ほどの墓と一緒にあった。
国道に路上駐車して、山道をいくらか登る。その途中、その頃小学校高学年であった従姉の息子が大声をあげた。
「あっ、カメレオンがいる!」
彼が指差したところに、なるほどカメレオンそっくりのトカゲがいた。大きな木の幹に数匹がしがみつくようにして、目玉をグルグル動かしていた。
その頃、私も知識に乏しく、彼が言う通り、それがカメレオンであると思った。近くの民家で飼っていたものが逃げ出して、繁殖したものであろうと思った。
「違うよ。あれはキノボリトカゲだよ。」と従姉の亭主が教えてくれた。キノボリトカゲは沖縄に普通にいるトカゲで、従姉の亭主などは子供の頃、それを捕まえてはよく遊んだらしい。「何?どうかした?」と言っているみたいな表情が面白いし、歩き方もどこと無くひょうきんなので、子供の良い遊び相手になったそうだ。そんなひょうきん者、私はその時が初対面。那覇の緑の少ないところでは生息できないのかもしれない。
今年の5月、ウシーミーで同じ場所を訪れた。墓の周辺は当時と比べて、だいぶ整備されてきれいになっていた。墓の数も増えていた。私はその時、キノボリトカゲの写真を撮ろうと意気込んでいた。ガジ丸HPに載せるためである。しかし、キノボリトカゲは1匹も見つからなかった。整備された墓地では、彼らも住みにくいのであろう。
キノボリトカゲ(木登り蜥蜴) 全長25センチ
アガマ科 奄美、沖縄、先島諸島の固有種 方言名:コーレーグスクェー
名前の由来、明確に書いてある資料はないが、「樹上性」(広辞苑)であることからキノボリであろう。トカゲについては不明。方言名のコーレーグスクェー、その由来も不明だが、その意味は面白い。コーレーグス(唐辛子)クェー(食う者)となっている。キノボリトカゲが唐辛子を食うかどうかについては、どの文献にも記載がない。
本種の全長についてもこれまで参考にしていたどの文献にも記載がなく不明だったが、今回新しく参考図書に加えた『ポケット図鑑日本の爬虫両生類157』にあった。
カメレオンほどではないが体の色模様を変える。地面の上にいることもあるが、木の幹や枝でよくみることができる。樹上で昆虫などを捕食する。
写真は職場で撮った。職場は那覇市内ではあるが、周りに緑が多い。
これは地面に近い位置にいた。「しまった!見つかったか」といった表情。
キノボリトカゲ(サキシマ)
先島木登り蜥蜴 アガマ科 方言名:コーレーグスクェー
記:ガジ丸 2005.8.5 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行