羽衣のような
沖縄の梅雨時である5月から6月にかけて、畑の草刈をしていると、小さい(体長15ミリくらい)けれど真っ白でよく目立つ虫に出会う。その虫、2014年に初めてその存在に気付いて、その後毎年、写真は撮っていないが見てはいる。
その虫は、私の感性で言えば「羽衣があるとしたらこんな感じかな」と思うほど華奢で、上品で、そして、きれい。ハゴロモ科という昆虫の1科があるが、「体に比して前翅が大きく、美しい色彩を呈するものが多い」(広辞苑)の「美しい色彩を呈する」ということから美しい羽衣に喩えられての名称であろうが、ハゴロモ科よりも本種がきれい。
そんなきれいな虫が蛾の類であるということをすぐには判断できず、図鑑をあれこれ調べて、やっと「トリバ科」という、いくらか似たようなものを見つけ、図鑑に写真は掲載されていなかったが、全身が白いシロトリバなるものがいるといういことを知る。
宜野湾市民図書館や西原町立図書館にある日本産蛾を紹介しているどの図鑑にもシロトリバの写真は無い。なので、写真の者がシロトリバであるという確信が持てない。というわけで、那覇にある「沖縄県立中央図書館へ行かなきゃ」となる。
「行かなきゃ」と思ったのは去年(2017年)夏頃、沖縄県立中央図書館が、移転するため2018年3月一杯で一旦閉館するという話を聞いていて、「閉まる前に」と考えていた。が、その後、腰痛となって、畑辞めるとなって、引っ越しとあれこれあって、閉館ちょい前の3月28日にやっと県立図書館へ出掛けることができた。
県立図書館に『日本産蛾類大図鑑』という図鑑があり、シロトリバはそれにあった。個体数は少ないみたいで、その説明もそう詳しくはない。同書は1982年の発行。それから36年も経っているが、他の文献にシロトリバは載っていない。
シロトリバ(白鳥羽):鱗翅目の昆虫
トリバガ科 九州、奄美大島、徳之島、西表島、他に分布 方言名:ハベル
名前の由来は資料がなく正確には不明で、漢字表記の白鳥羽も私の勝手な想像であが、根拠がない訳ではない。見た目が白い、『日本産蛾類大図鑑』にも「体、翅とも白色」とあり、それが本種の目立つ特徴の1つ、よって、白とつく。鳥羽についてはサツマイモトリバの頁でも書いたようにトリバガ科の翅の形状が鳥の羽に似ているから。
本種の目立つ特徴はもう1つあり、「前・後翅とも羽状翅はひも状に細く」(日本産蛾類大図鑑)で、他のトリバガと比べても蛾のイメージからは遠い上品さがある。
九州、奄美大島、徳之島、沖永良部島、西表島、台湾に分布と文献にあったが、私は沖縄島中南部にある私の畑で何度も見ている。
開張20ミリ内外。幼虫はアサガオに寄生するとのことだが、私が成虫を見たのはアサガオと同じヒルガオ科であるサツマイモの葉上。成虫の出現は文献に記載がなく正確には不明だが、私の写真で限って言えば5~6月となる。
記:ガジ丸 2018.4.7 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『いちむし』アクアコーラル企画発行
『昆虫の図鑑 採集と標本の作り方』福田晴夫他著、株式会社南方新社発行
『日本産蛾類大図鑑』井上寛、他著、(株)講談社発行