世界的に見れば金持ちであるが、日本国の中では貧乏人にランクされる私から金を借りた奴がいる。Mという。彼は私の3倍近い年収がある。体重も1.5倍ある。
「来月の給料が入ったら返す」という話だったが、その日になると、
「来月、模合金を取るから、それで返す」という話だったが、その日になると、
「7月のボーナスまで待ってくれ」という話だったが、その日になると、
「12月のボーナスまで待ってくれ」とヘラヘラ笑いながら言う。ふざけた野郎だ。
「おめぇが遊ぶために、俺は炎天下で肉体労働をしてるんじゃ無ぇぞ!」と私は言いたいのである。4月に借りて、5ヶ月経った今でもまだ返さない。良い奴なんだが、古くからの付き合いなんだが、催促してもヘラヘラ笑うばかりの彼を見ていると腹が立つ。なので、ヘラヘラ顔を眺めながら、「太った猿め!」と心の中で罵ることにしている。
新しく事業を始めた友人がいる。Hという。そのオープンパーティーが先週の土曜日にあって、私も出席した。じつはその1年余り前、世界的に見れば金持ちであるが、日本国の中では貧乏人にランクされる私に、「出資しないか?」との依頼がHからあった。彼は私の貧乏を知らないので、全くの善意からの申し出である。
Hは有能であり、誠実である。温厚で正義感が強い。長い付き合いの中でそれらのことを私は感じている。勤めていた会社での一所懸命な仕事ぶりも友人たちから聞いて、知っている。そんな彼なので十分に信用できる。信用度はMとは雲泥の差がある。
それでも私は、彼の申し出を断った。貧乏人の私が断った理由はもちろん、「貧乏だから」である。数万円ならともかく、数十万円という大金である。それは私の全財産に値する。何かあった時に使える金が無いという状態になる。それは嫌なのである。
断った理由は「貧乏だから」ということが9割方占めるが、残りの1割に、別のちょっとした理由があった。Hが始める事業についての知識が、私に無かったのである。
「太った猿?猿を太らせて何するつもりだ?食うつもりか?」
私はスポーツ観戦を、テレビでも実物でもほとんどやらない。スポーツにはあまり興味がないのである。朝青龍がどーのこーの、ハンカチ王子がどーのこーの、ハニカミ王子がどーのこーのなどは、ニュースで知っているだけである。
サッカーにもあまり興味が無くて、Jリーグの試合どころか、ワールドカップの予選どころか、ワールドカップの本戦でさえ、実況中継を観ない。ニュースで済ませる。そんな私なので、フットサルと言われても、「何それ?」だったのである。
オープンパーティーでの挨拶によると、フットサルは南米などで盛んで、日本でもこれから人気の上がるスポーツらしい。Hの始めた事業というのは、フットサル競技場の運営である。2年間悪戦苦闘して、やっとオープンとなった。成功を祈る。
記:2007.9.7 島乃ガジ丸