ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

傾かない天秤

2008年10月31日 | 通信-その他・雑感

 現場が忙しいとのことで、去った日曜日、休日出勤となった。久々の肉体労働、終わった後のビールが美味いので、それはそれでいいのだが、時間を取られるのが嫌。
 週末は稼ぎ時である。「稼ぎ」はお金じゃなくて、調べ物をしたり、記事を書いたり、絵を描いたり、音楽を作ったりの稼ぎ。私の創るものなど、他人にはどうでもいいことであろうが、私にとっては人生の楽しみとなっている。なので、大事。
 10月はそれまでも、第二週末は宮崎から遊びに来た友人と過ごし、その翌週は母の一周忌があったりして、週末の稼ぎ(創作の)が少なかった。そして先週末、金曜日は金曜日の職場の仕事に時間を取られ、日曜日には上述の休日出勤が予定にあった。
 で、その間の土曜日、この日は一日、創作に充てたいと考えていた。ところが、前日、桜坂劇場から送られてきた10月の(上映作品などを紹介している)小冊子を見た時、それに挟まれていた封筒に気付いた。映画招待券が入っていた。桜坂劇場は会員に対し、その誕生月に招待券を1枚くれる。で、私の誕生月、10月限りの映画招待券。
 これまで、そういった無料の招待券を私は何枚も無駄にしている。時間の都合がつかなかったりしたのだ。1枚1000円、発泡酒なら7、8本飲める。勿体無い、と今回は思った。特に観たいと思う映画は無かったのだが、観に行った。

 特に観たい映画は、じつは、その前日まではあった。『きみの友だち』という作品。テレビなどで話題になっていなくて、一般にもあまり知られていないと思うが、小冊子に書かれてある紹介文を読んで、気になっていた。その後、たまたま友人のSから電話があって、その映画のことを彼が大いに褒めていたので、観たいと思っていた。
  が、残念ながら前日に上映終了。まあ、終わったものはしょうが無い。で、その次に気になっていた『たみおのしあわせ』を観た。オダギリジョーが主役、原田芳雄がその父親役で準主役。他に大竹しのぶ、小林薫などの芸達者が出ている。大いに期待する。
 が、残念ながら、映画は期待ほどのものでは無かった。私の感性では理解できないシーンがいくつも出てきた。ラスト近くになるにつれてそういうシーンは増えていった。何で父と息子が結婚式場から手を繋いで逃げるの?何で突然、死んだ母親がバスから降りてきたの?など。ラスト、画面には「そして夏になった」と文字が出て、それで終わった。夏が来てどうなったの?と私の感性は消化不良で終わった。

 まあ、そんなことはあっても、それなりに面白かっし、1000円を無駄にせずに済んだのだ。めでたしめでたしである。と思いつつ、外のベンチに座って一服する。
 一服しながら考えた。1000円は無駄にしなかったが、さて、映画を観ていた2時間という時間は無駄ではなかっただろうかと。ちょっと判断に迷う。映画館への往復を含めて3時間、家で絵を描いていた方が楽しかったかも、と思ったのである。
 1000円+映画と3時間を天秤にかける。どちらが勿体無いかの天秤だ。天秤はどちらにも傾かない。映画の後、散歩しながら歩いて帰った。1万5千歩の3時間。この3時間もまた、天秤にかけてみた。今度も天秤は傾かない。そして、それが何故かはすぐに気付いた。平和な日本でのんびり生きている私の時間に、天秤で量れるほどの価値の差は出ないということだ。生きることに不安の無い3時間、何をしても目糞鼻糞。
          

 記:2008.10.31 島乃ガジ丸