友人Iが大腸ガンで入院し、大腸の一部を切り取るという大手術を行った。幸い、手術は成功し、彼は今元気で、大好きなビールも飲めるようになっている。
歳を重ねるほどに肉体は衰える。筋肉だけで無く、体を形成する細胞の一つ一つが老化して弱っている。骨も皮も、関節も筋も、脳も内臓も弱る。Iは煙草を吸い、酒を飲み、ストレスを感じる仕事をしている。それがさらに体を弱らせる。
ガジ丸の唄の一つ、『病も山のように』の一節、
これまで溜めてきたツケが来て 霞み目 難聴 歯周病
もはや限界超えてる 血糖値 倒れても当然 高血圧
誰のせいでもないのさ不摂生 運動しないで食うばかり
そんなこんなでやっぱり歳とれば 病も山のようにやってくる
仕事のストレスはほとんど無いが、I同様、煙草を吸い、酒を飲む私もまた、肉体はそれなりに衰えている。この30年で病院(歯医者除く)の世話になったのは、親指の爪先半分を切り落としそうな怪我で救急病院に1回、脂肪種の切除で2回、膝の関節炎で1回の計4回だけだが、じつは私にはおそらく、表に現れない病気があるに違いない。50過ぎた不摂生のオッサンに、何も無い、ということは無い、と思う。しかし・・・、
私の考えでは、オジサンに限らず、人の体は絶えずガン細胞に狙われている。そしておそらく、ときどきガンになっている。そのガンが症状として表に現れる前に、体内の抵抗勢力たちが頑張って、ガンを治しているに違いないのだ。私はたぶん、何十回も体のどこかにガン細胞ができ、気付かぬうちに治っているのだと思う。
私の考えでは、検査をするから病気が見つかる。見つかると、放っておけばそのうち勝手に治るものでも、薬飲んだり、手術したりする。薬や手術に頼ると体内の自然治癒力が弱まり、次に似たような病気になった時にはもはや、薬や手術に頼らなければ治せなくなる。そうなると、定期的に検査を受け、早期発見を心掛けなければならなくなる。
何が言いたいかのと言うと、薬や手術によって、体が本来持っているはずの自然治癒力が弱くなるってこと。病気が見つかると薬漬けにされたり、手術されたりして、自らの生きようとする力を衰えさせているってこと。つまり、病気が見つからなければ、薬や手術に頼ることはない。で、私はこの30年、健康診断を受けていない。
大腸ガンの手術をしたIは、それまで(手術は8月、その3ヶ月前には会っている)普通に元気だった。病気していそうな顔付でも体付きでも無かった。それが突然、「悪性腫瘍が見つかった、患部だけ取り除くには腫瘍が大きすぎる、大腸の一部ごと取り除かなければならない。」と言われたのだ。まさに青天の霹靂であったに違いない。「まさか自分がそんな病気になるなんて」と思ったに違いない。
「まさか自分がそんな病気になるなんて」なんて、私なんぞが全くその類である。だから定期健診なども受けないのだ。私の体に「何も無い、ということは無い」とも思っているが、あったらあったでいいさ、死ぬ時は死ぬ時さ、とも思っている。
記:2010.9.24 島乃ガジ丸