私の畑ナッピバルの南隣はTさんのキャベツ畑となっている。5月に入ってTさんはキャベツを収穫し始め、出荷していた。そして、今週月曜日、残り(全体の約半分)を全て刈り取っていた。「こんだけ一遍に収穫したら車3~4台分になるな、今日一日で行ったり来たりするつもりかな」と思っていたら、Tさんに声を掛けられ、キャベツを5玉頂いた。「今日で全部採るつもりですか?」と訊いたら、
「今日で終わりだ、長雨で多くが腐ってしまった」と言う。見ると、刈り取ったキャベツの多くは畑に残されており、車に載せられたのはその内の三分の一程度だった。残されたキャベツは全て包丁で縦横に切られてもいた。「厳しいなぁ」と思った。
Tさんからはその2週間前にもキャベツ2玉を頂いていた。Tさんのキャベツは大きいのでその時のキャベツもまだ1玉と少し残っていた。そこへさらに5玉、独り者ではとうてい消費できない。よって、その翌日、近所の先輩農夫のNさんが来たので彼へ1玉、従姉 の亭主Tに会ったので彼に1玉をそれぞれおすそ分けした。あと2玉を別の従姉Hと友人Oに持って行こうかと思ったが、ちょっと閃きがあって、それは考え直した。
「キャベツを保存食としよう」と閃いた。沖縄の夏場はあんまり暑くて葉野菜が育たず不足する。キャベツを茹でて冷凍しておく、あるいは酢漬けにしておいて、それを夏場に食うことにしようと思った。それで、夏場の野菜不足が補える。
今、野菜はほとんど自家生産で間に合っているので、私の食費(食べ物)は肉や豆腐などだいたい2日で500円くらい、月にすると7500円程度で済んでいる。夏場を冷凍キャベツで乗り切れば、年間を通じてこの金額でやっていける。
飲み物はどうだろう?と考えた。会社を辞めて貧乏になってからビールが発泡酒に、ワインも安物となった。ひと月で、発泡酒は25缶2500円ほど、ワインは1800ミリリットル入りボックス880円のもの、日本酒は四合瓶約1500円程度と高いが、たまにしか飲まないので、これもひと月分である。飲む機会の多い泡盛は値段が安いので、ひと月に換算するとだいたい1000円くらい。よって、私がひと月に消費する家飲みアルコール代は約6000円となる。飲食費は計12500円、まあまあ質素。
思えば、会社勤めをしていた頃、私は贅沢であった。むろん金持ちでは無かった。会社は零細企業なので給料も安い、私の年収は多い時でも300万円ほどしかなかった。「しかなかった」というのは、世間一般から見た限りのことで、今の私から見れば「おー、俺はそんなに貰っていたのか、金持ちだったんだ」と思えるような金額だ。
その頃の贅沢、「発泡酒なんて飲めるかい!」だったし、ワインは四合瓶で1000円程度のものだったし、大好きな日本酒も、吟醸酒とか大吟醸などといった値段の高いものをよく飲んでいた。美味しいと評判の山城牛のステーキもたまに食っていたし、鯛やヒラメ、マグロの刺身もしばしば食っていたし、いやー、贅沢だった。
そんな贅沢、農夫でいる限り、もう復活することはないだろう。そんな贅沢、それが人並み生活であるというのなら、農夫にとって人並み生活はハードルが高い。そして、干ばつで泣き、長雨で泣き、病虫害にも泣く。農夫の歩く道にはそんなハードルもある。
記:2014.5.23 島乃ガジ丸