ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

マスコミが親分

2006年05月12日 | 通信-社会・生活

 5月5日は子供の日でもあるが、沖縄では那覇ハーリーの日でもある。ハーリーは、元々は旧暦の5月4日に行われた沖縄の伝統行事であり、漁師の街糸満では今でも旧暦5月4日に行われているが、その辺の詳しいことは別項で述べる。
 糸満ハーリーはほとんど途切れること無く続いているらしいが、那覇ハーリーはしばらく途絶えていた。今から30年ほど前に再開され、現在では観光客も集まる那覇の大きなイベントの一つとなっている。新暦5月5日に那覇新港(安謝港)で行われた那覇ハーリーに、私は生まれて初めて出かけた。先週の金曜日のことである。
 友人のH夫妻と一緒。爬竜船の写真を撮ったあと、立ち並ぶ屋台を物色する。アグー(沖縄にいる豚の品種、美味しいと評判の肉)のトントロ焼きを買い、ケンタッキーフライドチキン(H夫妻の大好物、さすが筋肉質なのである)を買い、オリオンビールを買って、キリンビールの屋台の裏にあるテーブルに座る。キリンビールの屋台には、売り子の可愛いお姉ちゃんがいて、キリンビールのテーブルでオリオンビールを飲んでいる我々にも笑顔で、「キリンビールもよろしくお願いします」と優しく言う。その可愛さと優しさにほだされて、私とHが1杯、女房のE子が2杯、キリンビールを飲んだ。
 近くのステージで民謡のコンサートをやっていたのでしばらく観た。ステージの真向かいにはテレビカメラがあった。テレビ放送用に録画しているみたいであった。ステージでは若い、まだ大学生だという可愛い女が上手(プロだから当然か)に民謡を歌っていた。その時、ステージのすぐ前に一人の老人が出てきて、カチャーシー(最も有名な沖縄の踊りの一つ。基本の形はあるが、概ね自由に踊ってよい)を踊りだした。よくある風景である。一人が踊りだせば何人かが続き、場は大いに盛り上がる。
  音楽を聴いて体が踊る。普通のことである。特に祭りであれば、それは当たり前のことである。ところが、爺さんが踊り始めて10秒も経たないうちに、テレビ関係者と思われる男が出てきて、爺さんの踊りを止めた。ステージは150センチほどの高さがある。爺さんが出演者を邪魔することは無い。でも、止めた。テレビ局の人間は、爺さんの頭がちょっと映るだけでも邪魔と判断したようであった。
 「今、テレビの撮影中だから、ちょっとそこどいて!」と叫ぶ情景を、前にワイドショーかなんかで見たことがある。「テレビだから・・・」は、「親分が通るから、そこどけ」と同じくらいの強制力を一般人に与えるようである。爺さんを止めたテレビ局の人は、けして居丈高では無く、なだめるように優しく爺さんに接してはいたが、それでも、祭りを素直に楽しもうとした一庶民である爺さんの、その楽しみを「テレビだから」という理由だけで理不尽に奪っている、と私は感じたのであった。
          
 テレビこそが、つまらないものを面白いものとし、大切なことをどうでもいいこととし、今、何が流行しているのかを決めている、・・・ようなのである。というわけで、今の世では、「テレビが親分」なのであろう。少なくとも、そう思っているテレビ関係者の人が多いのであろう。楽しみを奪われた爺さんは、とんだ災難だったのだ。

 記:2006.5.12 ガジ丸