ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

首里劇場

2010年12月31日 | 沖縄05観光・飲み食い遊び

 首里高校男子の大先生

 月曜日から木曜日まで勤めている職場は建設関連会社で、公共工事の増える10月頃から忙しくなる。先生も走るという12月は民間の仕事も増えてさらに忙しくなる。肉体労働者はよって、10月からはずっと年末まで走り続けるということになる。
  そんな急がしい去年の12月、現場に借り出された。現場仕事の時にはたいてい、昼休みになると私は弁当を食った後、現場近辺を散策している。その日の現場は首里桃原にあった。その日もまた、写真を撮りながら近くを散策した。
 いくつかの昆虫と、いくつかの植物の写真を撮る。そろそろ昼休みも終わりに近付いて現場に戻ろうとした時、道端にツワブキの花が咲いているのを見つけた。
 「おー、もうこんな時期か」と時間の流れの速さを感じる。時間は宇宙船よりも速く過ぎていく、などと、しばし感慨にふけっていると、突然、女の、あの時のあえぎ声が聞こえてきた。あまりにも大声なので、まさか本物ではあるまいと辺りを見渡す。その推理は当たっていた。すぐ近くに首里劇場があったのだ。

  首里劇場とは映画館である。首里の静かな住宅街の真っ只中にある、ポルノ映画専門の映画館である。首里高校生であった私も高校の頃、そこで性教育を受けている。首里高校男子生徒にとっては、まさに人生の大先生なのであった。
 映画の斜陽の時期が長く続いて、街の映画館がどんどん潰れていく中、首里劇場は奮闘した。最近は集合型映画館が隆盛で、なんとか踏ん張っていた繁華街の映画館のその多くが店じまいした。それでもなお、首里劇場は踏ん張っている。レンタルのビデオやDVDだけでなく、ネットでもエロ映像はいくらでも手に入る中、それでもなお、首里劇場は生き残っている。そう考えると私は、首里劇場がたまらなく愛おしくなった。
 劇場の維持費もバカにならない額であろう。電気代、水道代、固定資産税などを考えればおそらく赤字経営なのであろう。それでも、ポルノ映画文化の灯が消えぬよう、爺さん(当時の店主、今も健在かは不明)は頑張っているのだ。これは私も、微力ではあっても協力しなければならない。たまには、ポルノ映画も観ようと決意したのであった。
     
     

 記:ガジ丸 2006.7.20 →沖縄の生活目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行