ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

クマバチ

2011年06月25日 | 動物:昆虫-膜翅目(ハチ他)

 食足りて喧嘩せず

 先月、大家の庭にあるトベラの花が満開になった。トベラは私の部屋のベランダのすぐ傍にあり、ベッドに寝ている私の頭からは2mも離れていない。窓を開けるとトベラの花の甘い匂いが漂ってくる。甘い匂いは甘い夢を見させてくれる。現実は女っ気の無い生活だが、トベラのお陰で、夢の中はハーレムの世界となる。
  満開のトベラの写真を撮っておこうと思い、晴れた日の朝、デジカメを持ってベランダに出た。写真を撮っている最中にブンブンうるさく周りを飛び回るものがいた。蜂。十匹以上のミツバチと数匹のクマバチがいた。クマバチもミツバチも仲良く、同じ木の花の蜜を吸いに来ていたのだ。大家のとこのトベラの木は大きい。花も溢れんばかりに咲いている。蜂の十や二十、あるいは三十でも四十でも、彼らに十分な蜜を提供できる。
 食は十分に足りているので、違う種類の蜂同士でも喧嘩はしない。生きていけるという安心感さえあれば、争いごとなど無用なこと。
 「この花の蜜は俺のものだ。みんなあっちへ行け。」
 「そんな。蜜が無いと俺たち死んじゃうよ。」
 「うるさい。そんなこと知るか。」
 「だって、蜜はいっぱいあるじゃないか。一人では食い切れないだろう。分けてよ。」
 「食いきれない分も含めて俺の物だ。お前らの分は無い。」
 なんてことには、たぶんならない。
 「やあ、ミツバチさん。その辺はまだ口をつけていないですよ。」
 「ご親切にどうもありがとう。クマバチさん。」なんて具合であろう。

 一方、豊かな国で衣食足りている人々が、さらなる富を得るために争っている。彼らにはこれで十分という限度が無いらしい。中には、余りにも欲が強すぎて、その欲を満たすために他人の財産や、あるいは命までをも奪う者がいるらしい。世界には今日の食い物さえ覚束ない人々も多くいるというのに、人間とはまったく不思議なものだ。

 
 オキナワクマバチ(沖縄熊蜂)
 コシブトハナバチ科 沖縄諸島、宮古諸島などに分布 方言名:ハチャ(ハチの総称)
 名前の由来が『沖縄昆虫野外観察図鑑』にあった。「体が黒くて、一見クマを思わせることから」で、沖縄近辺の固有種なのでオキナワと付く。
 方言名、ハチのことをハチャとかハチャーとか言うが、コオロギなどと一緒で、大雑把なウチナーンチュは、ハチの呼び名を細かく分けたりしないのだろう。
 黒色の体に黒青色を帯びた半透明の翅を持つ。倭国のクマバチ(キムネクマバチ)は胸部が黄色になっているが、オキナワクマバチは全体が黒。
 5月から8月に活動が活発になり、ゴーヤー、ナーベーラー(ヘチマ)、サンニン(ゲットウ)などの花に集まる。と文献にあったが、アパートの近くに住むクマバチたちはせっかちな性格のようで、3月に活動して、トベラの花の蜜を吸っていた。巣は枯木。
 体長20ミリ内外。成虫の出現は4~10月。沖永良部島、沖縄諸島、宮古諸島の固有種とのこと。石垣島、西表島、与那国島にはアカアシセジロクマバチが生息する。
 
 巣

 
 アカアシセジロクマバチ(赤脚背白熊蜂):膜翅目の昆虫
 コシブトハナバチ科 石垣島、西表島、与那国島に分布 方言名:ハチャ
 名前の由来が『沖縄昆虫野外観察図鑑』にあり、「胸背には灰白色の長毛が密生して白色に見え、脚が赤褐色を帯びるところから」とのこと。
 沖縄にクマバチ属はオキナワクマバチと本種の2種あって、オキナワクマバチは背中が真っ黒だが、本種は背中の一部が白い毛に覆われていることで見分けられる。
 体長は25ミリ内外。成虫の出現は3~11月。成虫は花の蜜を吸う。ヘチマやクサギの花に訪れるとある。巣は枯枝の木質部。 

 
 参考写真(本土産のキムネクマバチ)

 記:ガジ丸 2005.5.27 →沖縄の動物目次
 訂正加筆:2011.5.19

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行