ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

デージ、イチデージ

2019年05月24日 | 沖縄04行事祭り・生活風習・言葉

 デージは「大事」の沖縄語読みで、イチデージは「一大事」となる。どちらも日常会話に頻繁に出てくる。和語と同じくデージ<イチデージというニュアンスとなる。
 沖縄の有名な歌に「ウリヒャー デージ ナトーン」と始まる歌がある。テレビ観ない私なのでよくは知らないが、確かジョニー宜野湾という歌手が歌っている。
 ヒャーという沖縄語は良く耳にする言葉、その意味は感覚的にはよく知っているが、改めて沖縄語辞典で調べてみる。それによると、接尾語として「野郎、奴、人をののしる時にいう」とある。「クヌ(この)ヒャー、エナ(嫌な)ワラバー(童)ヒャー」と子供の頃、私は父によく言われていた。ただし、歌われている「ウリヒャー」はそれとは少々異なる。ウリは「(物、場所、又は時を指す)それ」という意で、「ウリヒャー デージ ナトーン」を感覚的に和訳すると「あれまあ、エラいことになっちまった。」となる。歌詞はその後、「お前が好きになった、これが恋なのか・・・」と続いていく。
 さほど有名ではないかもしれないが、好きな人は知っている歌に「イチデージなったわい」という題の歌がある。有名な民謡歌手、故登川誠仁氏が歌っている。お金が円からドルに替わって、ドルから円に替わってイチデージ、などといったことを歌っている。私の感覚ではイチデージがデージより強い大事(おおごと)なのだが、この2つの歌に限っては逆となっている。ドルが円になるより恋に落ちる方がずっと大事(おおごと)。
     

 さて、イチデージってほど大事(おおごと)ではないが、デージと思うことが今、私の身に起こっている。薬草研究家のHさんから「これ、あんたの名刺」と薬草普及会なるものの名刺(100枚入り箱)を渡されて、しばらくおしゃべり(名刺とは別の話が主)した後、部屋に戻って名刺の意味を考えて「ウリヒャー デージナトーン」となった。
 Hさんに「老人クラブで使いたいから薬草表を作って」と頼まれてから自分自身の勉強のためにもと、薬草の本十冊余に目を通し勉強する。勉強はして、頼まれたものも作ったのだが、その知識はパソコンに収められ、私の脳にはほとんど入っていない。100訊かれて2つ3つ答えられるかどうかくらい。「そんな俺が薬草普及会会長の助手ってか?それは無理だろう」と思う。でも、既にHさんは走り出している。どうする?
 どうする?と考えて、「面倒だなぁ」と思いつつも、鉢巻をして走る83歳を想像すると、無視はできない。で、翌日から野山の散歩時間を増やし薬草探し、図書館へ行く機会も増やし薬草の勉強、本を借りて、家でパソコンを開いて薬草の特徴書き。
 そんなことやっている内に「野山には毒草もある、それから先に調べておかないと、万が一間違って毒草を摂取、なんてことになったら大事だ」と気付き、先ずは毒草のことを調べなきゃとなる。のんびりやっていた野山の散歩も、のんびりやっていた薬草研究も、のんびりとは行かなくなった。一所懸命とか熱中してとかなど、私の性格には合わないことをやる羽目になった。これこそまったく「ウリヒャー デージナトーン」だ。
 ちなみに、大事は、デージの他にウフグゥトゥ(おおごと)とも沖縄語では発音する。意味は和語と同じで、デージとも同じ。少々上品な言い様になるかもしれない。
     

 記:2019.5.19 ガジ丸 →沖縄の生活目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行