ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

アシヒダナメクジ

2018年06月22日 | 動物:魚貝類

 殻を脱いだ貝?

 2014年6月6日、今まで見たこともない変な生き物に出会った。ヤンバル(沖縄島北部の通称)の山の中でとか、西表島のジャングルの中でとかでは無い。近くには住宅地も商業施設もある西原町の、その頃借りていた畑の中に彼はいた。
 彼は最初少し動いていて、それで動物であると気付いたのだが、私が近付いてカメラを構えると固まった。彼に最も近い生きものとして私の脳裏に浮かんだのはナメクジなのだが、体色が全然違うし、体も固そうだし、「たぶんナメクジじゃないな」と判断する。次に浮かんだのは海に住むアワビのような貝の、その殻を脱いだもの。「海の生き物がタカか何かに掴まって、ここまで運ばれて落ちたのかな?」と想像する。

 後日、文献で調べ、アシヒダナメクジという名の生き物であることを知る。「海の生き物かも」と私が想像した通り、『やんばるの自然』に「海岸にいるイソアワモチに近い仲間」とあったので、イソアワモチを調べた。『磯の生き物』にそれはあった。
 イソアワモチはイソアワモチ科の軟体動物で、殻を持たない貝の仲間とのこと。見た目は、上からの形状はほぼ円形で平たく、大きな突起がいくつかあって、本種とは大雑把に似ているが、両者を見間違えることはたぶん無い。しかし、両者がどれだけ近いのか詳しい文献は無く、アシヒダナメクジが殻を脱いだ貝なのかどうかは不明のまま。

 その後、彼に出会うことは無かったのだが、約2ヶ月後の8月15日、同じく畑の中でスーと移動中の彼を見た。2度とも朝9時頃であった。朝の9時頃はたいてい私は畑にいる。しかし、それ以後彼に出会うことなく。2018年2月、畑卒業となった。

 
 アシヒダナメクジ(足襞蛞蝓):軟体動物
 アシヒダナメクジ科 沖縄島以南、熱帯太平洋地域に分布 方言名:なし
 名前の由来は資料がなく不明。アシヒダもナメクジも不明。漢字の蛞蝓は広辞苑にあったが、足襞は『やんばるの自然』に「足襞目アシヒダナメクジ科」とあった。これは私の想像だが、体の左右の縁が襞になっていて、それを上下に動かして移動している。移動道具が襞なので足襞だと思われる。それでおそらく当たっている。
 ナメクジと名がついているがナメクジの仲間ではないとのこと。ナメクジはマイマイ目で、本種はアシヒダ目。アシヒダ目の他の動物がないかと調べたが、どの文献にも本種以外の記載は無かった。『やんばるの自然』に「海岸にいるイソアワモチに近い仲間」とあったので、イソアワモチを調べたが、これも詳しく書いてある文献は無かった。
 体長40ミリとあったが、私が見たものは60ミリほど。沖縄には戦後入ってきた外来種とのこと。「道端や畑にいて農作物の害虫」ともあった。ナメクジのように作物を食害するものと思われる。寄生虫である広東住血線虫の宿主にもなっているとのこと。
 
 左右の縁の襞を上下に動かして移動しているところ。

 記:2018.6.22 ガジ丸 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『いちむし』アクアコーラル企画発行
 『沖縄やんばるフィールド図鑑』湊和雄著、実業之日本社発行
 『西表島フィールド図鑑』横塚真己人著、実業之日本社発行
 『磯の生き物』屋比久壮実著、アクアコーラル企画発行