例年なら大型連休が終わると沖縄地方は梅雨入りなのだが、今年はまだ。週間天気予報を見ると、向こう1週間も雨マークは無い。梅雨入りは遅れている。
例年なら梅雨が明けると台風シーズンなのだが、今年は早々と台風がやってきた。「5月に台風は珍しいなぁ、難儀だけど、台風対策やっておくか」と、近所の先輩農夫Nさんがそう言って、自分の畑に向かった今週月曜日の朝、私も台風対策の最中であった。
台風はまだまだ先と思っていたので、強風で飛びそうな物が小屋の周りに多くあり、私の台風対策は時間がかかった。この日、アルバイトの面接があったので午前中の1時間ほどは抜けお昼前には畑に戻る。畑小屋の台風対策を続け、お昼になって弁当を食おうとしている時、近所の大先輩農夫N爺様が小屋前までやってきた。
「何している?」、「台風対策です」、「台風?この台風は沖縄には来ないよ」と言って、無駄な難儀をしているなぁとばかりにハッ、ハッ、ハッと笑った。ベテラン農夫はそう言うが、ラジオの情報では「沖縄に向かっている」だったので、N爺様が帰った後も私は台風対策を続け、強風に耐えられるようバナナの葉の剪定、ビワやモモなどの果樹へ支柱設置、トンネルネットの撤去などし、「台風にやられるくらいなら」とまだ十分太っていないエダマメ、その内の大きめのもの10株ほどを収獲し、小屋前テントを畳み、最後に小屋の補強をして、夕方5時過ぎにやっと終了。疲れる作業であった。
「強い台風」とラジオのニュースが言う台風6号は、12日未明には沖縄地方の一部を暴風圏に巻き込んだとのこと。朝目を覚ますと、外はいかにも台風のようではあった。でもそう激しくは無い。畳もうかどうしようか悩んで、結局そのままにして置いたベランダの遮光シートも、パタパタ風に煽られてはいたが、飛ばされそうな気配は無かった。8時頃には暴風警報も解除され、路線バスも走り、学校も登校になったらしい。
風がだいぶ弱まった昼過ぎに畑へ出ると、小屋も物置も、畑の作物にも被害は無い。収穫した10株以外のエダマメ約100株も全く倒されていない。畳み忘れていたネットの1つも無事。つまり、台風対策はしなくても大丈夫だったのである。
そこで、「この台風は沖縄には来ないよ」という89歳N爺様の言葉をを思い出した。台風6号は、確かにニュースが言う通り沖縄地方を暴風圏に巻き込んだが、それは一部であり、進路も予想の中心から離れ。風速も予報より弱かった。結果的に台風6号は、N爺様が言外に表現したかったであろう「台風対策などしなくていいよ」の通りとなった。ベテラン農夫は天気を肌で感じる能力があるのではないかと思った。
見習い農夫の私は、昨日(14日)からバイトを始めた。同級生のNがハーブ農場を営んでおり、人手が足りなくて困っているということで、その仕事を手伝っている。
仕事は収獲の済んだバジルの引き抜き作業。まあまあの力仕事だが、日頃から畑仕事で体を鍛えている私にとってそうきつくはない。であったが、ハウス内は厳しかった。暑いのである。ハウス内は激しく暑いのである。力仕事で要する筋肉の疲労を感じないほど暑かった。作業が終わってから腕が筋肉疲労で痺れているのに気付いた。
思えば、N爺様は夏も畑仕事をしている。N爺様は夏でも涼しい顔をしている。89歳のどこにそんな力があるのか不思議に思う。ベテラン農夫の能力は計り知れない。
記:2015.5.15 島乃ガジ丸