テレビを観ていた頃、時代劇で「武士の風上にも置けぬ奴」なんてセリフを何度か聞いている。武士にあるまじき行動をした、早く言えば卑怯者などを指していたと思う。
「風上に置けぬ」を広辞苑で引くと、「(臭気の甚だしいものが風上にあっては風下では耐えがたい意から)性質や行動の卑劣なのをののしっていう」とあった。「臭気の甚だしいものが風上にあっては風下では耐えがたい意から」という語源は初めて知った。なるほどと思った。ネコの糞が風上にあった時などは確かに「耐えがたい」のだ。
めぇみちおむすびライブのあった25日の朝、畑に出ると、隣の畑のTさんがキャベツの収穫をしていた。無口であまり会話することの無いTさんが珍しく私に声をかけ、彼のキャベツ2玉を投げて寄こした。その時の表情がいつになくにこやかだったので、しばらくユンタク(おしゃべり)した。にこやかには訳があった。
「キャベツがたくさん盗まれていて、それが何日も続いている。ワジワジー(怒る)して、ヌスルー(盗人)を捕まえてやろうと思い、今朝4時頃から近くで見張っていた。そしたら、車がやってきて、キャベツ畑の前で停まって、人が一人中へ入った。車を近付けていったら逃げてしまったが、ヌスルーの車のナンバーは覚えた。また、慌てたヌスルーが忘れていった包丁もある。これから警察に届けるつもりだ」とのこと。
翌日、キャベツの収穫をしているTさんに声をかけ、ヌスルーの件について訊いた。
「犯人は昨日すぐに捕まった。あそこの人だ」と彼が近くの畑小屋を指差した。私の畑の隣はSさんのウージ畑、その隣はSさんの友人(名前不明)のウージ畑、その隣に「O農園」と看板も掲げてある畑小屋がある。Tさんが指差したのはそこ。
「農作業の苦労を知っている同じハルサー(農夫)が犯人だったのか・・・」と私はとても残念に思った。同じ苦労をしている人間の、その苦労の成果を横取りするなんて、なんて奴なんだ、ハルサーの風上に置けぬもの、じゃないかと思った。
めぇみちおむすびライブのあった25日の夕方、良い天気で、風も心地よかったので宜野湾市我如古にある我が家から、宜野湾市大山にある「めぇみち」まで歩いて行った。1時間近くかかった。その途中、面白そうな飲み屋さんを発見し、「我如古公民館はここにあるのか」と気付き、お菓子屋さんの店前にある看板に「バレンタインデーに素敵な贈り物をもらった貴方・・・」と書かれているのを見て、思い出したくない事を思い出したりした。そんな中で、「おやおや」と思う面白い横断幕にも出会った。
その幕には大きな文字で「宜野湾市民とジュゴンどっちが大事」と書かれてある。「そりゃあ当然・・・」なのだが、「どこの誰が掲げた幕だろう?」と見ると、その大きな文字の右下隅に「移設推進協」と小さな文字があった。基地移設推進協議会だ。
移設推進派の感性では「ジュゴンより宜野湾市民が大事だから早く辺野古に基地を造って、普天間基地を移設しよう」ってことなんだろう。ということはつまり、彼らは「辺野古に住んでいる人々はどうでもいい」と思っているみたいだ。「辺野古区民と宜野湾市民とどっちが大事?」という横断幕を隣に掲げたいと、私は思った。
ジュゴンはまだしも、辺野古区民と宜野湾市民は同じウチナーンチュ、それを差別するなんて酷い奴らだ、ウチナーンチュの風上に置けぬもの、じゃないかと思った。
記:2014.3.7 島乃ガジ丸