折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

『序』、『破』、『急』を見事に演出~映画『必死剣 鳥刺し』

2010-07-21 | 映画・テレビ
居合道を志す者が修練し、必ず身に付けなければならない大切な心得の一つに『序・破・急』の教えがある。

そして、今、稽古していて折に触れ、注意されるているのが、このことである。

元々は、『雅楽』の世界の言葉であったが、後に世阿弥が『能楽』の世界に取り入れ、広く知られるようになった、とある。

居合道における『序・破・急』の考え方の大本は、この世阿弥の唱えた『序・破・急』の思想を取り入れたものである。

即ち、序・破・急とは、物の動きの順序を教えたもので、初めは静かに、次第に早く、最後は最も急にということで、居合いの刀の抜き方も、先ず鯉口を切り、静かに抜き始め、次第に速度を増し、そして最後は『鞘放れ』の瞬間、一気に激しく『抜きつける』。
この瞬間こそが最も速く、最も鋭く、これぞ居合の生命線と言われている。



映画『必死剣鳥刺し』の1シーン。


先日、久しぶりに映画を見に行った。

お目当ては、藤沢周平原作の『必死剣 鳥刺し』である。

この映画を見て、前述の『序・破・急』のことを思い浮かべた。


物語は、江戸時代の東北の小藩、海坂藩。

主人公は天心独名流の遣い手。

彼は、愛する妻に先立たれ、生きる意欲を失ってしまっている。
その彼が、藩政に悪影響を及ぼしている藩主の愛妾を城中で刺し殺す。

死を覚悟した主人公に意外なほど寛大な処分が下り、再び藩主の傍に仕えることに。

腑に落ちない思いを抱きながらも、亡妻の姪とのおだやかな日々の中で主人公は再び落ち着きを取り戻す。

ここまでが、序・破・急のうちの『序』の部分。

東北地方の美しい自然、慎ましやかなうちに張りつめた空気が漂う武士の日常生活が、さまざまな美しい所作とともに丹念に描かれていて飽きない。
藤沢文学を映像化すると必ず取り上げられる場面である。


そして、彼の助命に少なからぬ影響を及ぼし、庇護者でもある中老から、主人公に、必勝技“鳥刺し”をお上のために役立てろという秘命が下る…。
これまた藤沢文学でおなじみのテーマである『お家騒動』の構図である。

その相手は、藩主と対立している別家の当主。
彼は、直心流の達人で、藩主に対し臆せずに苦言を呈する唯一の存在である。

ある日、百姓一揆の鎮圧を巡って藩主に直談判に及ぼうと登城する別家の当主。

それを阻もうとする主人公。

手傷を負いながらも、この強敵を倒して主君を守った主人公。

ここまでが、『序・破・急』の『破』の部分である。


激闘の末、難敵を倒して主君を守り切った主人公に同僚たちから称賛のまなざしが注がれる中、そこには主人公の運命を暗転させる、全く予想のできない周到な罠が張り巡らされていたのだった。

非情な政道に翻弄されたことを知り、茫然自失する主人公。
あっけにとられる、同僚たち。

武士の矜持を踏みにじられた男の憤怒、激情が奔流となって爆発する。

ここからが序・破・急の『急』の部分に入る。

戦う相手は同僚たちである。
その同僚たちも、上司の命令には逆らえない。

それだけに、延々と続く肉を斬り、骨を断つ壮絶な斬り合い、殺戮場面には胸が痛む。

そして、切り刻まれた主人公が最後に見せた技、その技によって『鳥刺し』の秘剣が詳らかになる。

直心流の別家当主との斬り合いシーンも迫力満点であったが、運命の非条理に己を爆発させ、すさまじいクライマックスになだれ込んで行く場面こそ、それまで溜めに溜めてきたエネルギーが一気に解き放たれた、まさに、これぞ序・破・急』の『急』と言うべきものなのだろうと思った次第である。


『序』、『破』、『急』を見事に演出した『必死剣 鳥刺し』は、時代劇の醍醐味を満喫させてくれた映画であった。

猛暑の中、『蘊蓄』を傾け、熱い思いを伝える~特別居合道講習会

2010-07-19 | 武道

全剣連居合5本目『袈裟切り』の理合いを説く範士八段山崎特別講師


この教本の中には、

『静かに』、『すばやく』、『間をおくことなく』、『直ちに』、『同時に』

と言う言葉が良く出てきますが、この言葉の正確な意味をみなさん理解してますか、それを演武で表現できてますか。理解できていないのは論外だけど、理解できていても、実際にそれを演武で表現できなければ、理解できていなのと変わりません。

6,7,8,10本目のポイントの一つである『受け流しに頭上にふりかぶり』ということを実技において正しくやれているかな。

自分ではどんなに良くできたと思っても、それが『教本』どおりでなければ、それは自己流の居合であって、全剣連の居合ではない。


蒸し風呂のような体育館の中で、この日の居合特別講習の講師である範士八段山崎先生の熱のこもった説明が続いていく。


梅雨明けして2日目、早くも猛暑日となった昨日、県内範士による特別居合道講習会が開催された。

なにせ県内は言うに及ばず、全国的にも名の知れ渡っている山崎先生の特別講習とあって、炎天下、しかも3連休にもかかわらず県下各地より100名を超す居合愛好家が集まった。


会場内は、じっとしているだけでも汗が噴き出してくるほどの暑さだが、講習会に集まった全員が、一言も聞きもらすまい、見逃すまいと先生の講義に全神経を集中していて、こちらはまた別の熱さに溢れている。

午前中は先生の講話と全剣連居合12本の講義。
そして、午後からは実技講習。

いつもの講習会では、段別に分かれて行われる実技講習だが、この日は普段講師を勤める先生方も受講者に交じって山崎先生の実技指導を受けることに。

総勢100人余が広い会場一面に広がって居合を抜く様は、まさに壮観である。

この特別講習会、午後3時には終了となったが、山崎先生が『蘊蓄』を傾けてくださった、この講習会は集まった受講者一人一人にとって大きな収穫となったに違いない。

小生にとっても、炎天下、2回電車を乗り継いで1時間半かけて参加した甲斐のある充実した1日となった次第である。

プロゴルファー・池田勇太の一面

2010-07-16 | 雑感
昨夜は、7時から深夜までテレビの全英オープンゴルフの生中継を見ていて、メールのチェックを怠ってしまい、今朝、メールを開いて見ると大学時代の親友のHくんから、

先日、池田勇太選手から「全英がんばってきます」とハガキでの挨拶がありました。テレビで応援よろしくというメールが入っていた。


Hくんが、長年の夢であるSt・アンドリュース・オールドコースを始め、ゴルフ発祥の地スコットランドに『ゴルフの聖地』巡礼一人旅を終えてからもう1年が経つ。


その時、Hくんがまとめたレポート


この旅でHくんは、たくさんの人たちとの素晴らしい出会いを体験したとレポートで書いているが、そのうちの一人がプロゴルファーの池田勇太選手であった。

H君の話によると、ターンベリーGLで練習をしている池田選手の精度の高いアプローチに見入っていると、同選手から『1~2年のうちに必ずトッププロになります。日本に戻ってからもよろしく応援をお願いします』と挨拶され、感銘を受け、『あなたはすでに天下の池田勇太ですよ。頑張って下さいね、グッド・ラック』と言って別れたとのことであった。

その後、池田選手がKBCオーガスタで優勝した時にHくんがお祝いの手紙を送った所、何と彼から直筆の返事があったと、そのコピーを小生に郵送してくれた。


小生もそれを読ませてもらったが、一見、どことなくふてくされているように見え、ちょっと、とっつきにきくい雰囲気の池田選手からは想像できない、謙虚な文面に心を打たれたものだった。


そして、今回の『全英、頑張って来ます』というはがきである。

Hくんならずとも、池田選手の心映えには感激せざるを得ないだろう。


好漢!池田勇太選手を今夜もテレビで応援しよう。


若きゴルフ界のエースには、このひまわりのようにまっすぐに大きな花
を咲かせて欲しい

夢の跡~主(あるじ)なき広場

2010-07-14 | 雑感

お年寄りたちがゲートボールに興じていた広場は、今はその主(あるじ)の姿もなく、夏草が茂り、鳥たちの遊び場に。


パールとの朝の散歩。

黒目川の遊歩道に向かう道。

この日、ふと思いついて、いつもと違う道を行く。

数年前までは、よく通った道である。

遊歩道に着く手前に、ちょっとした広場がある。

その頃は、この広場にお年寄りの男女が寄り集まって、かんかん照りの暑い夏の日も、北風が吹きすさぶ寒い冬の日も、歓声を上げてゲートボールに興じていた。

その横をパールを連れて通り過ぎながら、いつか自分にもゲートボールを楽しむ日が来るのだろうか、だけど、まだ、まだゲートボールのお世話にはなりたくないな、などと思ったことを憶えている。

久しぶりに、その広場に来たが、そこにはもうお年寄りたちがゲートボールを楽しむ姿はなく、ゲートボールのために整備されていたグランドには、夏草が生い茂って、ハトを始め鳥たちの遊び場と化していた。

そして、その場に立ち止まり、あの人たちは、どうしてゲートボールを止めてしまったんだろう、歓声を上げていたあの人たちは、今どうしているのだろう、としばし感慨に耽った。

野草が繁茂した広場の一角には、ゲートボールが行われていた時に使われていたベンチや椅子が錆びついて無残な姿をさらしていた。

そんな光景を目にして、

夏草や  兵どもの  夢の跡

という芭蕉の一句を思い出した。

久々の1勝はご褒美!?~県下居合道大会

2010-07-11 | 武道

今年で40回目となる居合道大会の模様


『三信』の教え

昨日、県立武道館に初段から七段までの居合道を志す人たち300余名が集まって居合道大会が開かれた。

その冒頭の開会式で某先生の『三信の教え』という話が印象に残ったので、紹介しよう。

三信の第一の『信』とは、

我が師を信じよ。

三信の第二の信とは、

我が稽古を信じよ。

そして、三信の第三の『信』とは、

我、自身を信じよ。


 
試合開始前、真剣にウオーミングアップに励む選手たち(左)、試合の結果の判定がまさに下された瞬間(右)


久々の1勝

本大会に当支部からは7人が参加した。

この所、試合ではいつも1回戦で敗退していたので、久しく勝利の味を味わっていなかったが、今大会では久々に1回戦を突破することができた。

この勝利は、このところコツコツと地道に稽古を重ねていることに対する『ご褒美』ではと思った次第である。2回戦は敗退したが、落ち着いてベストを尽くせたので、敗れはしたが満足している。むしろ、2回戦(この相手は結局準決勝まで勝ち上がったのだが)は、『上には、上がいるよ』という、『戒め』の敗戦と自覚している次第である。

『四段』挑戦の昇段審査会まで残す所、3カ月弱、今、一生懸命稽古に励んでいるが、本大会の1勝はそんな自分への励みとなる1勝であった。