Kくんは自称<晴れ男>である。
彼が言うには、自分が参加したゴルフコンペでは、それまで雨が降っていてもスタート時間の頃には止むのだ、と。
そのKくんが、所属する東京邦楽合奏団の演奏会当日。
朝から雨脚が強く、止む気配がない。
<晴れ男>のKくんの神通力もさすがに今日は通じないだろうと思っていると、何と何と出かける段になって雨が止んで、空が明るくなってきたではないか。
『彼のことだから今頃、誰彼となく楽団員のみんなに、ほら、言ったとおり雨、止んだろう』と大はしゃぎしているんじゃない、と小生。
『そうだといいんだけど、そんな余裕あるかしら』とかみさん。
Kくんは小生が勤めていた会社の3年後輩である。
仕事での関係は全くなかったが、彼が入社した時から野球やゴルフと言ったスポーツを通じて親しくなり、『ネアカ』人間で人懐っこく、誰からも好かれる彼のキャラクターにすっかり魅せられて、在職中も退職した今もなお親密なお付き合いが続いている。
かれこれ40年近いお付き合いである。
そのKくんから昨年に続いて『邦楽演奏会』の誘いが来た。
昨年は、大学時代に吹いていた尺八を久しぶりに始めたので、聴きに来て、という誘いがあり、その時初めて『邦楽』の世界に触れ、坂田誠山さんの尺八のソロ演奏に深い感銘を受け、以後、ライブ演奏に足を運ぶきっかけを作ってくれた演奏会であった。
送られてきたメールには、今年は所属している東京邦楽合奏団が5周年、千葉邦楽合奏団が10周年の節目の年を迎え、記念合同演奏会と銘打って、会場も1800人収容できるすみだトリフォニー大ホールで行うことなったので、目下、大いに張り切っている旨、書かれていた。
早目に昼食を済ませ、かみさんと二人で出かける。
雨は完全に上がっていた。
『Kさんがクモ膜下出血で倒れたのは去年の暮れだったわよね、もうすっかり良くなったのかしら』とかみさん。
『来月のゴルフコンペに参加するって、張り切ってるみたいだから、もうよくなったんだと思うよ』と小生。
今回のコンサートは、邦楽を楽しむのもさることながら、彼の元気な姿を見ることも一つの大きな目的である。
会場である「すみだトリフォニー大ホール」は初めてであったが、その威容にはびっくりした。
開場前から長蛇の列で、開演時間の午後1時30分には1800人を収容する観客席が満員となった。
予想を超える盛況である。
そのため、今回は前回と違って、良い席がとれずに、遠くからしか見ることができなかったが、一心不乱に尺八の演奏に集中しているKくんの様子を見て、もう大丈夫と、一安心した。
そこは、まさに彼にとって、クモ膜下出血を克服して立つ晴れ舞台であった。
それにしても、大病を患って半年余りで良く演奏会に出られるまでに回復したものだ、きっと大変な努力だったんだろうけど、本当に良かったと心からその回復を喜んだ。
若い若いと思っていたKくんも、いつの間にか小生たちと同じリタイア組みの仲間入りである。
定年後の第二の人生の過ごし方のキーポイントは、『居心地の良い場所で、自分の好きなことに夢中になれる生活』 をどう送れるかにかかっている、というのが小生の考えであるが、彼の場合、まさにその『居心地の良い場所』と『夢中になれるもの』を見つけ、その上、志を同じくする多くの『仲間たち』をも得て、生き生きと今の生活を楽しんでいる風情から理想の第二の人生が垣間見えて、嬉しくもあり、また、ちょっぴり羨ましくもあった。
無心に尺八を吹いているKくんの姿を見ながら、そんなことを思っていた。
演奏会は、記念合同演奏会にふさわしく第一部、第二部とも力のこもった熱演であった。
特に、第二部の『竹取ものがたり』は筝、三味線、尺八、鼓といった和楽器の合奏に、ソプラノ、バリトンに合唱団も加わり、ミニオペラともいうべき意欲作であった。
小生にとって印象深かったのは、青森のねぶた祭りをテーマにした『祭りへの序章』という曲であった。
今から7年前、息子が青森で結婚式を挙げたのが、まさにねぶた祭りの最中のことであった。
笛や太鼓のお囃子に乗って、雄々しく行進する『ねぶた』。
『ラッセラ、ラッセラー』の掛け声とともに、祭りの気分をもりあげる跳ね人(ハネト)。
お揃いの祭りのはっぴを着た演奏者が奏でる『祭りへの序章』は、7年前のあのねぶた祭りの光景と息子の結婚式を懐かしく思い出させてくれた。
今回の演奏会は千葉・東京両邦楽合奏団にとってエポック・メーキングなイベントになったのは勿論のことであるが、Kくん自身にとってもきっと特別な意味合いを持った演奏会となったに違いない。
<プログラム>
演奏:東京・千葉邦楽合奏団
指揮:坂田誠山
曲目
祭りへの序章<改訂初演>
さくらの主題による学園讃歌『光』
匠(たくみ)<新作初演>
いざない<改訂初演>
歌と邦楽による『竹取ものがたり』
彼が言うには、自分が参加したゴルフコンペでは、それまで雨が降っていてもスタート時間の頃には止むのだ、と。
そのKくんが、所属する東京邦楽合奏団の演奏会当日。
朝から雨脚が強く、止む気配がない。
<晴れ男>のKくんの神通力もさすがに今日は通じないだろうと思っていると、何と何と出かける段になって雨が止んで、空が明るくなってきたではないか。
『彼のことだから今頃、誰彼となく楽団員のみんなに、ほら、言ったとおり雨、止んだろう』と大はしゃぎしているんじゃない、と小生。
『そうだといいんだけど、そんな余裕あるかしら』とかみさん。
Kくんは小生が勤めていた会社の3年後輩である。
仕事での関係は全くなかったが、彼が入社した時から野球やゴルフと言ったスポーツを通じて親しくなり、『ネアカ』人間で人懐っこく、誰からも好かれる彼のキャラクターにすっかり魅せられて、在職中も退職した今もなお親密なお付き合いが続いている。
かれこれ40年近いお付き合いである。
そのKくんから昨年に続いて『邦楽演奏会』の誘いが来た。
昨年は、大学時代に吹いていた尺八を久しぶりに始めたので、聴きに来て、という誘いがあり、その時初めて『邦楽』の世界に触れ、坂田誠山さんの尺八のソロ演奏に深い感銘を受け、以後、ライブ演奏に足を運ぶきっかけを作ってくれた演奏会であった。
送られてきたメールには、今年は所属している東京邦楽合奏団が5周年、千葉邦楽合奏団が10周年の節目の年を迎え、記念合同演奏会と銘打って、会場も1800人収容できるすみだトリフォニー大ホールで行うことなったので、目下、大いに張り切っている旨、書かれていた。
早目に昼食を済ませ、かみさんと二人で出かける。
雨は完全に上がっていた。
『Kさんがクモ膜下出血で倒れたのは去年の暮れだったわよね、もうすっかり良くなったのかしら』とかみさん。
『来月のゴルフコンペに参加するって、張り切ってるみたいだから、もうよくなったんだと思うよ』と小生。
今回のコンサートは、邦楽を楽しむのもさることながら、彼の元気な姿を見ることも一つの大きな目的である。
会場である「すみだトリフォニー大ホール」は初めてであったが、その威容にはびっくりした。
開場前から長蛇の列で、開演時間の午後1時30分には1800人を収容する観客席が満員となった。
予想を超える盛況である。
そのため、今回は前回と違って、良い席がとれずに、遠くからしか見ることができなかったが、一心不乱に尺八の演奏に集中しているKくんの様子を見て、もう大丈夫と、一安心した。
そこは、まさに彼にとって、クモ膜下出血を克服して立つ晴れ舞台であった。
それにしても、大病を患って半年余りで良く演奏会に出られるまでに回復したものだ、きっと大変な努力だったんだろうけど、本当に良かったと心からその回復を喜んだ。
若い若いと思っていたKくんも、いつの間にか小生たちと同じリタイア組みの仲間入りである。
定年後の第二の人生の過ごし方のキーポイントは、『居心地の良い場所で、自分の好きなことに夢中になれる生活』 をどう送れるかにかかっている、というのが小生の考えであるが、彼の場合、まさにその『居心地の良い場所』と『夢中になれるもの』を見つけ、その上、志を同じくする多くの『仲間たち』をも得て、生き生きと今の生活を楽しんでいる風情から理想の第二の人生が垣間見えて、嬉しくもあり、また、ちょっぴり羨ましくもあった。
無心に尺八を吹いているKくんの姿を見ながら、そんなことを思っていた。
演奏会は、記念合同演奏会にふさわしく第一部、第二部とも力のこもった熱演であった。
特に、第二部の『竹取ものがたり』は筝、三味線、尺八、鼓といった和楽器の合奏に、ソプラノ、バリトンに合唱団も加わり、ミニオペラともいうべき意欲作であった。
小生にとって印象深かったのは、青森のねぶた祭りをテーマにした『祭りへの序章』という曲であった。
今から7年前、息子が青森で結婚式を挙げたのが、まさにねぶた祭りの最中のことであった。
笛や太鼓のお囃子に乗って、雄々しく行進する『ねぶた』。
『ラッセラ、ラッセラー』の掛け声とともに、祭りの気分をもりあげる跳ね人(ハネト)。
お揃いの祭りのはっぴを着た演奏者が奏でる『祭りへの序章』は、7年前のあのねぶた祭りの光景と息子の結婚式を懐かしく思い出させてくれた。
今回の演奏会は千葉・東京両邦楽合奏団にとってエポック・メーキングなイベントになったのは勿論のことであるが、Kくん自身にとってもきっと特別な意味合いを持った演奏会となったに違いない。
<プログラム>
演奏:東京・千葉邦楽合奏団
指揮:坂田誠山
曲目
祭りへの序章<改訂初演>
さくらの主題による学園讃歌『光』
匠(たくみ)<新作初演>
いざない<改訂初演>
歌と邦楽による『竹取ものがたり』
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