折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

チャイコフスキーの「甘美な調べ」と三枝成彰さんの「名トーク」に酔う

2009-08-14 | 音楽
2か月ほど前のこと。

新聞を見ていて、あるコンサートの広告が目についた。

「はじめてのクラシック」~中学生・高校生のために~

会場:東京国際フォーラムホールA
曲目:チャイコフスキー
   ヴァイオリン協奏曲ニ長調
   ピアノ協奏曲第1番変ロ短調
   交響曲第4番へ短調

ご案内役:三枝成彰「チャイコフスキーってどんな人?」

指揮:小林研一郎
ヴァイオリン:瀬崎明日香 ピアノ:金子三勇士
管弦楽:新日本フィルハーモニー交響楽団

この「ノドから手が出る」ほど欲しいコンサートのチケットが何と1,000円とのこと。

これぞ、これからクラシックに親しもうとしている小・中学校時代の幼なじみのKくんを誘うにもってこいのコンサートだと意気込んで即チケットを予約した。


            
            コンサートのパンフレット。
            実に18ページにわたり懇切丁寧な解説が書かれていて、クラシック音楽入門
            用として大変参考になる立派なパンフレット。


先日、Kくんと二人でそのコンサートに行って来た。

チャイコフスキーの甘美な調べと案内役の三枝成彰さんの「ツボ」を押さえたわかりやすい解説と相まって、極上の午後のひと時を過ごすことができた。

以下はコンサートが終わった後の二人の会話である。

「今日は千円でチャイコフスキーの音楽を堪能させてもらってありがとう」
「<安かろう、悪かろう>でなく、充実したコンサートだった」
「クラシックにど素人の自分には、<安く>て、しかもポピュラーな曲で<わかりやすく>て、と願ったり、叶ったりのコンサートだった」

「山も音楽も、登って見て、生の演奏を聴いて見て、初めて素晴らしさが実感できる」
「そうだね、今はキミにもらったCDを聴くのが楽しみの一つなんだが、やはり生演奏は格別だね」

「いつも、キミに山や草花の解説をしてもらって、山歩きを楽しんでいるけど、今回のコンサートでは三枝さんの<ツボ>を得た解説がとても参考になった」

「前回一緒に行った久石 譲さんのコンサートでも、久石さん自身が解説役を務めていたけど、音楽だけでなく、その解説までもしてもらえるのは、初心者にとってはありがたい。特に今回は、三枝さん自身が指揮をして、オーケストラの各パーツの音と役割を実際にやって見せてくれたのには、感激した。そして、指揮者の役割とその大変さ、すごさがちょっとだけわかった。」

「クラシックファンを増やすと言う意味では、こう言う試みは大歓迎だね」

「<クラシック>って<古典>とばかり思い込んでいたけど、<一番すぐれた>と言う意味だとは、三枝さんの話で初めて知った」

「三枝さんの西洋の人は、精神性、メッセージ性即ち<理性>を芸術の分野の最上位に位置づけているのに対し、スラブやアジアではそのような制約は見られない、と言う民族や宗教の違いが音楽に及ぼす影響について言及した<音楽文化論>も面白かった」

「西洋人にとっては、<快楽の極み>のようなチャイコフスキーの音楽は低俗な音楽として評価しない。ヨーロッパの指揮者の中には、チャイコフスキーを一度も演奏したことがないことを誇りにしている人がいると言う話にはびっくりした」

「三枝さんは、<快楽は悪>というキリスト教的考え方が背景にあると説明していたが、花や月、そして季節の移ろいなど情緒的な面をことさら好む、われわれ日本人にとっては、<快楽は悪>と言う考え方には、ちょっと理解しがたいところがある」

「音楽は色々あっていいし、色々な楽しみ方があっていいと三枝さんも言っていたけど、本当にそう思う」



幼なじみのKくんは、どちらかと言えば「アウトドア派」で、「山歩き」は彼の得意分野。

一方、インドア派の小生の得意分野は「読書」や「音楽」など。

そんなお互いの得意分野を共有し合えれば、これからの人生もより豊かなものになっていけるかもしれないと予て二人で話していた。

そして、その話が実現したのが前回5月の「久石 譲 Classics vol.1」コンサート。

今回は2回目で、今年中にもう一度行こうと約束を交わして、この日は散会となった。