折々の記

日常生活の中でのさりげない出来事、情景などを写真と五・七・五ないしは五・七・五・七・七で綴るブログ。

画面に引き込まれた75分~『本田美奈子・最期のボイスレター』

2008-03-27 | 音楽

NHKテレビ『本田美奈子・最期のボイスレター』のオープニング
画面左は、ボイスレターのもう一方の当事者、作詞家・岩谷時子さん
(3月17日放送 NHKテレビ『本田美奈子・最期のボイスレター』より)


放映日がたまたま居合の稽古日と重なってしまったため、録画しておいたNHKテレビ『本田美奈子、最期のボイスレター』の取り置きビデオを見る。

ぐいぐいと画面に引き込まれ、1時間15分と言う時間の長さを忘れるほどの感動の時間であった。


テレビは白血病のため38歳と言う若さで逝った歌手の本田美奈子さんが、たまたま同じ病院に怪我で入院してきた作詞家・岩谷時子さんを励ますために彼女が吹き込んだ岩谷さん宛ての『メッセージ』とアカペラによる彼女の『歌』を軸にして、彼女が懸命に生きた日々を自然の移ろいを交えた美しい映像で再現していた。


本田美奈子さんと岩谷時子さんの『命の対話』をつないだボイスレコーダー
(3月17日放送 NHKテレビ『本田美奈子・最期のボイスレター』より)


病床にあって岩谷さんと本田さんとの間で毎日のように交わされたボイスレターは、本田さんが死を見つめながら、最後の命の輝きを燃やし尽くした『命の対話』である。

岩谷さんとのボイスレターでのやり取りを通して、本田さんの心がどんどん研ぎ澄まされ、浄化され、そして余人をもってしては容易に到達し得ない『高み』の心境へと上り詰めていくさまがテレビの画面を通して手に取るようにわかり、見るものの心に強く強く訴えかけてくるのであった。

そんな本田美奈子さんを見るにつけて、

人間って、あんなにも強くなれるものなのか
人間って、あんなにも優しくなれるものなのか
人間って、あんなにも素直になれるものなのか
人間って、あんなにも正直になれるものなのか
人間って、あんなにも謙虚になれるものなのか
人間って、あんなにも天真爛漫になれるものなのか

と改めて、彼女が歌手としてだけでなく、何よりも一人の人間として素晴らしい存在であった、ということをひしひしと感じさせてくれたのであった。


それにしても、この番組を見て、『縁(えにし)』と言うもの、見えざる『摂理』というものについてつくづく考えさせられた。

もし、本田さんが入院しているときに岩谷さんが怪我をしなかったら、もし、入院先が本田さんが入院している病院でなかったら、ボイスレターは残されることはなかったであろうし、本田さんの入院生活も全く違ったものとなっていたかも知れない。

そう考えると、天は非情にも彼女を若くして御許に召されたが、それと引き換えに、岩谷さんとのボイスレターの機会を作り、最後の命の輝きを燃やし尽くすべき場を与え、そして、命を紡いだ『メッセージ』と『白鳥の歌』とも呼ぶべき魂の歌声をそれぞれかけがえのない財産として、私たちに残してくれたと言うべきではないだろうか。

見終わってそんな思いを強く持った次第である。