「北大恵迪寮の男たち」を読む。(向井承子著)
恵迪寮(ケイテキリョウ)と読む。 北海道大学の学生寮である。 昭和35年の安保
闘争の前後にこの寮で青春を謳歌した学生たちが、社会に出てどう生きてきたかを
何人かの人たちにインタヴューした内容。 ドキュメンタリーの部類に属するのだろう
か。
今70代後半に至った人達であるが、高度成長の中で立派に一家をなした人々が取
り上げられている。 そしてその人格形成に大きな役割を果たしたのが、この寮での
仲間との生活であったと結んでいる。
バンカラの気風がまだ少しばかり残っている私には以下の寮内の暮らしは興味
深々。しかし時代はバンカラという言葉を死語同然に押しやってしまっている。 寮の
部屋の配置は現代風に個室となっていてプライバシーは保たれる構造にはなってい
るらしい。 しかし男子寮生はそのようには使用しない。
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毎年部屋替えがある。 そのとき上級生だろうが、「おれはこういう寮生活を送りた
い」と各棟毎にアドバルーンを揚げる。 その趣旨に賛同する寮生がそのフラッグの
下に集まる。 一つの棟は廊下を挟んで10の部屋は個室としてではなく、目的毎に
使用されるのだそうだ。
すなわち、寝る部屋、勉強部屋、物置部屋、炊事部屋ときには蛋白源の卵を入手す
るための鶏を飼う部屋なんてのもあった。そうなると廊下は本来の目的ではなく立派
な共有空間として寮生の飲み食い、議論空間に変質する。 各学部の試験情報やら
講義のスケジュールがもたらされ、興に乗れば議論は夜明けまで続く。 こんな雰囲
気が好きな男たちにとってはたまらない空間となる。一つの棟が機能的な一つの居
住空間となり10人が共同生活をおくる。
もちろん大学当局に見つかれば即刻退寮を言い渡されるが、昔からの伝統で寮生
の自治精神が尊重され、むやみに監視人が入り込むことは無いのだそうだ。
食事当番がありグループ全体の食事を作る。 家から送られてきた食料品はグルー
プ全員に配分される。アルバイトで得た金銭で購入した食料は自分のものであり同
時に仲間のものでもあった。そんな仲間との共同生活から一生の宝である友人関係
が構築されるのかもしれない。
♪♪ 都ぞ弥生の花むらさきに・・♪♪ 有名な北大寮歌はここの寮生の手になる
ものらしい。
20前にこの寮は男女共用になり、雰囲気ががらりと変わって現代的なものに変質
した。 しかしまだバンカラを好む学生はいるようで、男女が棟毎に区分けされている
のを利用して一部の棟は昔にもどりつつあるようだ。
私は男子校の出身だが、青春の一時期異性を意識することなく、同性だけの集団で
人間を磨くのも面白いものだと思うが、考えが古いだろうか・・・
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