----この映画、
ずいぶん前から試写を回していなかった?
「うん。
配給が松竹。
これは『おくりびと』と同じく、勝負に出た作品。
じっくりと、そのよさを伝えていきたいということだろうね」
----つまり、だれの胸にも響く
感動の作品ってことだね。
「そうなんだけどね。
どうも、ぼくにはいまひとつノレなかったな」
----どういうところが?
確か、今の日本が抱えている問題とも関わってくる
“老いと死”を見つめた映画ニャんでしょ?
「そう。
原作は井上靖の自伝的小説。
主人公の小説家・伊上洪作(役所広司)は
祖父の妾の下で育てられたことから
実母の八重(樹木希林)に捨てられたという
思いに捕われていた。
だが、その母に認知症状が表れる。
そうなると、喧嘩することさえできない。
本人は、本当にぼけているのか
それとも自分が都合悪い時だけ、
そう見せているのか…?
まともに向かい合うことができない。
映画は、そんな洪作の複雑な思いと、
日に日に奇怪な行動を取り始める八重を軸に、
母への反発から、
自分は家族を常に目の届くところに置きたいと願う洪作の下、
窮屈な思いをしている娘たち三姉妹のエピソードを
これまた巧みに描き分けていく。
また、描かれている時代も
昭和30年代から40年代ということで、
監督の原田眞人が実際に知っている時代。
それだけに、服装・小道具はもちろんのこと、
女性たちの言葉遣いに至るまで見事に再現されている」
----じゃあ、なにも問題ないじゃニャい。
「いや、贅沢な言い方かもしれないけど、
それが巧すぎるんだね。
さっきの時代背景から行くと、
まるで昭和30年代の松竹映画を観ているような感じ。
廊下の写し方なんて
小津安二郎監督作品を彷彿とさせるしね。
でも、逆にそのテクニックばかりが目立ってしまうんだ。
この原田眞人という監督、
『金融腐蝕列島〔呪縛〕』にしろ『突入せよ! あさま山荘事件』にしろ、
はたまた『クライマーズ・ハイ』にしろ、
作品のテーマに応じたタッチで映画を見せていく。
それは『狗神 INUGAMI』 『伝染歌』のようなホラーでもそう。
そう言う意味では、先ほど亡くなった森田芳光監督に通じるところあるんだけど、
なんだか、スマートすぎないか…って気になる。
それでいて、クライマックスの海のシーンだけ、
カメラが手持ちで揺れてそれまでの写し方と一変。
本来は、ここは『八日目の蝉』のラストのように
盛り上がるはずなんだろうけど、
どうもそうはならないんだ。
お約束のような感じで…。
『どんな道を通ってもゴールは一緒』だったかな。
いい言葉だけに惜しい。
とはいえ、樹木希林の演技はもう国宝級。
それだけでも、十二分に観る価値はあるけどね」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「映画って複雑だニャ」
※ベルイマン『処女の泉』のエピソードには笑いました度
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私は原田監督の面白さって、映像や物語をどんどんと展開してゆくのを見せる技術なんだと思うんですよね。
だから、面白いけど、どこか小手先で小さく纏まってしまう印象がある。
彼は、どっしりと一枚の画を見せる事をもっと考えたら、更なる高みに行けるんじゃないかと思います。
とは言え、本作はなかなかよかったのですが。
この映画、すべて
予想した方へ収まっていって、
そのまま終わったという感じでした。
あの海べのシーンがそれを壊すシーンだったとは思うのですが、
感情を揺さぶるところまではいってくれなかったです。