ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『おくりびと』

2008-05-11 14:24:00 | 新作映画
----この映画って、9月の公開だよね。
いま、話すの少し早くニャい?
「いやいやどうして。
この映画に関しては
内覧試写の案内がなんと2月から電話やファックスで…。
それだけ松竹としては自信作なんだろうなと
密かに期待はしていたけど、
なるほどこれはよくできている」

----ふうん。
そもそも『おくりびと』というのはニャによ?
「これは納棺師、
遺体を棺に納める人のこと。
葬儀屋とはまた別にこういう職業があるとは、
これはぼくもビックリだったね」

----主人公は本木雅弘だっけ。
「うん。彼が演じる主人公・大悟は子供の頃からチェロをやっていて
晴れてオーケストラの一員になれたと喜んだのも束の間、
その楽団が解散。
1400万円もするチェロを購入して張り切っていた彼も、
これを潮時と見定めて妻の美香(広末涼子)と共に自分の故郷へ。
そこで見つけた求人広告“旅のお手伝い”に引かれて
事務所を訪ねてみれば…というお話だ。
この納棺の事務所の社長・佐々木に山努。
そこで働く女性事務員に余貴美子。
『クライマーズ・ハイ』に続いて社長役の名優・山努は言うまでもなく、
余貴美子が久しぶりに彼女らしい役を得たって感じ。
ワケアリで流れ流れてこの地へという感じがよく出ていたね」

----ふうん。それで見どころはどこニャの?
どうせ、世間知らずの甘えた青年が一人前になっていくというお話でしょ。
「そんな言い方したら失礼だよ。
この仕事、死体を取り扱うわけだから、
けっしてきれいごとではすまない。
最初の現場で大悟を待ち受けていたのは孤独な老人の腐乱死体。
それを見たときの本木雅弘の演技がスゴい。
カメラはまったく死体を写さないのに
彼の驚愕、嘔吐の演技だけで
その凄まじさを語り尽くしてしまう。
そうそう、韓国映画と違って吐瀉物を見せないところも
その抑制ぶりに好感が持てたね」

----ふうん。まずは本木雅弘ありきってことか。
「そういうことだね。
で、彼の仕事での成長と歩調を合わせるように、
映画は<現代>についてコミットメントしていく。
美人だと思ったらニューハーフだった青年、
ヤンキーの女子高生、
ルーズソックスを履いてみたがっていたおばあちゃん----
その死に対して、残された家人がどう向き合うか。
脚本は、映画はこれが初めてという小山薫堂。
いやあ、それにしてもよく書けていたね。
夫の仕事を知って家を飛び出す妻、
そして大悟の生まれ育った複雑な家庭環境などが、
物語をさらにふくよかに広げてゆく」

----映像はどうニャの?
最近、ロケ地によく使われる山形が舞台だよね。
「うん。雄大な鳥海山を背景にした、四季の移ろい。
その叙情性も捨てがたいけど、セットもまたいい。
特に、かつて父がジャズ喫茶を経営し、
後に母が居酒屋を営んだという設定の
大悟の実家がビジュアルとしてオモシロい。
映画は、こういう背景が大事だとつくづく思ったね。
それだけで画のオモシロさが変わってくる。
カメラも真俯瞰で捉えたりなど、
本来なら必要ではない“遊び”が入っていて
それもまた楽しかった。
でも、最大の見どころはクドいようだけど
“納棺師”としての“仕事”を完璧にこなす本木雅弘。
その技は、もう芸術にまで高められていて
見ていて惚れ惚れしてしまう。
一種の様式美。
どんな仕事も徹底すればそれは人を感動させるものとなる。
これまでにはなかった新たな感動に自分でもビックリ。
と同時に、映画はまだまだやり尽くされていないと
その可能性を見せられた気がして
ほんとうに嬉しかったね」


           (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「でもこのタイトルがニャあ…」身を乗り出す

※山努、『お葬式』と見比べるのも一興だ度

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17 コメント

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思わず引きつる・・ (メビウス)
2008-09-05 20:34:07
えいさんこんばんわ♪自分も昨日試写で鑑賞しました。

あのマンションのシーンでの本木雅弘の演技は凄いですよね。観てる側にはあの腐乱した遺体を直接的には見せないものの、彼の熱演でその現場が如何に悲惨なものかというのを理解する事が出来、自分もかなり顔が引きつってしまいました(汗)
納棺師が高給なのは、葬儀だけじゃなくああいう辛い現場にも立ち合うからなのかもしれませんね~。地味だけど過酷な職業だと言う事も知りました・・・

それと久石譲の曲も凄い作品に合ってて、公式ホームページのFLASH版で聴きまくってますw
返信する
■メビウスさん (えい)
2008-09-06 22:36:23
こんばんは。

本木雅弘という人、
自分の目で作品を選んでるんでしょうね。
これだけの演技力がありながら
最近の出演本数はほんと少ないです。

久石譲の曲、この情景にピッタリでしたね。
そうか公式で聞くことができるんですね。
ちょっと行ってみます。



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納得 (ももママ)
2008-09-10 17:44:26
試写会で見た後にモントリオールでのグランプリ受賞を知りましたが、納得です。邦画が苦手な私ですが、今年一番とお勧めしたくなりました。
TBさせていただきました。
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■ももママさん (えい)
2008-09-10 21:04:48
この映画は、
配給元の松竹がずいぶん早い段階から
自信を持って宣伝していた作品です。

モントリオールでの受賞をきっかけに
大ヒットすることを願ってやみません。
返信する
一緒に吐きそうでした (たいむ)
2008-09-14 23:49:15
えいさん、こんにちは。
匂いにめっちゃ弱い私です。
酔でゲロゲロの人の介抱はできません。なにせ、見ただけで一緒になって吐き始めてしまうので(^^;
私も、思い出しただけで本木さんバリのマジ演技はできそうですよ(笑)
・・というのは冗談としても、「あなたの知らない世界」でしたね。

納棺師のお仕事も興味深かったですが、家族模様の垣間見える遺族の反応も興味深かったです。禁忌の領域のようでいて、ルーズソックスはアリというのも(^^)

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こんばんわ! (maru♪)
2008-09-15 04:19:12
納棺師という仕事はこの映画で初めて知りましたが、
美しい所作にビックリしました。
モックンも山努も見事にこなしていましたね。
モックンの演技良かったと思います!
そして脇を固める役者さんたちも素晴らしかったです♪
庄内の風景も美しかったです。
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■たいむさん (えい)
2008-09-15 10:16:06
こんにちは。

たいむさんも、やはりアレは苦手ですか。
だとしたら、あのシーンはたまらないですよね。
『猟奇的な彼女』という
チャーミングな映画、
あの中の唯一苦手なシーンがアレでした。

って、アレばかり喋っていますね。(笑)
返信する
■maru♪さん (えい)
2008-09-15 10:29:13

こんにちは。
ほんとうにこの映画はモックンあってのもの。
そして彼と絡む山努も見事でした。
あの食事のシーンは、
「ウマイんだよな、困ったことに・・・」の
名セリフとともに
いつまでも語り継がれそうですね。
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こんにちは (となひょう)
2008-09-15 18:27:13
3連休&TOHOシネマズ・デーということで、張り切って映画を3本観ました。どの作品もコメントしてみたかったのですが、うーんと、とりあえずコチラにお邪魔します。
これは観に行って本当に良かったと思いました。「王様のテレビ」に生出演していた本木さんは、イメージとは違い喋り出したら止まらないという感じでした。【納棺師】を描いた映画を作りたいと言った発起人というだけあって、思い入れも違うのかもしれないですね。
『おくりびと』という表現も素敵ですし、同時に改めて生と死について色々と感じる部分がありました。
そうそう、山崎努の食事のシーン。
「ウマイんだよな、困ったことに・・・」
ムシャムシャと美味しそうに食べる場面が、とても印象に残りました。
とても深い作品に思えました。
本木さんは「若い人にも是非見て欲しいです!」と力説してました。
私は、近い人の死を経験している親世代に是非見て欲しいと思いました。
とまぁ、色々と話したいことが湧き起こってくる作品でした。劇場は、朝から満員御礼状態でした。隣にいたギャル2人は、上映前にはペチャクチャとお喋りしてましたが。上映後は号泣し過ぎて言葉を失っていましたよ。
まだまだ話題になりそうですね。
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誤植ならぬ誤字 (となひょう)
2008-09-15 18:28:55
あ、間違えました。
「王様のテレビ」ではなく「王様のブランチ」をテレビで見て
でした。って、別に訂正する程のことでもないですが。
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