---- この映画、前に行ったとき
満員で入れなかったってヤツだよね。
「うん。とにかく人気が高い。
原作が角田光代の代表作にしてべストセラーだからかなと思ったけど、
これは見事に映画になっていたね」
----映画になっていた…どういうこと?
「簡単に言えば、
映画としての緊張感と高揚感があるんだ。
いつも言っていることをまたまた繰り返して言うけど、
こういう原作ものに対して、
その物語にケチをつけてもしようがない。
要は、監督がその中のどこに、
映画たりうる部分を見出し、
それをどうフィルムに定着したか…。
勝負はそこにかかってくる」
----それは分かるけど、
どんな内容かぐらいは知りたいニャ。
「これはね。
乳児の頃に誘拐された娘が
その後、犯人に育てられ、
4年後、ようやく実の母の元に戻る…というもの」
----え〜っ。それは厳しいニャあ。
その子は、犯人を本当の母だと信じてきたわけでしょ。
「そういうことだね。
急に、『こちらの人が本当のお母さん』と言われても、
簡単に『はいそうですか』ですかとなるわけがない。
映画は、そこから始まる悲劇。
誘拐さえなければ、普通の家庭が営めたはず…という側面と、
過去の誘拐逃亡の間、ふたりはどんな暮らしをしたかが描かれる。
原作が、どのような章分けをしているのかは分からないけど、
映画は、ここは巧く料理されていた」
----そこが「映画になっていた」と言うこと?
「それもあるけど、
ビジュアルとしての細かい気配りだね。
たとえば、主人公の恵理菜(井上真央)に
過去の事件を聞きに来るルポライターの安藤千草(小池栄子)。
最初、彼女が登場したとき、
だれが演じているのか分からなかった。
猫背で足を少し引きずりながら歩く。
それと、ここからがが急展開で映画としてもオモシロくなっていく
カルト集団エンジェルホームのシーン。
主宰者のエンゼルに余貴美子。
ただでさえ存在感がある彼女。
出そうと思えばいくらでもカリスマ性を出せるのに、
ここでは普通のおばさんが教祖になった、そういう感じ。
その俗物ぶりを出せるのもやはり彼女ならでは。
『映画はキャスティングで決まる』という言葉もあるけど、
これはその好例だね。
あと、嬉しかったのはその音楽。
映像に寄り添うように繊細。
ドラマチックなシーンでも決して出しゃばらない」
----う〜ん。それ分かるニャあ。
最近の映画は、やたらとオーケストラでドラマチックに盛り上げるものね。
「でしょ。
誰かと思えば、これが贔屓の安川午朗。
これらのことでも分かるように、
最近の日本映画が陥っているワンパターンから抜け出そうとしているのがこの映画。
その最たるシーンは、ラストショットに現れる。
ここは、ヒロインの口から
長い心の旅の末、彼女が到達したある境地が
心の底から湧き出てくる文字どおりのクライマックス。
カメラはそんな恵理菜の感情の高ぶりを
そのまま捉えようと、手持ちで軽く揺れる。
(手持ちは記憶違いかもだけど、そう感じさせる)
そして、観る者を共にその高揚に導きながら潔く終わるんだ。
ロングに引いた余韻のシーンなど付加しない。
ぼくは観ながら、『ここで終わってほしい。いや終わるべきだ』と、
そう思って観ていただけに、ほんとうに嬉しかった。
そう、この感動にクールダウンは必要ない」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「ラプンツェルも誘拐されたのニャ」
※「映画を観た」という満足感に浸れる度


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満員で入れなかったってヤツだよね。
「うん。とにかく人気が高い。
原作が角田光代の代表作にしてべストセラーだからかなと思ったけど、
これは見事に映画になっていたね」
----映画になっていた…どういうこと?
「簡単に言えば、
映画としての緊張感と高揚感があるんだ。
いつも言っていることをまたまた繰り返して言うけど、
こういう原作ものに対して、
その物語にケチをつけてもしようがない。
要は、監督がその中のどこに、
映画たりうる部分を見出し、
それをどうフィルムに定着したか…。
勝負はそこにかかってくる」
----それは分かるけど、
どんな内容かぐらいは知りたいニャ。
「これはね。
乳児の頃に誘拐された娘が
その後、犯人に育てられ、
4年後、ようやく実の母の元に戻る…というもの」
----え〜っ。それは厳しいニャあ。
その子は、犯人を本当の母だと信じてきたわけでしょ。
「そういうことだね。
急に、『こちらの人が本当のお母さん』と言われても、
簡単に『はいそうですか』ですかとなるわけがない。
映画は、そこから始まる悲劇。
誘拐さえなければ、普通の家庭が営めたはず…という側面と、
過去の誘拐逃亡の間、ふたりはどんな暮らしをしたかが描かれる。
原作が、どのような章分けをしているのかは分からないけど、
映画は、ここは巧く料理されていた」
----そこが「映画になっていた」と言うこと?
「それもあるけど、
ビジュアルとしての細かい気配りだね。
たとえば、主人公の恵理菜(井上真央)に
過去の事件を聞きに来るルポライターの安藤千草(小池栄子)。
最初、彼女が登場したとき、
だれが演じているのか分からなかった。
猫背で足を少し引きずりながら歩く。
それと、ここからがが急展開で映画としてもオモシロくなっていく
カルト集団エンジェルホームのシーン。
主宰者のエンゼルに余貴美子。
ただでさえ存在感がある彼女。
出そうと思えばいくらでもカリスマ性を出せるのに、
ここでは普通のおばさんが教祖になった、そういう感じ。
その俗物ぶりを出せるのもやはり彼女ならでは。
『映画はキャスティングで決まる』という言葉もあるけど、
これはその好例だね。
あと、嬉しかったのはその音楽。
映像に寄り添うように繊細。
ドラマチックなシーンでも決して出しゃばらない」
----う〜ん。それ分かるニャあ。
最近の映画は、やたらとオーケストラでドラマチックに盛り上げるものね。
「でしょ。
誰かと思えば、これが贔屓の安川午朗。
これらのことでも分かるように、
最近の日本映画が陥っているワンパターンから抜け出そうとしているのがこの映画。
その最たるシーンは、ラストショットに現れる。
ここは、ヒロインの口から
長い心の旅の末、彼女が到達したある境地が
心の底から湧き出てくる文字どおりのクライマックス。
カメラはそんな恵理菜の感情の高ぶりを
そのまま捉えようと、手持ちで軽く揺れる。
(手持ちは記憶違いかもだけど、そう感じさせる)
そして、観る者を共にその高揚に導きながら潔く終わるんだ。
ロングに引いた余韻のシーンなど付加しない。
ぼくは観ながら、『ここで終わってほしい。いや終わるべきだ』と、
そう思って観ていただけに、ほんとうに嬉しかった。
そう、この感動にクールダウンは必要ない」
(byえいwithフォーン)
フォーンの一言「ラプンツェルも誘拐されたのニャ」

※「映画を観た」という満足感に浸れる度



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原作(未読です)も素晴らしいのでしょうけど、本当に映画として良かったです。
キャスティングも非の打ちどころがないですね。
女優さんはいくら褒めても褒めたりませんが、劇団ひとりさんの薄っぺらさや、田中哲司さんの影の薄さも最高でした。
ぼくも原作は未読です。
原作を読まれた方の中には、
ラストの重要なエピソードが抜けていることへの指摘が…。
でも、映画として観た場合、
ぼくは、こういう
ブチっという終わり方もありだと。
おっしゃるとおり、
男性陣の影の薄さが、またよかったです。
原作のラストのエピソードは、文章で読むにはいい余韻となりますが、映像で表現するとクドくなってしまいますし、そもそも40歳台半ばの希和子の姿なんて、はっきり言って見たくありませんし。
“写真を取りに来た”という田中泯さん(このキャスティングも秀逸)の一言で十分だと思います。
ところで、えいさんならピンと来るでしょうが、ラスト近くの船着場で恵理菜が何かを感じて歩き出した時、一瞬ヒッチコック「めまい」でお馴染みのトラックバック・ズームが使われていたように思うのですが。
Keiさんからのコメント、
とても嬉しくなりました。
思わずじ〜んと。
いや、ほんとです。
ぼくは、あの瞬間、
実は『JAWS・ジョーズ』を思い出しました。
ロイ・シャイダーが鮫を見た瞬間のあれです。
「海のそば」ということからの連想かなあ。
書き忘れていました。
ありがとうございました。
原作とは違うのですけど、映画は写真館を上手く使いましたね。
時が止まったかのような写真館と田中泯の存在感は、絶対に文章では表現できない映画的な描写でした。
あそこからの流れで井上真央の最後の台詞を聞いた時には思わず涙が湧き出しました。
そう、“鮮やか”という言葉がピッタリ。
あのセリフ、そして涙と笑顔が同居した
井上真央の表情に、
感情の高ぶりを抑えることができませんでした。
いろいろと個人的に共感するところがあって
読むのが辛くもあり癒されもする思い入れの強い物語だったのですが
私も映画のラストの方が好きですね。
あの写真館の存在は原作にはないものですが
あれとあの味のある写真屋の主の絡んだラスト
それと井上真央さんに言わせたセリフも
この物語を見ていてずっと「言ってほしかった」セリフでしたから、
とても最後にすっきりしたというか,救われましたね。
映画力を感じた作品でした。
なかでもあのラスト。
脚本に込められたセリフ、
井上真央の演技、
そしてそれを捉えたカメラ。
すべてが映画ならではの高揚を感じさせてくれました。
ななさんのレビューを拝見し、
この映画は「女性」というものに真摯に向かい合った作品、
また「性」というものが持つ原罪にまで言及していることに改めて思いいたりました。
昨今の日本映画にはなかなか現れないタイプの作品だっただけに、
そのインパクトはかなり大きかったです。
ああいう微妙な心理を絶妙に表現できる女優さんは超一流だと思います。
『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』あたりから、
さらに一皮むけた気がします。
今後も楽しみな女優の一人です。