(原題:Casare deve morire)
「来年のことを言うと鬼がなんとやらだけど、
これは少なくともベスト10には入れたい映画だね」
----またまた気が早い。
この映画って、
今年2012年のベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞の話題作。
厳しい監視の目を盗んで西側社会への逃亡を画策するヒロインの話だよね。
「そう。
物語としては、
かつてよく聞いたようなお話。
でも、これが実に巧い。
さすが監督賞を受賞しただけのことはある。
オープニングは電車に揺られるヒロイン、バルバラ(ニーナ・ホス)のバストショット。
見るからに意志が強く誇り高そうな彼女は、
勤務初日にもかかわらず赴任先の病院でも
同僚に対して冷淡なまでの態度をとる。
果たしてなぜ?
映画は、観る者の痛覚をも刺激する少年への施術を挟み、
バルバラの上司アンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)が車で彼女を家に送り届けるシーンへと繋がっていく。
ふたりは初めて会ったはずなのに、
彼はバルバラの家への道をなぜかよく知っている」
----えっ、なぜ?
「そう思うよね。
ぼくも一瞬、これってミステリーかと思ったもの。
実は彼女、バルバラは
かつては東ベルリンの大きな慈善病院に勤務。
しかし、西ドイツへの移住申請を行なったことから、
危険分子とみなされ、
この地に“左遷”されてきたわけだ。
そういう苛酷な体験を経てきた直後だけに、
彼女の目には周囲のだれもが怪しく映る。
みんなが自分を監視しているのではないかと…。
このあたりは『裏切りのサーカス』におけるブダペストのカフェのシーンを思い出してもらうといいかも」
----ニャるほど。
サスペンスの要素もあるワケだニャ
「実際、彼女は
西ドイツ在住の恋人ヨルク(マルク・ヴァシュケ)の手はずにより
東ドイツからの逃亡を企てていた。
マルクは、仕事の関係からか
東への出入りも認められていて、
ふたりは森や外国人専用ホテルで密会を重ねている。
このときのニーナ・ホスの演技がまた巧い。
いつもは毅然とした彼女がヨルクの前では
女であること、そして自分の弱さを素直にさらけ出す」
----サスペンスにロマンスも加わるワケだ。
ん?となると、アンドレもこの中に入って気そうだニャ。
分かった。
やがて、バルバラはアンドレのやさしさに気づき、
彼に好意を抱くようになる。
そこで西へ逃げることへのためらいが…。
「う~ん。
少しは当たっているけど、
それだと、やはりまだ“どこかで観た”お話になってしまう。
さっきも言ったように、
バルバラは周囲に対して猜疑的。
アンドレのこともなかなか信用しようとはしない。
じゃあ、何がこの物語を動かすか?
それはバルバラの医師としての使命。
この病院に送られてくるのは、
矯正収容施設から逃げ出してきた少女だったり、
自殺を試みた少年だったり…。
医師としての誇りあればこそ、
これまでの辛い人生を生き抜いてこれた彼女が、
彼らの生死に関わるこれらの事態に直面したとき、
果たしてどうするのか?」
----それは助けるに決まっているじゃニャい。
「でも、それが彼女の逃亡日に起こったとしたら? 」
----そ、それは…。
「監督クリスティアン・ペッツォルトは、
脚本を書く段階で
おそらく、その目に映像も浮かんでいたんだろうね。
詳述は避けるけど、
逃亡の日目前に起こった
少年の緊急手術をめぐるバルバラとアンドレの会話は、この映画のハイライト。
秘密警察≪シュタージ≫とのサスペンスフルな攻防同様、極限の緊張を伴う。
これは、よくあるシンプルなプロットを映画として膨らませたあるひとつの理想形。
ぼくにはそう思えたね」
フォーンの一言「道端には花が咲き乱れているのに、バルバラの心は重いのニャ」
※不安と恐怖と猜疑の奥から立ち上がるこの官能。脱帽だ度
人気blogランキングもよろしく
☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)
こちらのお花屋さんもよろしく。
こちらは噂のtwitter。
「ラムの大通り」のツイッター
人気blogランキングもよろしく
☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)
※画像はオフィシャル・ダウンロード・サイトより。
「来年のことを言うと鬼がなんとやらだけど、
これは少なくともベスト10には入れたい映画だね」
----またまた気が早い。
この映画って、
今年2012年のベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)受賞の話題作。
厳しい監視の目を盗んで西側社会への逃亡を画策するヒロインの話だよね。
「そう。
物語としては、
かつてよく聞いたようなお話。
でも、これが実に巧い。
さすが監督賞を受賞しただけのことはある。
オープニングは電車に揺られるヒロイン、バルバラ(ニーナ・ホス)のバストショット。
見るからに意志が強く誇り高そうな彼女は、
勤務初日にもかかわらず赴任先の病院でも
同僚に対して冷淡なまでの態度をとる。
果たしてなぜ?
映画は、観る者の痛覚をも刺激する少年への施術を挟み、
バルバラの上司アンドレ(ロナルト・ツェアフェルト)が車で彼女を家に送り届けるシーンへと繋がっていく。
ふたりは初めて会ったはずなのに、
彼はバルバラの家への道をなぜかよく知っている」
----えっ、なぜ?
「そう思うよね。
ぼくも一瞬、これってミステリーかと思ったもの。
実は彼女、バルバラは
かつては東ベルリンの大きな慈善病院に勤務。
しかし、西ドイツへの移住申請を行なったことから、
危険分子とみなされ、
この地に“左遷”されてきたわけだ。
そういう苛酷な体験を経てきた直後だけに、
彼女の目には周囲のだれもが怪しく映る。
みんなが自分を監視しているのではないかと…。
このあたりは『裏切りのサーカス』におけるブダペストのカフェのシーンを思い出してもらうといいかも」
----ニャるほど。
サスペンスの要素もあるワケだニャ
「実際、彼女は
西ドイツ在住の恋人ヨルク(マルク・ヴァシュケ)の手はずにより
東ドイツからの逃亡を企てていた。
マルクは、仕事の関係からか
東への出入りも認められていて、
ふたりは森や外国人専用ホテルで密会を重ねている。
このときのニーナ・ホスの演技がまた巧い。
いつもは毅然とした彼女がヨルクの前では
女であること、そして自分の弱さを素直にさらけ出す」
----サスペンスにロマンスも加わるワケだ。
ん?となると、アンドレもこの中に入って気そうだニャ。
分かった。
やがて、バルバラはアンドレのやさしさに気づき、
彼に好意を抱くようになる。
そこで西へ逃げることへのためらいが…。
「う~ん。
少しは当たっているけど、
それだと、やはりまだ“どこかで観た”お話になってしまう。
さっきも言ったように、
バルバラは周囲に対して猜疑的。
アンドレのこともなかなか信用しようとはしない。
じゃあ、何がこの物語を動かすか?
それはバルバラの医師としての使命。
この病院に送られてくるのは、
矯正収容施設から逃げ出してきた少女だったり、
自殺を試みた少年だったり…。
医師としての誇りあればこそ、
これまでの辛い人生を生き抜いてこれた彼女が、
彼らの生死に関わるこれらの事態に直面したとき、
果たしてどうするのか?」
----それは助けるに決まっているじゃニャい。
「でも、それが彼女の逃亡日に起こったとしたら? 」
----そ、それは…。
「監督クリスティアン・ペッツォルトは、
脚本を書く段階で
おそらく、その目に映像も浮かんでいたんだろうね。
詳述は避けるけど、
逃亡の日目前に起こった
少年の緊急手術をめぐるバルバラとアンドレの会話は、この映画のハイライト。
秘密警察≪シュタージ≫とのサスペンスフルな攻防同様、極限の緊張を伴う。
これは、よくあるシンプルなプロットを映画として膨らませたあるひとつの理想形。
ぼくにはそう思えたね」
フォーンの一言「道端には花が咲き乱れているのに、バルバラの心は重いのニャ」
※不安と恐怖と猜疑の奥から立ち上がるこの官能。脱帽だ度
人気blogランキングもよろしく
☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)
こちらのお花屋さんもよろしく。
こちらは噂のtwitter。
「ラムの大通り」のツイッター
人気blogランキングもよろしく
☆「CINEMA INDEX」☆「ラムの大通り」タイトル索引
(他のタイトルはこちらをクリック→)
※画像はオフィシャル・ダウンロード・サイトより。
えいさまがベスト10に入れたいこの映画は、私の好みでもありました。
後半は、恋人とアンドレの選択に悩むという私の単純な憶測の恋愛映画をはるかに超える内容となりいたく満足しました。
強く吹く風の中をまっすぐに自転車を走らせる彼女の姿は、厳しい監視体制の中を自分の矜持をもちながら彼女らしく毅然と生きる姿が重なりました。
それでは、今年もよい映画を!
「自転車」というのは
映画にはとてもよくあいますよね。
映画=動く画
しかもそれを人間の肉体で動かすのですから、
そこに感情が込められる。
これまで、
数々の自転車の名シーンが
映画からは生まれましたが、
本作もその列に加わった、
そんな気がします。
なにげない描写の中に、
その時代、そしてその中に生きる人間の
立ち位置をも言い表す。
このような、空気感を大切にした映画は大好きです。
仕事場では常に凛としているヒロインが
愛する彼の前ではまったく違ってくるところも
彼女の社会からの抑圧、疎外を浮きぼりにし、
いわゆる<女の性>を超えた描写となっている。
う~ん、やはり巧いなあ。
靴音に車が止まる音にドアをノックする音。
怯えるバルバラを観ているうちにこちらまで怖く感じてしまいました。
左遷される前、拘束された経験と西への脱出計画。
バルバラが周囲に猜疑的になるのは無理もないですよね。
それだけにラストの彼女のやり終えたというような表情が印象的でした。
記事わからなかった(笑)
>少なくともベスト10には入れたい映画
本当にそうです。
余計なものを一切排除した作風。
私こういう作品が好きなんだなあって思いました。
毎日、毎日をびくびくしながら
生きていかなければならないとしたら、
まさに、それは地獄。
あのラストは予想外でしたが、
映画としてはそういう結末もありなのかも…。
最近は、試写の最後の方の日程で観ることが多くなっているのですが、
これは珍しく早めに観させていただきました。
自分は、物語もそうだけど、
空気そのものを再現した映画が好きなんだなあと、
再確認した作品でした。