ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『わが母の記』

2012-03-16 19:59:59 | 新作映画


----この映画、
ずいぶん前から試写を回していなかった?
「うん。
配給が松竹。
これは『おくりびと』と同じく、勝負に出た作品。
じっくりと、そのよさを伝えていきたいということだろうね」

----つまり、だれの胸にも響く
感動の作品ってことだね。
「そうなんだけどね。
どうも、ぼくにはいまひとつノレなかったな」

----どういうところが?
確か、今の日本が抱えている問題とも関わってくる
“老いと死”を見つめた映画ニャんでしょ?
「そう。
原作は井上靖の自伝的小説。
主人公の小説家・伊上洪作(役所広司)は
祖父の妾の下で育てられたことから
実母の八重(樹木希林)に捨てられたという
思いに捕われていた。
だが、その母に認知症状が表れる。
そうなると、喧嘩することさえできない。
本人は、本当にぼけているのか
それとも自分が都合悪い時だけ、
そう見せているのか…?
まともに向かい合うことができない。
映画は、そんな洪作の複雑な思いと、
日に日に奇怪な行動を取り始める八重を軸に、
母への反発から、
自分は家族を常に目の届くところに置きたいと願う洪作の下、
窮屈な思いをしている娘たち三姉妹のエピソードを
これまた巧みに描き分けていく。
また、描かれている時代も
昭和30年代から40年代ということで、
監督の原田眞人が実際に知っている時代。
それだけに、服装・小道具はもちろんのこと、
女性たちの言葉遣いに至るまで見事に再現されている」

----じゃあ、なにも問題ないじゃニャい。
「いや、贅沢な言い方かもしれないけど、
それが巧すぎるんだね。
さっきの時代背景から行くと、
まるで昭和30年代の松竹映画を観ているような感じ。
廊下の写し方なんて
小津安二郎監督作品を彷彿とさせるしね。
でも、逆にそのテクニックばかりが目立ってしまうんだ。
この原田眞人という監督、
『金融腐蝕列島〔呪縛〕』にしろ『突入せよ! あさま山荘事件』にしろ、
はたまた『クライマーズ・ハイ』にしろ、
作品のテーマに応じたタッチで映画を見せていく。
それは『狗神 INUGAMI』 『伝染歌』のようなホラーでもそう。
そう言う意味では、先ほど亡くなった森田芳光監督に通じるところあるんだけど、
なんだか、スマートすぎないか…って気になる。
それでいて、クライマックスの海のシーンだけ、
カメラが手持ちで揺れてそれまでの写し方と一変。
本来は、ここは『八日目の蝉』のラストのように
盛り上がるはずなんだろうけど、
どうもそうはならないんだ。
お約束のような感じで…。
『どんな道を通ってもゴールは一緒』だったかな。
いい言葉だけに惜しい。
とはいえ、樹木希林の演技はもう国宝級。
それだけでも、十二分に観る価値はあるけどね」



                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「映画って複雑だニャ」小首ニャ

※ベルイマン『処女の泉』のエピソードには笑いました度

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