ラムの大通り

愛猫フォーンを相手に映画のお話。
主に劇場公開前の新作映画についておしゃべりしています。

『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(メリル・ストリープ、アカデミー賞主演女優賞受賞)

2012-03-03 21:11:09 | 新作映画
(英題:The Iron Lady)



----ニャんだか難しい顔をしているニャあ。
「うん。
どこから話そうか。
この映画、題材からしてちょっと不思議だったんだ。
マーガレット・サッチャーという
いまも存命中の女性政治家を描くことの意味が
まずよく分からなくて…。
それ以前に、このサッチャーという人は、
ぼくの知っているいくつかのイギリス映画での
これまでの扱われ方からしても
あまりいいイメージはなかったし…
“鉄の女”と呼ばれているように、
彼女の取った新自由主義政策は徹底していて、
結果、福祉は削減され、失業者を増大させた」

----えっ。でも人気があったと聞くけど…?
「それは、フォークランド戦争での勝利が大きい。
『聯合艦隊司令長官・山本五十六』でも描かれていたように
不況のさなかにおける、
こういう強気の外交政策は受け入れられやすいからね。
ところが、欧州統合(後のEU)には反対の態度を取り、
イギリスの孤立を深め、
ついには、収入の多少に関わらず
同じ税額を収める人頭税の導入により支持率は降下していく」

----ほんと“鉄の女”だ。
でも、映画としてはオモシロくなりそう…。
「う~ん。
まあ、これはぼくの先入観がダメだったいい例として聞いてほしいんだけど、
まさか、さっきも言ったように
存命中の、しかも女性政治家を描くんだから、
その功績を美化するんだろうと思ったワケ。
ところがところが…。
なんと、この映画は、
それはそれとして、
子どもの頃から『食器を洗って一生を終えるつもりはない』という、
サッチャーがいかに家庭を顧みず、
ただただ、政治に邁進していったかが描かれる。
幼いふたりの子どもたちは、
議会に向かうサッチャーを泣きながら追いかけるし、
その子たちが年頃になっても、
彼らの声にまったく耳を傾けない非情な母親の姿も描かれる。
ここにいたって、家庭ではやさしいという描き方かな?
と思った第二の予想も覆される」

----ニャるほど。政界だけでなく家庭でも鉄の女だったわけだ。
ご主人はよく我慢できたよね。
「う~ん。それもどうだろう。
この映画は、実は晩年の、
しかも認知症になったサッチャーの回想として描かれる。」

----サッチャーって認知症ニャの?
「そう。
ということは、そこに描かれる回想も
映画製作サイドの作り上げたものということ。
サッチャー自体がほんとうに
そんなことを考えたかどうかまでは分からない。
とりわけ、ご主人デニス(ジム・ブロードベント)は既に死んでいて、
彼女の妄想の中の人として描かれる。
映画は(ちょっとネタバレ)、
その家庭よりも政治という仕事を選んだサッチャーが
いま、それについてどう思っているかを描くわけだけど、
これが切ない。
人生は一回きり。
その彼女はこの政治人生を選んで、いま後悔しているとも取れなくない描き方。
ただ、それが徹底していない。
サッチャーを演じるメリル・ストリープは、
アカデミー主演女優賞受賞を見ても分かるように、
さすがの演技なんだけどね…」


                    (byえいwithフォーン)

フォーンの一言「そうか、どんな有名人でも老いからは逃れらないのだニャ」ぱっちり

※ロナルド・レーガンもアルツハイマーになった度

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猫ニュー

画像はイギリス・オフィシャルより。