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「眠りの森」東野圭吾

2014年08月17日 11時54分21秒 | 読書
「眠りの森」東野圭吾




東野圭吾といえば,帝都大学理学部の湯川学准教授が主役を務めるガリレオシリーズが有名ですね.
「容疑者Xの献身」,「予知夢」,「真夏の方程式」などの名作が並びます.
しかし,シリーズものとしては,刑事・加賀恭一郎シリーズの方が歴史は古いようです.
「雪月花殺人ゲーム」が1986年に出ている.
ガリレオシリーズは一番早いものでも,「探偵ガリレオ」が1998年ですからね.

私としては,加賀恭一郎シリーズでは,この「眠りの森」の他,「雪月花殺人ゲーム」,「新参者」,「麒麟の翼」,「悪意」が既読です.

このシリーズの特徴ですが...
主役の加賀恭一郎が,推理の切れ味は必ずしも凄いわけではない.
特に事件の最初の方では,犯人や犯行の複雑さに翻弄され,読者と一緒になって,悩みまくります.
一方で,犯罪に関わった人々に感情を移入し,刑事にあるまじきセリフを吐いたりすることもある.被疑者に対する慰めの言葉を言ったりね.刑事はそんなこと言っちゃダメだろ!みたいな.
しかし,そこはそれ,あとで困ったことにはならないところが,ヒーローたる所以でね,うまくストーリーが繋がるようになっている.

この「眠りの森」はチャイコフスキーの「眠りの森の美女」からも推測できるように,ある有名なバレー団に起きた殺人事件のお話.
人生のすべてをバレーに掛けた女達と,それに関わってしまったばかりに不幸への道を辿らざるを得なくなった男達の悲劇の物語になっている.

加賀恭一郎は捜査を進めるうち,被疑者でも被害者でもないバレリーナ・未緒に恋をしてしまう.
まあ,これも運命なんだろうが,,,
おい,刑事が事件関係者に恋しちゃまずいだろ,と思った読者もいると思うが,いいんです,加賀恭一郎だけは許されます.
単なる恋じゃないんです.
事件のカギを握る恋なのです.
おっと,ネタバレはここまで.

いつもながら,最後は鮮やかな推理で解決へ向かいますが,すべて丸く収まる大団円ではないです.
苦悩に満ちていながら,一筋の光の射す未来に向かいます.