書く仕事

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「鷺と雪」

2014年08月13日 01時27分21秒 | 読書
「鷺と雪」高村薫




読書好きの友人に紹介された,高村薫の「ベッキーさんシリーズ」最終章.
何気なく手に取った1冊が,最終章だったというのは偶然です.

「円紫さん」もとても良かったが,「円紫さん」の方は,主人公に知恵を授けてくれる指導者役が落語家の円紫で,「ベッキーさん」では,お抱えの運転手さんであるベッキーさん.
気楽に話ができるという点は共通点ありと,言っていいであろう.
主人公は若い女性,お嬢様という点では明確に共通している.

しかし,決定的に違う点が一つある.

円紫さんでは,事件の原因はあくまで人の心の成したものであった.
従って,慎重に人の心を辿ってみれば,自ずと答えの糸口は掴めると言っていよいだろう.

しかし,ベッキーさんでは,「時代」が意外に大きくかかわっている.

人の心ではどうしようもない,何かが世の中を狂わせようとする.

その想いが最後に,表題作「鷺と雪」にて溢れる.
桐原勝久とベッキーさんの最後の会話には,あまりに重い時代の流れに抗すことのできない二人の憤りが,痛いほど伝わってくる.

そして,最後のあっと驚く展開.

ふ~む.

素晴らしい.