風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

山崎豊子 『大地の子』

2015-11-19 00:00:42 | 



「日本語で〝妹(メイ)〟は何というのですか」

(山崎豊子 『大地の子 第一巻』)

内蒙古の労働改造所で、一心が華僑の黄に言う言葉。この作品の中で最も好きな言葉の一つです。
一心のここに至るまでの人生と、彼にこれを言わせた黄の人生と、この言葉がどれほどの命の危険を伴ったものであるかという彼らの現在の状況と、それでもなおこれを言わずにいられなかった一心の心と体の奥の何ものか。すごく重く、美しい言葉だと思う。
その彼が最終巻で実父に告げる「私はこの大地の子です」という言葉。その重さは私などには到底想像することはできません。

「今日の日本の平和というのは、そういう孤児たちを戦後四十年近くも捨てておいた犠牲の上で成り立っていることを反省したいです。日本人はみんな健忘症なんでしょうか。それとも人道主義欠如症なんでしょうか」
(『オール讀物 1991年5月号』対談)

この山崎さんの言葉は、『不毛地帯』で描かれたシベリア抑留の歴史にも、『二つの祖国』で描かれた在米日系人の歴史にも、そして世界中で今なお続く様々なことにも、通じるものだと思います。
などとこうして他人事のように書いている自分を、恥ずかしく感じます・・・。
問題は決して単純ではないかもしれませんが、少なくとも不感症にだけはならないようにしなければ。

先日の山崎豊子展で、熱心に展示を見ている中国語を話している女の子達を見かけました。外見は純粋な中国人のようでしたが、もしかしたらそうではなかったかもしれません。

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