風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

スミルノワ、ヴィシニョーワ、ババヤン

2022-03-18 16:59:36 | 日々いろいろ

ヤフーに「名門ボリショイ・バレエ団のスター、戦争を批判しオランダに移籍へ」という記事があったので誰かな?と思ったら、スミルノワか…。
Olga Smirnova: Ballerina leaves Russia for Netherlands after denouncing war(BBC)

スミルノワさんは3月に入り、「現代の見識ある世界においては、文明社会は平和的な交渉によってのみ政治問題を解決することを期待している」などとする文章を公表。
「ロシアを恥じることになるとは思わなかった。才能あるロシアの人々、私たちの文化、運動面での業績をいつも誇りに思ってきた」、「しかし今や、以前と以後を区別する線が引かれたと感じている。人々が死んでいき、頭上の屋根を失ったり家を後にせざるを得なかったりしているのは痛ましい」とした。
そして、「数週間前、こんなことが起こると誰が予想しただろうか。私たちは軍事紛争のただ中にはいないかもしれないが、この世界的大惨事に無関心ではいられない」と書いていた。
オランダ国立バレエ団は声明を出し、スミルノワさんの移籍を歓迎。彼女はその言動により、「生まれた国で働くことが不可能になっている」とした。

同じ記事では、シクリャローフやヴィシニョーワの言葉も紹介されていて、ヴィシニョーワについては、
マリインスキー・バレエ団の元プリンシパルダンサーで、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場のソリストをつとめたディアナ・ヴィシニョーワさん(45)は、「私たちは戦争といかなる暴力行為にも反対を表明する。悲しみ、無念、支援の言葉、同情で、私たちの心はいっぱいだ」とした。
と。
ヴィシニョーワについて過去形で書かれてあるので(BBCの原文でも)「ヴィシ様、いつの間にマリインスキーを退団してたの」とマリンスキーの公式ページを確認したら、普通にprincipalsに名前があった。シクリャローフも。
自らバレエ団を去る人達はともかく、残るつもりはあるトップダンサー達(ヴィシニョーワ達に残るつもりがあるかは別として)を政府批判したという理由だけでプリンシパルから外したり退団させるような処置を万が一ロシア政府がするなら、それは完全にロシア側にとって一方的な損失となり西側にとって一方的な得となるだけとしか思えない。頭脳の海外流出も痛いだろうけど、文化の海外流出も同じかそれ以上に取り返しがつかないことになると思うがなあ。
プーチン大統領は海外の要人が訪ロしたときはいつもバレエやオペラやクラシック音楽の演奏会に連れて行っていたと聞く。そういう時に誇らしげに紹介できる音楽家やダンサー達がロシアからいなくなってしまったら一番困るのは自分ではなかろうか。

ボリショイで踊るスミルノワをもう見られないことはすごく残念だけど、なんとなくスミルノワがこういう選択をしたことはすんなり理解できる気がするのでした。
個人的な印象だけど、彼女の踊りにはロシアの空気が薄いように感じられたし(悪い意味ではなく)、これまでのインタビューの受け答えの感じでも彼女は西側のバレエ団の方が合っているような気がする。
彼女の未来を応援しています。
しかしこれでチュージンと踊るグリゴロ版白鳥完全版を二度と見られなくなったな…。

話は変わって、先ほど春祭からこんなお知らせが。


春祭事務局、今日の開幕記者会見で全公演のプログラムをライブストリーミング配信すると言ったばかりなのに、何があったの?と思ったら、公式ページに詳しく書かれてありました。
「出演者本人より、昨今の世界情勢により精神的に落ち着かない状態が続いており、今回は演奏に集中するためにも、カメラ等の設置を避けられないかと相談を受け、協議の結果、誠に残念ながら配信を中止することといたしました。」
そうか、そうだよね…。愛弟子のトリフォノフともども大変な状況なのだろうなと想像する。ババヤンはロシア人ではないしアメリカで教授職にある人ではあるけれど、ゲルギエフとよく共演していた人でもあるし…。
なお曲目変更は、以下のとおり。作曲家自体が変更になったのが赤字部分で、作品だけ変更になったのが青字部分。

【旧】
ペルト:アリーナのために
リスト:バラード 第2番 ロ短調 S.171
J.S.バッハ:《平均律クラヴィーア曲集》 より(抜粋)
リャボフ:幻想曲 ハ短調 op.21 《マリア・ユーディナの思い出に》
ラフマニノフ:
 練習曲集《音の絵》 op.39 より 第5曲 変ホ短調
 楽興の時 第2番 変ホ短調 op.16-2
 楽興の時 第6番 ハ長調 op.16-6

【新】
J.S.バッハ(ブゾーニ編):無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004 より シャコンヌ
シューベルト(リスト編):
 《美しき水車小屋の娘》S.565 より 第2曲 水車小屋と小川
 《12の歌》S.558より
  第8曲 糸を紡ぐグレートヒェン
  第2曲 水に寄せて歌う
ラフマニノフ:
 練習曲集《音の絵》op.39 より
  第5番 変ホ短調
  第1番 ハ短調
 《楽興の時》 op.16 より
  第2番 変ホ短調
  第6番 ハ長調
リスト:バラード 第2番 ロ短調 S.171
シューマン:クライスレリアーナ op.16

私はアルヴォ・ペルトやウラディーミル・リャボフという名前を今回のプログラムで初めて知ったようなクラシック音楽初心者なので(現代音楽の作曲家なんですね)、変更後のプログラムの方が親しみやすいことは確かですが。
いずれにしても今は無事来日して、無事演奏会が開催されればそれだけでいい

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