風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

シュターツカペレ・ベルリン @サントリーホール(12月8日)

2022-12-10 14:02:08 | クラシック音楽




6年ぶりに来日してくれたシュターツカペレ・ベルリンの最終日に行ってきました。
前回の2016年の来日のときは、友人とSKBの音色やバレンボイムのピアノについて色々話をしたなあ。ボストン響にしても、当時来日していたオーケストラがいま再び来日していて、でも彼女はいなくて…。季節は巡っているのだな…と改めて感じさせられます。

【ブラームス:交響曲第3番 ヘ長調 作品90】
今回のチケットを買ったのは、もう一度バレンボイム&SKBの音を聴きたかったからでした。ですが、バレンさんは身体を壊されて活動を休止。代わりにアジアツアーの指揮をすることになったのが、ティーレマンでした。
ティーレマンを聴くのは初めてですが、なんとなく彼の指揮は私の好みとは合わないのでは…という気がしていたので、チケットを手放そうかどうか直前まで迷ったのです。でもSKBの音のブラームスは聴きたいし、食わず嫌いもよくないし、今年の〆にやっぱりオーケストラの音を聴きたいし。なので、行くことにしました。
さて、今回の3番。
ティーレマンの指揮姿を私は初めて見たのですが。
演奏が始まった瞬間に、ええっと。。。。。。。
ものすごく吃驚した。。。。。。。
あんな指揮が世の中に存在するとは。。。。。。。
下から上に両手を掬い上げる基本形も、下方で手をピロピロするのも(音を抑えて、という意味と思われる)、何よりゆったり楽章以外でのカクカクした動きが機械仕掛けの人形みたいで。あまりに個性的すぎて笑いそうになってしまい、最初の方はまったく音楽に集中できず、仕方がないからティーレマンから目を逸らそうと試みるもP席ではそれもできず。ああいう指揮でもオケは演奏できるんだなあ。指揮って不思議だなあ。
しかしそれにも次第に慣れ、音楽に集中できるようになりました。
直前にSKDの録音で予習したときも驚いたけど、まるでオペラのようなブラームス。音が語る語る。ブラームスの心を語っているというより、ドラマを語っている感覚。この曲にはないはずの劇が目の前で繰り広げられているよう。
本来こういうブラームスは全く私の好みに反するのだけれど(私の理想のブラームスはハイティンクなので)、これだけのものを聴かせてくれたら何も文句は言えないよねえ。。。お見事。。。

そして、SKBの”the独逸”の音!東独時代の音を残すオケ、と表現される方もいますね。一瞬で6年前に聴いたときの感覚を思い出して、やはりこのオケの音ってすごく独特だな、と。分厚く、底光りするいぶし銀のような、くすんだ暗い音色。でも温かみも感じさせて。
まるでブラームスの時代のオケがタイムスリップしてきてサントリーホールの舞台にいるような錯覚を覚えました。あるいは、彼らのいる空間だけがブラームスの生きている時代であるような。
ふくよかさや華麗さはないし、はっとするような弱音もないけれど、突然うわ…っと呆然とするような独特の美しい音を出すのはバレンさんのときと同じ。今回もその瞬間が何度かありました。重い音がうねるように、でも最高に美しい音を出すんです。他のオケでは経験できない感覚。
繊細な演奏ではないし粗さも感じたけれど、少なくとも絶対的なライブの楽しさがありました。
あと、ティーレマンの指揮は作為的な不自然さで有名のようだけれど、今日聴いた限りでは殆どそれは感じませんでした。速度は速めだし、数回だけあれ?事故?というような音楽の流れが引っかかるときがあったのが気になったと言えばなったけど(ティーレマンの動きからそれは彼の指示だとわかった)、全体には全く自然に音楽は流れていたように感じました。
特に3楽章と4楽章の主題はSKBの音の個性が最大限に合っていて、またこれはティーレマンゆえだと思いますが4楽章のうねるような劇的なドライブ感がSKBの重厚な音色で演奏されると舞台の空気がうねって、最高に興奮しました。なのにちゃんと体温が感じられて、美しい。この音のブラームスが聴けて本当に嬉しい。このときは演奏後の客席のフラ拍手もなく、響きの余韻まで完璧でした。

(20分間の休憩)

【ブラームス:交響曲第4番 ホ短調 作品98】
3番もよかったけど、4番、すごかった。
三楽章の華やかさ。
そして四楽章。最初の主題が演奏されたときは「おいおい、いくらなんでも速すぎでしょう」と面食らったけど自然に修正され、終盤のドラマチックな悲劇感が半端なかった。変奏なのにオペラみたい。これだけ聴かせてくれたら、何も言えない。
まるでワーグナーのようなブラームスだけど(ワーグナー詳しくないけど)、ブラームス自身もワーグナーに感動して「今夜の私はワグネリアンです!」とクララ?に言っていたこともあったくらいだし、こういう演奏もアリのように思う。今夜の演奏を聴いてブラームスがどう感じるのか、怒るのか喜ぶのかは全く想像できないけれど。
また、このドラマチックに音を解放させた悲劇感に、ゲルギエフがマリインスキーから出していた音を思い出しました。そしてどちらも歌劇場のオケだなあ、と。
ティーレマンの全幕オペラを聴いてみたい。
と感じるブラームスって…笑。

とにかくライブの楽しさを存分に感じさせてくれて、一年の最後を気持ちよく〆ることができました。
これで私の今年の音楽鑑賞は終わりです。

そしてバレンさんは大丈夫なのかな・・・。ティーレマンもとても素晴らしかったけど、バレンさんの音楽もまた聴きたい。
あの演奏活動休止のメッセージの文言がちょっと気になるのよね…。
"Music has always been and continues to be an essential and lasting part of my life. I have lived all my life in and through music, and I will continue to do so as long as my health allows me to. Looking back and ahead. I am not only content but deeply fulfilled."
バレンさん、お戻りになるのをお待ちしてますよ~~~!!

そういえばティーレマン、パワハラ系指揮者の評判を聞いていたのに(バレンさんも同じ評判があるけど)、SKBの奏者達に対して物凄く腰が低くて常に上機嫌で驚きました。噂によるとSKBのシェフになりたいというご本人の希望があるようなので、そのせいだろうか。P席にも二回オケに挨拶させてくれた(こういうサービス精神、バレンさんと同じだ)。ティーレマンは西ベルリンの出身なんですね。


今日の前半のホルントップは、このゼン・ユンさんでした。安定感のある明るめの音色で、安心して聴くことができました(ホルンって大事…)。舞台上でもニコニコ笑顔で楽しそうだった
でも後半のホルンの方もSKBらしい音色でとてもよかったです。個人的には後半の方の音色のが好みだったかも。












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