風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

『アイーダ』 @新国立劇場オペラパレス(3月17日)

2013-03-21 00:28:04 | クラシック音楽




テアトルの3日後に行ってしまいました、オペラ『アイーダ』。
新国立劇場の開場15周年記念公演です。
ちなみに、今月5つめの観劇です・・・(バレエ3回、歌舞伎1回、オペラ1回)
さすがに行き過ぎでしょって自分でも思いますが、人生初のオペラだったので、思い立ったときに行っておかないと、ね。。
オペラは他と比べてずば抜けて値段が高いので長年私にとって踏み入れてはならない禁断の領域だったのですが、ついに、ついに踏み入れてしまいました。。

中劇場の方は以前『サロメ』を観に行ったことがありますが(とても素敵なホールでした)、オペラパレスは今回が初。
とってもシンプルな内装なんですね。
オペラとバレエを専門とするホールなら、もう少し豪奢な内装でもよかったのではなかろうか。
東京文化会館の舞台左右の彫刻の壁みたいな、そういう“特別感”が足りないというか。。
でもロビーは陽光が溢れて明るく、休憩時間にシャンパンやオードブルを提供する辺りの雰囲気はロンドンのロイヤルオペラハウスに似ていて懐かしかったです。

さて、本編の感想ですが。
そもそもオペラというものを観たことがないので比べようもありませんが、噂のゼッフィレッリの演出はもっのすごい豪華ですね!!
これぞオペラ!って感じで、初心者には楽しめました。
二幕の凱旋の場の大勢の人間(馬も)が舞台を埋め尽くす様には、「なるほど、この高いチケット代はこの舞台装置とこの人達の出演料か・・・」と思ってしまった 
そして三幕のナイル河畔の場面の美しさ。。。石像が水に沈んでいる背景など幻想的でうっとり。
ボートの流れもとても自然で、感心しました。どうやってるんだろう、あれ。
また全編を通して見惚れたのが、光の使い方。素晴らしいですね。凱旋の場の日中の光、ナイルの場面の青白い夜の月明かり、神殿に右上から差し込む薄明り。舞台をずっと覆っていた薄い紗幕も、異国の空気感を演出していて良かったと思いますが、物語の現実味は薄くなってしまうような気もしました。

ところで、オペラってミュージカルを正統的にした感じかと勝手に想像していたのですが、どちらかというと目でも楽しむクラシック音楽という感じなのですね。
体格とか容姿とかリアルな演技とかは、あまり求められてはいないのだな、と。
なのでミュージカルに慣れた身には一瞬戸惑いましたが、その声の迫力は圧倒的。
クラシック音楽でヴァイオリンの音に哀しみや歓びを感じるように、オペラ歌手の美しい歌声にはそういった感情が溢れていて、そういう意味で「クラシック音楽を聴くのに近い」と感じました。字幕はあるけれど言語として直接意味がわからないからなおさら(笑)
イタリア語がわかったらなぁ、と心から思いました。まぁその分、夢物語な雰囲気は味わえるのですが。
ミヒャエル・ギュットラー指揮の東京交響楽団。繊細かつ情感豊かな演奏で、これを聴くだけでも行く価値ある!と感じました。舞台と演奏が驚くほどきっちり合っていて素晴らしい。
カーテンコールで登場したギュットラー本人も美男で素敵だった笑。

アイーダ役のラトニア・ムーア。実に美しい歌声で、また可愛らしく、彼女が歌いだすたびに聞き惚れてしまいました。
ラダメス役のカルロ・ヴェントレはとても上手ではあったのですけど、声質が時々ちょっと軽く聴こえて(だから若々しくてよかったともいえますが)、個人的にはアイーダパパの堀内康雄さんの声の方が好みでした。
またムーア&ヴェントレの二人は最後まで雰囲気がどこか明るく、あの悲劇的なラストでも胸が苦しくなるような悲愴感があまり伝わってこなかったのが少々残念。まぁ、愛する人と死ねる彼らはある意味幸せなのですが(生き埋めだけど)。
そもそもアイーダ&ラダメスって、二人きりになる場面が三幕までないので、観客としては二人の愛に感情移入しにくいんですよね・・・。
その点、キャラクター的に思いきり感情移入してしまうのが脇役のアムネリス。アムネリス役のマリアンネ・コルネッティの歌声はムーアほどの迫力はなかったものの、それでも感情豊かな歌声と演技で、ラストは静かな慟哭、悲しみがひしひしと伝わってきて・・・切なかった・・・泣
ラストと言えば、神殿の地下牢が舞台の下から現れて、最後に再び沈んでいく演出が最高でした。
舞台装置自体に対する驚きはもちろんですが、彼らが地下に沈んでいくことでアイーダとラダメスの死を視覚的に表現していて、地上で一人残され彼(ら)のために祈るアムネリスの姿で幕を閉じるラストは何ともいえない余韻が残る。

あと一幕で国王が「進め、ナイルの聖なる岸辺へ」と歌い始めるところから全員で「Ritorna vincitor(勝ちて帰れ)!」と歌い上げるまでの合唱が、すごい迫力でした(下の動画の0:19:15~0:22:10)。また生で聴きたいなー。


O patria mia...(おお、わが故郷)--Latonia Moore


Giuseppe Verdi, Aida (Tokyo)
15年前の新国立劇場の杮落し公演。
この主役お二人の方が、今回のお二人よりも悲劇的な雰囲気がよく出ているように思う。



【指揮】ミヒャエル・ギュットラー
【演出・美術・衣裳】フランコ・ゼッフィレッリ
【照明】奥畑康夫
【振付】石井清子
(指 揮)
ミヒャエル・ギュットラー 
(演 出)
フランコ・ゼッフィレッリ

キャスト
【アイーダ】ラトニア・ムーア
【ラダメス】カルロ・ヴェントレ
【アムネリス】マリアンネ・コルネッティ
【アモナズロ】堀内康雄
【ランフィス】妻屋秀和
【エジプト国王】平野 和
【伝令】樋口達哉
【巫女】半田美和子

【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

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