風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

アンドラーシュ・シフ ピアノリサイタル @ミューザ川崎(10月1日)

2023-10-13 16:18:34 | クラシック音楽

©Nadia F Romanini

J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988から アリア
J.S.バッハ:フランス組曲第5番 ト長調 BWV816
モーツァルト:アイネ・クライネ・ジーグ K.574
ブラームス:3つのインテルメッツォ op.117
      インテルメッツォ イ長調 op.118-2
シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集 op.6
***
J.S.バッハ:半音階的幻想曲とフーガ ニ短調BWV903
メンデルスゾーン:厳格な変奏曲 ニ短調 op.54
ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ第17番 ニ短調 op.31-2 「テンペスト」

(アンコール)
J.S.バッハ:イタリア協奏曲 ヘ長調 BWV971から 第1楽章
モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 K.545から 第1楽章
シューマン:「子供のためのアルバム」op.68から 楽しき農夫


☝この特集ページの写真、優しく穏やかな表情がとてもいい

遅くなりましたが、10月1日の川崎公演の感想を~(9月29日のオペラシティ公演の感想はこちら
今回のピアノは280VCだったけど、P席だったせいかいつものこの機種の音よりも少しこもって聴こえたような

まずは、しっとりとゴルトベルクのアリアから。
リサイタルの最初に聴くこの曲もいいですね~

続いて、フランス組曲5番。
シフのこの曲、聴いてみたかったからとっても嬉しい
シフの格調高いのに親密な音のバッハがとても好き。。。
シフはトークで、「この曲は様々な国の舞曲からなっています。バッハはナショナリストではなく、インターナショナリストでした。それに対して、英国のブレグジットは馬鹿げている」「バッハは魂を浄化(cleanse)してくれる」と。うんうん!

次は、モーツァルトのアイネ・クライネ・ジーグ K.574
これも聴くのは初めて。
「この曲が誰の曲かを知らずに聴くと、誰もモーツァルトの曲だとはわからないだろう」と。

続いて、ブラームスのop.117と118-2
以前も聴いているけれど、今回、よかったなぁ。。。より内省的で深みを増しているように感じられました。
シフは「これらの曲は死が近付いた晩年のブラームスが未来ではなく過去を振り返っている、諦念と郷愁を感じさせる曲」と。118-2は「秋の陽の光のよう」と。うんうん
シフの音は重くはないのに翳りはちゃんとあって、まさに秋の音色でございました。

そして、前半最後はシューマンのダヴィッド同盟舞曲集
まさかこの曲を聴けるなんて思っていなかったので、今日一番の驚きでした。
シフは「シューマンはブラームスの才能を見出した人で、彼のメンターだった」、「シューマンはFlorestanとEusebiusという二つの人格を自らの中に生み出した。この曲は今の世界が失ってしまった詩的(poetic)なものを思い出させてくれるとても美しい曲」と。うんうん!
シフが弾くこの曲を初めて聴いたけれど、曲の芯が伝わってくるような演奏で、絶品でございました。。。。。

この日、演奏会前に少し悲しいことがあったのだけど、この前半の曲達はそんな私の心に寄り添ってくれているように感じられて。シフに感謝だな・・・。

(20分間の休憩)

「後半3曲は、すべてニ短調の曲」と。
バッハの半音階的幻想曲とフーガ(Chromatic Fantasia and Fugue)とベートーヴェンのテンペストは以前のリサイタルで聴いたことがあるけれど、メンデルスゾーンの厳格な変奏曲は今回が初めて。「ワーグナーは天才だが、ひどい人間(terrible human being)」と。「メンデルスゾーンがユダヤ人であることを理由にパンフレットで不当にこきおろした」と。「この曲は、モーツァルトのレクイエムのような曲。死んだのが誰かはわからないが、誰かの追悼のための曲だと思う」と。
また、テンペストについては、「ベートーヴェンは大きな困難を抱えながらも、希望を失わなかった人」と。

アンコールは後半の重い空気を吹き飛ばすように、明るく朗らかにイタリア協奏曲の第一楽章。今日は絶対弾いてくれると思ってた 全曲弾いてくれるかな~と期待したけれど、第一楽章だけでした笑。
そして、こちらも定番のアンコール曲から、モーツァルトのピアノソナタK.545の第一楽章シューマンの楽しき農夫
このアンコール3曲、シフの演奏会で何度も聴いているけれど、聴くたびに深く感動させられる。
最後の2曲は、こういう誰でも弾ける曲をこれほど美しくこれほど感動させてくれる(しかも全く気負わず!)ことに、こういう人を「ピアニスト」というのだな、と強く感じさせられるのでした。
終演後、後ろの席の女性二人が「私達は『ピアノを弾いていた』んじゃなかったんだ、ということがわかった」と言っていたけれど、そう感じる気持ち、よくわかる。

昨年に続いて2年連続でシフのピアノを聴くことができて、本当に幸せでした。
どうかまた遠くなく来日してください。
(できれば毎年来日してほしい。次回はぜひ再びカペラ・アンドレア・バルカと!!)


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