昨日年末のご挨拶をさせていただいたばかりですが、先ほど「『劇場版「鬼滅の刃」』がスタジオジブリの『千と千尋の神隠し』を抜いて日本歴代興行収入1位に!」というニュースを読んで、「あ、そう言えば、今年のうちに書いておきたい記事がもう一つあったのだった」ということを思い出したので、書かせてくださいまし。
今年の夏に中島みゆきさんの『リトル・トーキョー 劇場版』を観に行った際の感想はここで書きましたが、そのときに映画館で『千と千尋の神隠し』が再上映されていることを知り(コロナ禍の影響で他のジブリ作品も一斉に再上映してくれていましたね!)、その2日後に観に行ったのです。
私がジブリ作品の中で”スクリーンで観てみたかった作品1位”が『千と千尋~』で。DVDで観て大好きだった作品だけど映画館では観たことがなくて、スクリーンで観られることは絶対にないのだろうと諦めていたので、嬉しかった。
いやあ、凄かった。アニメというのは映画館で観るのとDVDで観るのとでは完全に別物だ、と改めて実感(あの海の色…!)。エンドクレジットのときには「宮崎監督~~~」と涙ポロポロでした(ほんとに泣いた)。半藤さんとの対談で話題に出ていた漱石記念館用の『草枕』の短編アニメーションも、ぜひとも作っていただきたかったなあ。宮崎監督もそんなに『草枕』がお好きなら作ってくださいよ!
――と、こんなことが書きたかったわけではなく。
そういうわけでみゆきさんの『リトル・トーキョー』の2日後に『千と千尋の神隠し』を観たのですが、そのときにふと、「ああ、そういえばこの組み合わせは滝本弁護士つながりだな」と思ったんです。なので、そのことについて書きたいなと。
オウム真理教事件で殺害された坂本弁護士のご友人で被害者や教団脱会者の支援を続けている滝本太郎弁護士のブログのタイトルは、『千と千尋~』のエンディング曲「いつも何度でも」からの一節なんです。先ほどエンディングを聴きながら涙が出たと書きましたが、私もこの曲が大好きで、聴くたびにいつも胸がいっぱいになってしまう。この曲の作詞は、覚和歌子さん。谷川俊太郎さんと対詩ライブをされている方です。
事件当時滝本氏は坂本弁護士に代わりオウム真理教被害者対策弁護団の中心人物として教団に対する訴訟や信者に対するカウンセリングを行っていて、その結果、ご自身も度々教団からサリン等による襲撃を受けていました。
2000年5月12日、松本智津夫被告の第157回公判で被害者の一人として陳述をした滝本氏は、松本被告にこう語りかけたそうです(なお滝本氏は「松本被告には死刑を、それ以外の被告には教団の根絶および類似事件の防止のために死刑回避を」という意見でした)。
あなたが生まれたことを恨んではいません。あなたのしたことを恨んでいます。
中島みゆきの「誕生」という歌をいつかどこかで聞いてください。
以上です。
(弁護人:ということは、一番最後の部分、生まれてくれてウエルカムということを伝えたいということですか。)
中島みゆきの「誕生」という歌の、その詞のとおりです。弁護人からもあげてくれると有り難いです。
そして2018年7月6日、松本死刑囚の死刑が執行されました。その日のブログにはこう書かれています。
人ひとりの命が失われてしまった、悲しいです。
本人には、「生まれてくれてウェルカム」と言いたい。
(生まれて来なければ良かったのにとは言わないよという私も気持ちです。)
そしてそれは「麻原を一部たりとも許したものでもありません。」と。
私は滝本弁護士の活動や意見についてここで何かを書くつもりはなく、書けるとも思っていません。オウム事件についても同様です。ただ、上記で滝本さんが仰りたかったことの意味は、わかる気がする、とだけ書いておきます。
そしてさらに思うのは、これはみゆきさんの曲に限りませんが、そういう音楽に、そういう本に、そういう人間に出会えてさえいれば、その人は事件を起こさずに済んだのではないか。あるいは自殺をせずに済んだのではないか。そんな風に感じることが沢山あります。それくらい一曲の音楽や一冊の本や一人の人間が人の心に及ぼす力は大きいと思うからです。逆に言えば、それくらい人間の人生というのは紙一重で危ういものなのだと思うからです。あのときあの曲に出会えていなかったら、あの本に出会えていなかったら、あの人に出会えていなかったら、今頃どうしていたかわからない、ということは誰にでもあるはずだと思います。この世界に絶対といえるものなんて、ないと私は思う。自分は絶対にそうはならないなんて、誰が言いきることができるだろう。
今回の記事のタイトル「繰り返すあやまちの そのたびひとは ただ青い空の青さを知る」は「いつも何度でも」からの一節です。
そして滝本氏のブログのタイトルも、同曲からの一節です。
生きている不思議 死んでいく不思議
花も風も街も みんなおなじ
※「人権かながら2012」