風薫る道

Who never feels lonely at all under this endless sky...?

ハンブルク・バレエ団 『ジョン・ノイマイヤーの世界』 @東京文化会館(3月9日)

2016-03-14 23:35:19 | バレエ




ハンブルク・バレエ団来日公演、おっきくて温かな幸せをいっぱいいただきました
ノイマイヤーさん、ダンサーの皆さん、関係者の皆さん、本当にありがとう。
世界はまだまだ広いのだなぁ。。

結局、ガラ1回、真夏の夜の夢3回行ってしまった。。

昨年の世界バレエフェスで観たアレクサンドル・リアブコ&シルヴィア・アッツォーニがとても好きだったので買った、今回の来日公演のチケット。二人の全幕は『真夏の夜の夢』だけだったのでそれは早々に押さえたのだけれど、のちの配役変更でガラ公演でのリアブコ出演が急増し。観たい・・・・・しかしノイマイヤーの全幕は椿姫しか観たことのないバレエど素人の私にガラはハードルが高すぎる・・・・・と迷っているうちに一夜目が終了。ネット上の感想は絶賛の嵐・・・。しかし皆さまノイマイヤー作品をいっぱい観たことのある方達ばかりだし・・・とまだ迷っていたら、どなたかが「ガラというより全幕のような作りになっているので、個々の作品を知らなくても楽しめる」と書かれていて、背中を押されて当日券で行ってまいりました。会社をクビになる覚悟で、週2回の早退でございます。
心から行ってよかった。。。。。。。ちょっと言葉にできない種類の感動が残る作品だった(たしかにガラじゃない、これ)。
これは皆さん感動するわけだわ、と。
だってハンブルク・バレエ団のガラ公演を観に行こうと思うような方達って、たぶん「バレエ(観る方でも踊る方でも)」が大好きな人が殆どだと思うのです。そういう人達の心のいっちばんど真ん中をまっすぐに突くような作品だもの、これ。バレエを好きな人だったら、ノイマイヤーが特に苦手じゃない限りは、感動せずにはいられないのではないかなぁ。
ノイマイヤーの上手いなぁと思うところは、「こういう感動が欲しい」と客が感情として欲してる部分を逸らすことなく最大限に満足させてくれつつ、決してあざとくもベタ(陳腐)にもならないギリギリのラインがわかっていらっしゃるところ。この方のセンスの良さなのだろうなぁ。

【第一部】
『キャンディード序曲』の序盤は生ノイマイヤーさんの登場に感激しながらも「録音ってこんなに録音ぽい音だったけ・・・?」とか考えたりしていたのですが、すぐにロイド・リギンズが作り出す空気にぐんぐん引きこまれていって(この人の表現力&存在感すごい!この夜のガラを見事に引っ張っていってくださいました)、リアブコ&アッツォーニ『アイ・ガット・リズム』では音が云々なんて雑念はすっかりどこかへ飛んでしまった。バレエフェスでは二人だけで踊っていたので、やっぱりみんなと踊っている姿を観る方が楽しい&嬉しい♪
『くるみ割り人形』の舞台中央でクララ(フロレンシア・チネラート)が履くトウシューズを憧れるように見つめ、そっと手を伸ばすノイマイヤー少年(リギンズ)。やがてバーレッスンをする女性(アンナ・ラウデール)の動きを倣うように踊っていた彼が、教えるような踊りに変化して『ヴェニスに死す』へ繋がる流れで最初の涙腺決壊が・・・。ダメだよこれ・・・泣。踊るのが大好きな男の子が女の子のバレエに憧れて、ただ踊りたいという思いのままにその世界に飛び込んでいくのって、『リトル・ダンサー』を彷彿とさせて・・・。それにリギンズの演技がもう!思わず『ヴェニス~』のDVDを買ってしまった。
続く『ペール・ギュント』は、同じ場面をアンナ・ラウデール&エドウィン・レヴァツォフで観たことがあったけど、今回はアリーナ・コジョカルカーステン・ユング。この二人は密度が濃いなぁ。感情溢れる演技をしますよね。ストーリーを知らなくてもその表情と踊りの美しさだけでなぜか感動してしまうという、コジョカル現象・・笑。上から降ってくる雪のようなキラキラ効果も素敵だった。これはバレエフェスではやっていなかったですよね。このキラキラ、この後の演目でも名残の紙片が時折自然にチラチラと降ってきて、その偶然の効果が大変効果的でした。
そして第一部のクライマックス、『マタイ受難曲』から『クリスマス・オラトリオⅠ-Ⅳ』。もう感無量・・・・・ ノイマイヤーさん、ほんっとーーーーーに魅せる演出が上手いよねぇ・・・。この構成の見事さ、どうしたらいいの・・・!最後は輝かしい歓喜の大団円で第一部が終了。客席、興奮してましたねぇ。この第一部のラストは、第二部のラストを観終わってから振り返ると、なんかぐわぁ~~~・・・とクルのよ。もうもう、ノイマイヤーさんってば本当になんてなんて・・・・・・。

~休憩25分~

【第二部】
後半は休憩後なのでまずは軽めから、ではなくいきなりガツンと『ニジンスキー』から。ノイマイヤーさん、なんてなんて・・・(構成力に感動しっぱなし)。そしてそしてリアブコ・・・!バレエフェスの『椿姫』でも『シルヴィア』でも、この人はなんでこんな短い時間にこれほど役になりきれるのだろうと驚いたけれど、今回のニジンスキーといったらもうもうもう・・・泣!あの鬼気迫る演技(てかもはや演技じゃないレベル)は何事!?リアブコってガッチリ体形じゃなくてちょっと少年のように見えるときがあるから、どんどん自分の内面世界に沈み込んで戻れなくなっていく過程が見ていて本当に胸が締め付けられて痛くて・・・可哀想で・・・。そしてこれほど役に入りきっているのにちゃんと「表現」はしているのよね、これ以上なく完璧に(表現していることをわからせないほど完璧に)。本当に素晴らしいダンサーですね。狂気の兄を踊ったアレッシュ・マルティネスも壮絶に素晴らしかったです。今回のガラ演目の中で一番全幕で観たいと強く感じたのはこの作品でした。
『ハムレット』ラウデールレヴァツォフ)は、「ハムレットがヴィッテンベルクに発つ前にオフィーリアと過ごした二人きりの時間」のPDD。全幕を観たことがないけれど、ノイマイヤーはあの原作の中からこういう場面を取りあげるのね。面白いなぁ。若い二人の、幸福とともに別れの切なさも感じもさせるPDDでした。ただ強烈な『ニジンスキー』の後だったので、実は魂抜け気味に見てしまった・・・。ごめんなさい(^_^;) 
続く『椿姫』も、二人の一番幸せなときのPDD。ノイマイヤーが踊りで伝える愛の形。コジョカルのマルグリットは、オレリーよりも切なさの表現の濃い白でした。彼女の解釈なのかな。いわゆるマルグリットというイメージではないけれど、一つの椿姫として十分に成り立っていて、年下のアレクサンドル・トルーシュのアルマンとも合っていたと思いました。ただゲストと知って観ていたせいかもしれませんが、コジョカルはこのガラで踊っている他のダンサー達と空気が少し異なるように感じられました。BBLと東京バレエ団が一緒に踊った第九でも空気の違いに驚いたものだけど、ハンブルクもやはり一つの強い個性をもったバレエ団なのだなぁとコジョカルとの対比で知った気がします(でも同じくゲストダンサーだった真夏の夜の夢のヤロシェンコにはそれをさほど感じなかったのは不思議)。
『作品100─モーリスのために』リアブコイヴァン・ウルヴァン。こちらは抜粋ではなく完全版。ここでこの愛の形をもってくるのが、もうもう、ノイマイヤーさんってほんっっっとに・・・! この作品も、今回のガラを観に行こうと決めた理由の一つでした。私はバレエ鑑賞超初心者なのでノイマイヤーとベジャールが知り合いであることも知らなかったのですが、今まで観たBBLの舞台はみんな好きで、今回これがどういう背景で作られた作品かを知って、「へぇ。ベジャールがノイマイヤーに捧げた作品を使って今度はノイマイヤーがベジャールのために作品を捧げたり、この二人はそんなに仲が良かったのかぁ」と観てみたくなったのです。
で、観てみたわけですが。

想像より1000倍くらい仲が良かったのだと、知りました。

作品の二人はご自分とベジャールに重ね合わせていると思ってもいいのですよね。上階席から見ると二人の足下を照らすライティングが故意なのか偶然なのか綺麗なハートの形でねぇ・・。で、リアブコウルヴァン。もうもうなんて素晴らしいのでしょう、なんて美しいのでしょう、なんて温かいのでしょう・・・!踊り方によっては同性愛的になる作品だと思うのだけれど、この二人の場合は同士であり友人でありライバルであり幼馴染のようでもあり。魂の友のようであり。ほんとうに、なんという空気でしょう。リアブコも素晴らしいけど、ウルヴァンの表現力がまた素晴らしかった!このテーマで音楽がサイモン&ガーファンクルの『旧友』と『明日に架ける橋』ときたら信じがたいほど陳腐になりかねないのに(かなり危険ですよね)、そうならないのがノイマイヤーの凄さと、ダンサー二人の凄さだなぁ、とも。ベジャールがもう亡くなってることを思うと、少年同士のじゃれ合いのような姿に思わず涙が・・・。これ、youtubeにリアブコがボッレと踊っている映像が上がっているのですが、個人的には今回の二人の方が対等で温かい感じがして好きでした。

そうしてノイマイヤーが語る「愛」で胸がいっぱいになって迎える第二部の、そしてこのガラのラスト、『マーラー交響曲第3番』。第六楽章の副題は、「愛が私に語るもの」。特別な筋はない作品のようですが、ネットで調べた設定では、アッツォーニの役割は「天使」「愛」なのだとか。
男(ユング)は彼女に出会い、「愛」を知る。youtubeで観ましたが、通常のガラで抜粋が踊られるときは、男が蹲って「愛」を腕の中に閉じ込めるところまでのようです。ですが今回観ることができた続きでは、「愛」は男の腕からすり抜けていってしまうのです。目覚めた男の腕の中に「愛」はいない。そんな彼の周りで踊るのは、たくさんの男女。一度愛を知った彼の目に映るのは、愛に溢れた世界でした。そこに再び彼の「愛」が目の前をゆっくりと横切っていきます。彼(オリジナルでは「男」のままですが、今回はここでノイマイヤーさんに変わります)は彼女に手を伸ばすけれど、彼女は足を止めることなく通り過ぎてしまう。そして幕。
しっかり掴まえたと思っても、愛は擦り抜けていってしまう。でも一度それを知ってしまった彼は、もう昔の彼には戻れない。人はこうして愛を知り、そしてそれを求め続ける生き物なのかもしれません。きっとノイマイヤーさんご自身も。・・・・・ということをノイマイヤーは言いたかったのかな~、と。全然ちがうかもしれないけど笑。

個人的に今回のガラ、観終わったときの感覚がすごくBBLに似ていたのですけれど、ノイマイヤーの方がより身近な愛という印象を受けました(どちらも観た作品数は少ないので、見当はずれなことを書いていたらご勘弁です)。ベジャールの愛は人間存在全てを見つめている感じで、ノイマイヤーのはその辺にいる私達一人一人を見つめているような。あるいは彼自身もまだ人間的な弱さを持っていて、私達と同じ視点で一緒に苦しんでいるような、まだ何かを探し続けているような、そんなイメージ。私はどちらも大好きです。

敬愛するノイマイヤーの芸術家人生そのものともいえるこの作品を絶対に成功させたい!!というバレエ団のダンサー達一人一人の想いが舞台から強く強く伝わってきた、そんなガラでした。観ることができて本当に幸せでした。いいカンパニーだなぁ・・・。

『真夏の夜の夢』の感想はまた後日~。


Nijinsky - Ballett von John Neumeier

これ、2005年の来日公演でやっていたんですね・・・リアブコで・・・泣。観た方達の絶賛ブログがいっぱい・・・泣。バレエを観始める前だからまだ諦めもつくけど・・・けど・・・・・やっぱり観たかったよぉ~~~~~~ もうリアブコで観たいとか贅沢言わないので、お願いだからもう一度来日公演でやってください・・・私が生きているうちに生で観たいです・・・。でなければDVD出してください、今回のガラの記憶で脳内補完します・・・。

Bolle and Friends Opus 100 coreo Neumeier music Simon & Garfunkel

リアブコ&ボッレの『作品100』。
リアブコの踊り、本当に好きだなぁ。。。無駄な動きがなく端正で、なのにすごく雄弁で華がありますよね。
そういえばリアブコ、NBSがあげてくれたカーテンコールの写真を見ると、これではなくニジンスキーの衣装を着ているんですね(そういえばそうだったかも。ブシェの近くにいたし)。私が見た中では、彼はこの日と13日のカテコが一番嬉しそうな表情に見えました。
カテコはノイマイヤーさんも、自然な心からの嬉しそうなお顔をされていましたねぇ。あの表情にも感動してしまった。。。

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