気まぐれ徒然かすみ草

近藤かすみ 

京都に生きて 短歌と遊ぶ

箸先にひとつぶひとつぶ摘みたる煮豆それぞれ照る光もつ

2006-01-08 22:12:51 | おいしい歌
蒼き黴ふきたる餅をすこしづつ減らして愛し合はざる家族

(塚本邦雄 日本人霊歌)

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きのう三月書房で買ったのは、短歌新聞社文庫『日本人霊歌』。この文庫は、字の配置がゆったりしていて読みやすい。一冊700円という値段も手ごろ。字のしっかり詰まった短歌雑誌に比べて目が楽。

この歌集は1956年から1958年にかけて書かれた歌もまとめたもの。当時は、パック入りの餅などなく正月をすぎて何日かすると、黴が生えはじめる。これを防ぐために、水につけたり包丁で黴の部分を削ったり、いま思えば懐かしい苦労があった。薄く切って干して、かき餅にするのが一番おいしかったが、手間がかかる。大切な食料である餅が、だんだん負担になってくる。気取って見える塚本邦雄も、やはり家族とぶつぶつ言いながら、お正月の残りの餅を消化していたと思うと、なんだかおかしい。

透明の膜に包まれ青かびと恋せぬ餅は表情持たず
(近藤かすみ)