散歩が一日で一番大事なやることになって久しい。雨が降る日は、室内でウォーキングマシンを使って30分歩く。室内で機械を使った歩きより、外を散歩するほうがずっと楽しい。妻が休みの日は、二人で歩く。私たちには、お決まりの2コースの選択肢がある。私の目標歩数は、一日5千歩である。2コースは、ショートコースと普通コースである。ショートコースは、歩数約2500歩。普通コースは、5000歩以上。その日、外出する予定がなければ、ショートコースを選ぶ。先週の妻との散歩は、変則ショートコースになった。理由は、私が車から見た“皇帝ダリア”の花が綺麗だったので、妻に見せたかったのと、近くから写真を撮りたかったからである。妻も喜んでくれた。写真も撮れた。
皇帝ダリアは、背が高い。ときには、5~8メートルになるそうだ。川原から土手を越え、高さが5メートルはある。色は薄紫。上品だ。威風堂々。皇帝ダリアの学名は『Dahlia Imperialis』。日本名は、この学名を訳したものらしい。名前と実物が合っている。英語名は『Tree Dahlia』。まさに木のようだ。でも皇帝ダリアのほうが相応しい。花言葉は、「乙女の真心」「乙女の純潔」だそうだが、あまりピンとこない。
皇帝といえば、“皇帝ペンギン”は、興味深い動物だ。南極などの厳寒地に生息している。姿かたちは、皇帝ダリアに負けないくらい高貴で皇帝の名に相応しい。黒い燕尾服を着ているような姿も皇帝のイメージだ。子どもの頃、年鑑や図鑑で皇帝ペンギンを見て、なんとカッコいい動物だろうと思った。のちに皇帝ペンギンの生態を知って驚いた。皇帝どころか大変な「苦労人」だと知った。子育ての時期、オスは、50~100㎞をあの短い脚で歩いて、海まで行ってエサの魚を獲って、まだ戻って来る。とても皇帝がすることではない。その事実を知って、ますます皇帝ペンギンを好きになった。
以前中国の「小皇帝」という言葉がニュースに頻繁に出て来た。1979~2014年まで実施された少子化政策のために、一人っ子が国中にあふれ、親が溺愛してわがままな子が増える現象が起こった。その小皇帝たちもすでに8~43歳になっているはず。小皇帝が社会の大きな比率を占めているはず。このところ、中国のゼロコロナ対策に対しての民衆の不満が高まって中国全土でデモや抗議活動が起こっているという。耳を疑う。中国の民衆は、共産党独裁を認め、従順に従っているとばかり思っていた。デモ参加者の中には、「皇帝は退陣せよ」と声を上げた人もいたようだ。香港の民主化運動がどういう結果になったか知っていて、このような声を上げたなら、相当な覚悟であろう。
中国の国家主席は、2期10年までという慣例を破って、3期目に入った習近平主席が、いったいどんなふうにこの騒動を抑え込むのか。現在8歳から43歳になっている『小皇帝』たちが、『世界の21世紀の皇帝』にならんと、着々と足固めを進める習近平主席の前途に、どうかかわって来るのだろうか。コロナ、気候変動、戦争、核実験。世界は、どこに向かおうとしているのか。不安と心配が尽きない。
そんな中、散歩途中に妻としばし見入った皇帝ダリアは、あまりに凛々しく泰然自若としていて、それでいて美しかった。民衆は、皇帝ダリアのように、威厳があり、平和を愛す、優しく乙女の真心を持つ皇帝、すなわち国家を導くリーダーを求めている。