団塊的“It's me”

コキロク(古稀+6歳)からコキシチ(古稀+7歳)への道草随筆 2週間ごとの月・水・金・火・木に更新。土日祭日休み

山下天吉夫婦

2022年01月03日 | Weblog

 2021年の大晦日、夫婦二人だけで小さな購入したおせちで夕飯にした。去年の大晦日も二人だけだった。二人ともNHKの紅白歌合戦に興味がない。13年間の海外生活でNHKの紅白歌合戦を観ることができなかったのも原因であろう。私は晩酌の日本酒が効いたのか8時過ぎには、眠くなってしまった。ベッドに入ってNHK教育テレビの『Ǹ響“第九”演奏会2021』にチャンネルを合わせた。画面は観ない。ただ演奏を聴いた。そして今年1年を振り返った。コロナに始まってコロナで終わった。その渦中、夫婦二人だけで乗り切った。夫婦という縁の力を感じた。

 

 2022年の元旦、いつものように午前5時に起きた。アレクサに天気を尋ねると快晴だという。気温は低い。南極対応とうたわれた極寒用下着などで寒さ対策をして、初日の出を夫婦で見に行った。カメラで写真を撮ろうとしても、手がかじかむほどの寒さだった。実に美しい日の出を拝めた。祈るはただ一つ。コロナの終息である。上った太陽は、私の祈りに答えてくれるような力強さであった。

 家に帰って、何気なくテレビをつけると家を留守にしていた間にNHKで『にっぽん紀行~高知、93歳のカツオ漁師を支える89歳妻』が再放送されていたことを知った。私はこの番組の再放送を観たくて、ずっとネットで再放送を検索していた。もうあきらめかけていた。今は便利な時代である。見逃した番組を観ることができるようになった。

 

 この『にっぽん紀行~高知、93歳のカツオ漁師を支える89歳妻』は、高知県足摺岬の沖でカツオ漁をする山下天吉さんと妻の操さんの漁の様子を記録したものだ。2009年の放送だった。ナレーションは、今は亡き田中邦衛。なぜこの番組をまた観たかったのか。それは、この山下夫婦の夫婦としての関係が私の琴線に触れるからだ。

 

 最近私は、自分の健康に自信がない。毎日、散歩で5千歩、医師に習った体操を続ける努力は怠らない。処方された薬も忘れずに服用している。しかし寄せる年波を押しとどめることができない。腰痛も繰り返し襲ってくる。足裏のブリキの板を張り付けたような違和感はひどくなるばかり。日常の何気にない瞬間、もし私がいなくなったら、妻はどうなるのだろうと考える。妄想が現実味を帯びて来る。

 

 山下夫婦は、当時93歳と89歳だった。厳しい漁師の仕事。それももっとも過酷なカツオの一本釣りである。夫が心臓に持病を抱え、足腰が弱くなったので、本来女性が乗ることができない漁の船に乗りこんで夫を助けている。映像も素晴らしいが、田中邦衛の語りが私の乾いた心にジワジワ入ってくる。

 

 私は、山下天吉さんほどの過酷な仕事も生活もしていない。暖房の効いた部屋でぬけぬけと駄法螺に暮らしている。山下さん夫婦は、お互いを愛しているとか、好きだとかを口にすることもなく淡々と生きる。私のようなチャラチャラした生き方ではない。

 

 今から私は、山下夫婦のように生きることはできない。私にできるのは、妻との二人の生活において、私の出来る方法で、妻を大切にして、助け、楽しく美味しく生きることだ。ある時、妻が言った。「あなたが息を引き取る時、笑って…。」 難しそう。でもそうしたい。

 

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