団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

紫陽花

2022年06月08日 | Weblog

  カテーテルで下腹部に新たにステントを入れて1週間が過ぎた。退院して次の日から散歩を始めた。まだ階段や坂になると、施術前のように足を運べない。妻は「無理せずにだんだんに歩数を多くしていけばいい。今日千歩、明日二千歩ってね」と言ってくれる。あせらずに、本来最初に治療するはずだった、右脚の動脈硬化の今月末の入院に備えて、体力をつけていきたい。

 このところ雨の日が多い。気温の上下も激しい。晴れ間を見計らって、散歩に出た。歩き方は、爺さんそのもの。スピードが出ない。ふらつく感じがある。腰が曲がり気味。杖を使う程ではないが、他人が見たら、この爺さん、大丈夫かいな、と思われそう。服装も良くない。黒のジャージに黄土色のTシャツに黒のパーカー。爺臭い。どう思われようが、ここは体力をつけなければならない。

 そろそろ梅雨入りだ。道端のあちこちに紫陽花が咲き始めている。紫陽花は、好きな花である。海外で暮らしていて、日本へ帰りたいと思わせるのは、桜、紫陽花、菊だった。セネガルやチュニジアなどの砂漠で心に描く紫陽花は、天国の花のように思えた。日本人は、ウエットで外国人の多くはドライだと言われる。確かに日本は湿気が高い。それが人間性へ影響しているのかもしれない。

 紫陽花は、もともと日本固有の植物だそうだ。『額の花』という品種が、十八世紀に英国に伝わり、西洋紫陽花(hydrangea)が誕生した。Hydrangeaは、ギリシャ語で“水差し”を意味する。紫陽花の実が、西洋の水差しに似ているからだという。もっと良い名前をつけられなかったものだろうか。私にとって、水差しでは物足りない。でも紫陽花を品種改良でこれほど美しい花にしてくれたことには、感謝したい。

 紫陽花の花言葉は、色によって違う。ピンク:「元気な女性」「強い愛情」 青:「冷淡」「無情」「あなたは美しいが冷淡だ」「高慢」 紫:「謙虚」「清澄」「神秘」 白:「寛容」「ひたむきな愛情」 緑:「ひたむきな愛」 秋色:「辛抱強い愛」 紫陽花は、七変化の花とも呼ばれている。初めは緑、次第に白、藍、薄紅などに変わる。花言葉も、色の変化のたびに指す言葉が異なるのもいとおかし。

 紫陽花は、梅雨の初めに咲き始め、梅雨の終わりに散ると言われている。昨今の異常気象で、その通りにはいかないかもしれない。それでも私を楽しませてくれる紫陽花は、美しい。雨上がり、花や葉に雨の雫がついた紫陽花は、最高である。

  私は、5、6,7月と入退院を繰り返して、血管の閉塞を治療する。気持ちは、晴れない。心配で不安も大きい。体への負担もある。治療に当たってくれている医師が「この治療がうまくいけば、脚が今よりずっと楽になりますよ」と言った。信じよう。治してもらえるものなら、試す価値はある。

 傷口の下が内出血している。15センチ×10センチくらい。事前に医師から内出血すると聞いていた。最初薄紫色だったが、紫色が濃くなってきている。見ていて思った。私の体も紫陽花のようだ。そして紫の花言葉は、「神秘」 まさに人体は神秘にみちている。そして私は、「謙虚」に現実を受け入れようとしている。

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