団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

空震による津波

2022年01月17日 | Weblog

  16日深夜、「プアプアプア」と居間の方から音。最初何の音かわからなかった。夢なのか現実なのかの区別がつかない。横で寝ていた妻に声をかけた。昨夜もけっこう酔っていた。「ふぁあぁ」と訳の分からぬ言葉を発して、「また変な詐欺メールでしょ」と言って、寝息をたて始めた。

この集合住宅の一画を購入した時、1階にはすべての窓と入り口に警報器が取り付けられていた。窓やドアが開けられるようなことがあれば、警報器で侵入を知らせる仕組みだ。寝ぼけてはいたが、侵入警報器の音ではないとわかった。起きて行って確かようと思ったが、いつの間にかまた眠りについていた。「プアプアプア」と再び鳴り出した。目が覚めた。ベッドから出て、居間に行った。テーブルの上で妻の携帯と私の携帯が同時に鳴っていた。2台が振動してハモって音を出していた。画面に津波避難情報が表示されていた。

 昨夜ニュースでトンガの火山が噴火したと知った。だが日本の気象庁が、若干の海面の変動はあっても津波被害の心配はないと発表していた。私はすっかりトンガの火山噴火のことは頭になかった。またどこかで大地震が起こって、津波警報が出されたと思った。集合住宅の川を挟んだ向こう側の道路を消防車がサイレンを鳴らして通過した。心臓が早打ち始めた。東日本大震災の時は、ここも相当揺れ、部屋の中の物が落下した。しかし今回は揺れを感じていない。一応家の中の窓やドアを点検して、ベッドに戻った。妻はスヤスヤ寝ていた。

 その後、4時過ぎまで何回も携帯が「プアプアプア」と鳴った。2年もコロナに苦しめられて鍛えられたせいか、もともと鈍感なおかげか、ウトウトしていた。酔っても朝になると、前の晩の酔いなど他人事だったように元気はつらつと起きる妻。朝がめっぽう弱い私。特に寝不足と私が感じて起きる朝は、頭痛と倦怠感におそわれる。妻が携帯を見て、「津波警報たくさん入ってるね」と言う。どうやら午前0時20分から4時半くらいまでの間の記憶が飛んでいるらしい。

 テレビのニュースやネットで調べて真相が明らかになってきた。トンガで起きた火山の噴火は、空震という現象を起こしたのだという。海水が隆起して起こる津波と違って、噴火の振動が、空中を遠くまで伝わっていって、津波を起こす。気象庁は、海水を伝わって津波が来ることだけを予想していた。そこで前日にトンガの噴火による津波は、日本に影響がないと判断したのだという。

 気象庁が出した“心配ない”の見解に腹がたった。専門家と言っても何もかも理解しているわけではない。責めても仕方がない。16日深夜津波を警戒して、多くの関係者が徹夜で働いていた。感謝しなければならない。間違いであっても、実際に津波が来た時に、今回の経験がきっと役に立つ。

 私たちが住む地球の内部は、何千度というマグマの塊である。表面がカサブタのように固まっていて、それが大陸や島になっている。地球の70%は海。地球年齢は、46億年だそうだ。

 織田信長が戦の前に「人間五十年、下天の内とくらぶれば、夢幻の如くなり ひとたび生を受け 滅せぬもののあるべきか」に合わせて舞ったという。地球の46億年と人間の短い一生を思わずにいられない。何が地球に、人間に起こっても不思議でない。自分が自分であるうちに、今をいとおしみたい。

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