団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

一発逆転

2010年06月18日 | Weblog
菅副総理(現首相)が民主党代表選出馬の記者会見で「日本の経済は、この20年間で行き詰まり、閉塞感に満ちている。日産のゴーン社長が日産を立て直したというけれど、彼は日産の社員を半分にリストラしただけだ。現在の日本の停滞を打破して、強い日本を再び取り戻したい!」と言った。私は、正直、菅さんにあまり良い印象を持っていない。私と同年代で団塊世代になる。高校の同級会へ行くと必ずいる「自分以外はみんなバカ」のいつまでたっても高校時代の試験の順番と進学した大学のランキングと就職した会社役所のランキングにしか自分の価値を見いだせない輩とみていた。しかしこの発言で菅さんに興味を惹かれた。

「では菅さん、その半分のリストラされた日産の社員はどうなったのですか?」と尋ねてみたかった。もし菅さんが「その半分の多くが、中国や韓国の企業にヘッドハンティングされて、この20年の東アジア圏の目をみはるような産業発展に貢献した」と言ったなら、即座に菅さんのファンになったに違いない。日本人の多くは、日本の現在の没落を認めたがらない。いまや韓国のサムスンは、日本の家電6社を束にしても敵わぬ1兆円を超える利益をたたき出し、設備投資に人材投資に突っ走る。長年サムスンの願いは、打倒ソニーだったが、ついにソニーを抜き世界一の家電企業になった。ヘッドハンティングされた日本人は、この20年でいったい何人になることか。そして日本でリストラされて、アジアの多くの国々に活路を見いださなければならなかった団塊世代の思いはいかに。

 しかし今までの内向き一方で権力闘争と政治と金の権化の鳩山小沢2頭政権では、一度も聞かれなかった菅さんの外向きな発言に少し期待が持てた。演説下手な小沢氏、何を言っているのか理解できなかった鳩山氏の演説と違い、菅さんの話は例をうまく引き出し、わかりやすい。民主党に日本の変革を願って投票した多くの国民は、鳩山小沢政治屋さんの旧態依然の政治と金と、日本の戦後最大の難問、普天間問題で裏切られ、失望を支持率20%の数字にあらわした。

 私たち夫婦は、バブルが弾けた後、1993年に日本を出た。その後ネパール、セネガル、ユーゴスラビア、チュニジア、ロシアを14年間転々とした。そこで私は、日本の国際舞台からの衰退を目の当たりにした。日本という国は試験秀才とランキング優等生だけが取り仕切る官僚的国家になってしまったことが、この日本の産業衰退につながった。私が転々とした国々で垣間見た日本のビジネスマンも役人も、会社、出身大学、家柄の看板を背負った人達が多かった。洗練されていて頭が良くプライドに溢れていた。「日本は一流国でお前たちは俺たちとは違う」と自惚れていた。反面、韓国、中国、台湾からのビジネスマンは、それこそ現地に飛び込んで、現地の人々の買える程度の製品を研究開発して売り込んでいた。三菱の創設者岩崎弥太郎、坂本龍馬、ジョン・万次郎などのように底辺からのたたき上げの泥臭さを最大の武器にしていた。日本の多くの役人もビジネスマンも彼らのがむしゃらさを見下していた。

 菅さんは、以前「官僚なんて馬鹿ばっかりだ」とも言った。菅さんのお手並みをじっくり見させてもらいたい。現在の日本は、停滞しているが多くの分野で一発逆転の力を持っている。あの瀕死の状態に落ち込んだアメリカのアップルがiPod で一発逆転してi-phone, i-padと次から次へと画期的な製品を生み出して成功している。これからは学校秀才や優等生でなく、江戸時代末期、日本に数多くいた外向きだった熱意ある“普通の人”の時代の幕開けを期待したい。
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