団塊的“It's me”

喜寿老(きじゅろう77歳)の道草随筆 月・水・金の週と火・木の週交互に投稿。土日祭日休み

水の力

2023年06月12日 | Weblog

 1週間前、台風2号の影響で線状降水帯が発生した。妻は、東京からいつもの3倍時間をかけて帰宅した。先週の金曜日、天気予報では、今度は台風3号の接近に伴って、また大雨になるとのことだった。さいわい妻の利用している路線での遅延も運休もなかった。

 住む集合住宅の前を川が流れている。建物と川の間には、堤防を兼ねる道路がある。数年前の大雨で、その道路が集合住宅の前で決壊した。集合住宅から車で出ていくには、左折していくしかなかった。長い工事期間を経て、やっと堤防の工事が終わった。まるでダムのような頑丈そうな堤防に生まれ変わった。しかし私のような素人目には、それがかえって不安になった。川の土手は、石垣になっている。その石垣もずいぶん前に作られたもので老朽化している。数年前に決壊した石垣の土手も、古かった。決壊した箇所は、頑強そうな土手になったが、今度は、川の流れは、弱い箇所を攻めて来るに違いないと思えてしまう。

 そしてこの台風2、3号の接近による大雨が降った。台風2号による大雨の日、東京に住む長男と孫が心配して電話をくれた。テレビのニュースで私が住む場所に避難勧告が出たと知り、心配してくれたのだ。住む集合住宅の前の堤防が決壊した時も、多くの知人友人家族から電話やメールをもらった。気にかけていてくれる人々がいることを嬉しく思った。台風2号の時の大雨で、前の川は、確かに増水していた。家の中にまで、流されている岩が激しくぶつかり合う音が聞こえて来た。恐ろしい音だった。

 嵐が去った翌日、結局台風2号の上陸も通過もなかった。台風一過と呼んでいいのか分からないが、いい天気になった。散歩した。川はまだ増水していた。家の前を流れる川には数百メートルおきに、堰がある。おそらく堰で流れの勢いを落とすためであろう。その堰のひとつが、今年改良工事された。堤防の両側をコンクリートで補強した。そして堰の川床にネットに石を詰めたものを敷いた。ところが何ということか、そのネットが、押し流されて5,6メートル下流にあった。堰の水流を受けるためのネットだったが、その効果は、失われた。しかし改めて水の勢いの凄さを感じた。

 日本で川と道路は、行政が自由に手を加えられる場所だと私は、理解している。中華人民共和国のような共産主義国なら、土地はすべて国家のものである。高速道路だろうが新幹線だろうが、通したい所が決まれば、あっという間に作ってしまう。日本のリニア新幹線が、現状にっちもさっちもいかないのとは、違う。羨ましいとは思わない。でも何事も時間がかかりすぎることが、日本の国力が停滞していると思われている原因であることは、間違いない。

治水は、国家の重要な施政のひとつである。日本のような国土が狭く、山々の標高が高いと、川はどうしても急流になってしまう。私は、河川は、国有なので、河川の川床に太いパイプを敷き詰めて、川の下に人工の川を造ったらいいと思っている。大都市では、大雨洪水対策に地下貯水槽を建設している所もある。それの河川版である。上流のきれいな水を下流域の水道に利用することもできる。増水時にパイプに水を誘導して流して氾濫を防ぐ。落差のある所なら、水力発電も可能であろう。

 造っては壊される河川の工事を見ていて、凡人が夢見る、日本の未来のひとつである。


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