「Dear My Boss Thank you For My 2 WEEK OFF」(原文のまま):【親愛なる上司 2週間の休暇に感謝してます。】今回のカタールでのサッカーワールドカップのテレビ中継で映った紙に上司への感謝を伝えようとしていた会社員の写真が話題になっている。
これを見て、私は、1990年のイタリアでのワールドカップの事を思い出した。私の長男は、大学を卒業して就職したばかりだった。サッカーが好きで会社を休んでローマへワールドカップを観に行こうとした。会社の上司に休暇願いを出した。上司に「会社を取るか、サッカーを取るか決めろ」と言われた。長男は、ためらいなく「サッカー」と答えたそうだ。上司は、「よし分かった。行ってこい」と言ったそうだ。弾丸行程だったが、応援していた国のサッカーの試合を楽しんだようだ。私は親として、苦労して大学を卒業させ、やっと就職した会社を辞めてまで、ワールドカップを観たいという長男を理解できなかった。幸い、理解ある上司のお陰で、会社を辞めることにならなかった。そんな長男も、サッカー観戦を許してくれた上司の年齢を超えたであろう。あのまま同じ会社に勤続している。役も付き、上司として多くの部下もいる。今回のワールドカップに彼の部下で休暇を申請した人がいただろうか。いつか尋ねてみたい。
二人の男の子を持つ父親にもなった。二人とも幼い頃からサッカーを始めた。進学した中学高校のサッカー部に入った。上の子は、中学2年生の時、難病指定の病気になり、学校への通学も部活動もままならなくなった。入退院を繰り返しながらも、サッカー部を退部することなく最後まで在籍した。彼の高校最後の試合を本人に内緒で妻と観に行った。試合が行われていた外で、いつ交代で出場するようになってもいいように準備していた。走ったり、時々ジャンプして体をほぐしているようだった。結局、出番は来なかった。長男と嫁は、惜しみない拍手を送っていた。私は、長男夫婦に最大の賛辞を贈りたかった。
カタールのワールドカップサッカー、日本対ドイツの試合は、観なかった。9時過ぎたらベッドに入ることにしている。朝起きて、ネットで日本がドイツに2対1で勝っていた。まさかと思った。次のコスタリカとの試合は、夜7時からだった。私は、“観なければ勝ち、観れば負け”という呪文のように思い込んでいる。しかし、あの強豪ドイツにあの勝ちぷっりなら、コスタリカに勝てるんじゃないの驕りが強かった。妻と観戦した。妻は、相撲観戦では、まるで解説者のようにあれこれ厳しく言いたい放題になる。それがまたいい所を突くのだ。妻が言った同じ事を、テレビの解説者北の富士が言うことが多々あった。テレビの音声を消して、妻の放言を聴いていた方が良さそう。コスタリカ戦での妻の口から出てくる辛辣な批評が面白かった。妻は、日本が、やたらに後ろへパスを戻すと文句を言った。後日、元日本代表だった人のコメントに、妻と同じ後方へのパスが多すぎたとあり、妻の批判もまんざらではないと改めて思った。
よく「絶対に勝たなければならない…」などと言う。私は、長男やサッカーファンのように熱くなることができない。冷めたつまらない人間かもしれない。どうしても日本に勝って欲しいと熱くなることもできない。どこの国のチームであれ、凄い技や能力には敬意を払う。サッカーの試合で、ブラジルのリシャルリソンが見せたアニメのようなオーバーヘッドキックを見れば、心躍る。人間って凄いな、と感動する。
私は、楽器の演奏も歌を歌うことはできないが、聞く心を持っていると自負している。それと同じ様に、サッカーをすることはできないが、観て良いプレイに惜しみない拍手をおくることができる。スポーツは素晴らしい。闘い終わって、お互いのチームの選手も監督も握手したり抱き合う。それに比べたら戦争は、人間が犯す最悪の行為である。