昨日の事だった。買い物に出て、万歩計がすでに4000歩を超えていたので、奮発してバスで帰ることにした。駅のバス停からバスに乗った。運転手が「お客さん、マスクしてください」と言った。私に言ったと思ったが、私はマスクをしていた。私の背後に私と同年代の男性がいた。彼はマスクをしていなかった。「うるせえ」 そう言って平然とバスに乗り込んだ。バス車内がシーンと静まり返った。運転手はそれ以上何も言わずにバスを発車させた。
バス停でバスを降りた。家に帰る途中にある魚屋に寄った。刺身の盛り合わせを買っていこうと思った。店の前に貼り紙がある。「店内にはおひとり様で。順番にお願いいたします」店の中にすでに客が買い物をしていた。私は道路に貼られた先頭の2足の足型の上に立って待っていた。やはり私と同年配の女性が、私を押しどけるようにして、店に入っていった。イチゴのパックを持ってレジの前に立った。私が「並んで待っています」と店の外から声をかけた。「怒らなくてもいいでしょ」と彼女が言った。「怒ってなんていません。この貼り紙にひとりずつと書いてあるでしょう」「店の人だと思ったんです」 訳の分からない会話になった。その時、気が付いた。この女性私と同じ集合住宅の住む人だと。お互いマスクしている。私はパンパンのリュックを背負って耳当て付の帽子を被っていた。女性は私が同じ集合住宅の住民だとわかっていないようだった。女性は舌打ちして、その場を離れて行った。戻った集合住宅の玄関から、私の先を歩いていた、あの女性が中に入っていった。同じ集合住宅に、こんな女性が住んでいることを悲しく思った。
バスの男性、魚屋の女性。二人ともいい歳である。コロナも恐いが、このような老人も恐い。こんな時だからこそ、他人に不愉快な思いをさせないように、コキゾウは規則や常識を守って暮らしていたいと学んだ。