コロナ禍で妻の給料が2度にわたって減額された。妻はコロナを心配しているが、収入の激減にも不安を感じている。
私は、そんな妻に提案した。遠距離通勤も大変なので、開業するか、近所の病院への転職を考えてみたらと。ところが思わぬ返事が返ってきた。「私はリスクをおかしたくない。」
妻は月給取りの娘。私は職人の自営業の息子。共に貧しい家庭だったことに於いては共通している。妻の母親の口癖は「お金がない」だったそうだ。妻はそれを聞くのが嫌だった。私の親も金には困窮していた。定収入がなく、それこそ日銭稼ぎの毎日だった。妻の家庭では定収入の範囲内での慎ましい生活。私の家庭では、行き当たりばったりの不安定な生活だった。よく親が子に影響を与えることができるのは、宗教と政治ぐらいだと言われる。私はそこに、家計も加えて欲しい。妻は何事にも慎重のリスク回避派。一方私は当たって砕けろの、自らリスクを招く炎上派。
妻は言った。「私がとった人生の最大のリスクは貴方との結婚だった」 私は返す言葉がない。バツイチで二人の子持ち。リスクと呼ばず、何と呼ぶ。そんな二人も結婚して30年を迎えようとしている。